第47話 内政


 フェルト鎮守府、執務室にて。

 椅子に座る影、そしてその後ろに立つ赤城を取り囲むようにして、フェルト鎮守府にいる今動ける多くの艦隊少女達が集められた。

 ここに来る途中。

 赤城曰く、今は財政面、物資の品薄状態、治安の悪化がとても深刻な状況になっているらしい。今までは影に黙って赤城が一人で何とかしてきたのだが、それも限界が近いらしく先程弱音を吐かれた。朝の一件もあり断りたくても断れない状況だったのだ。なにより影にはそう言った知識がないのだ。

 困りに困った影はこの局面を乗り切るために、まずは赤城に人手が欲しいと言ったらこうなったのだ。


「とりあえずまずは皆集まってくれてありがとう」

 影は先日見た。

 市場の状況を思い出したながら言った。

 市場には野菜類が多く並び、魚類が圧倒的に少なく。

 ――安全な海域が少なく漁業や水産業に影響が出ていた。

 それだけじゃなく、一見治安が良く見えるが、強盗や窃盗が多い街。 

 何より殆どの物資が品薄になっているこの状況を一気に打破する事にした。

 細かい事はその時に何とかなると信じて。


「皆がここに集まった理由は簡単で意見交換兼早速動いてもらうためだよ。んで何からするのって話しだけど、今日から内政面でも俺が指揮を執るからそのつもりで宜しくね」


 今までフェルト島をよく知っている赤城でもここまで苦労しているのに、着任早々内政面にまで手を出してくるのかと言いたげな視線の数々に影は苦笑いをする。

 内心は出来るかどうかなんて確証はない。

 ただ提督と言う立場を使う事で何とかできそうな気はしていたのだ。


「ならまずは市場の物資についてだけど、今不足しているであろう量を一回フェルト資源庫からフェルト鎮守府の今は使われていない第三倉庫に運び込んで。そこから必要に応じて適正な量を市場に回して流通させて。需要に対して供給は気持ち少ない程度に。まずは金剛艦隊に輸送はお願いしようかな。高速戦艦だし、何かあれば戦えるだろうし」


「はい」


「次に資源についてだけど、提督権限で今の倍の量をしばらく採掘して構わない。そしたら一~二週間程度で資源不足が解消されると思う。それに合わせて第二貯蔵庫が今空だから限界までこっちに資源を持ってきてほしい。となると問題は人数と知識、後は移動にかかるコストパフォーマンスなわけか……」


「ちょっと、待ってくださいい。それでは3年もしないうちに資源が尽きてしまいます」


「今を乗り切る事を最優先で構わない。それまでに精霊王を倒すか別の資源がある土地を奪還すると約束する。資源に関しては専門の者と一緒に護衛艦並びにお手伝いとして第十一駆逐隊と第二十三駆逐隊に任せるよ」


「は~い」

 相変わらず元気だけはいいミニスカートの夕月。


「それと加賀、蒼龍、飛龍、瑞鶴、翔鶴は協力してしばらくフェルト島とフェルト資源庫の周囲を偵察機で見張って、何かあれば報告。その間に……そうだね、これは加賀に任せようかな。加賀を中心に何十人か連れて行っていいからフェルト島とフェルト資源庫の間に養殖場を建設して。それも急ぎで。それで市場の品薄状態となっている魚類は解決すると思うから」


「しかし影提督……一気にそんなには無理です。お金も人手もありません」


「ならフェルト島で有力な銀行を全部後で教えて。国債を発行して買ってもらうから」


「「「「「「「「こくさい?????」」」」」」」」


「まぁ気にしないで。そこは後で何とかする。後予算面は各自見通しが経ったら持ってきて。この際多少額が大きくてもいいから予算は多めにとって。余ったら使わなかったらいいだけだから――後は――――」


 聞いた事がない単語がスラスラと影の口から出てくるのだがその場にいた誰一人理解できなかった。ただわかったのが影が何かとんでもなく凄い事を言っていることだけである。そして食料不足解消の為に輸栽式農業を導入したりと影の知識量はここにいる全員を軽く凌駕していて、誰も口を出す事ができなかった。その間終始右手にはスマートフォンを持っていたのだがそこに全部答えが書いている事には後ろにいた赤城ですら気付かなかった。


 その後も赤城が今まで手こずっていた問題に対しての解決策を具体的に提示し実行するように指示する影は金銭面も莫大な金額なのにも関わらずたやすくカバーしていく。

 三時間弱の内政面に関する会議はほぼ影の独壇場となり足りない人員はあろうことか、島に住む志願者と仕事を探しているがまだ見つかっていない失業者に期間限定ではあるが報酬付きのボランティアで手伝ってもらう事で人員がカバーされる事が決定した。


 そして早くも影の噂はフェルト島全体に広まり『実はセシル提督以上に凄いお方なのでは』とあちらこちらで囁かれ始めた。

 内政面だけでなく、鎮守府に対する島の人達の不満までを一気に解消した影に誰も文句を言う事は出来なかった。

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