第48話 告白
「危なかった……スマートフォンとモバイルバッテリーだけとは言え持っててマジでよかった……」
影は全員に指示を出し、赤城と二人きりになった部屋で安堵する。
スマートフォンの中には大学で使う参考資料の殆どが入っている。
影は必修科目以外は他の学科の専門科目でも単位を取り、去年は朝から晩まで講義に顔を出していた。その為、歴史、農産業、法律、憲法、物理学……と沢山の知識を持っていた。元はカンニング……ようではなく勉強用にと持っていた物だが最近は単位を殆ど取り終わった為にゲーム用としてポケットに入れて持ち運んでいたのが不幸中の幸いだったのかもしれない。
「……何が危なかったですか。私が今までどれだけ一人で頑張ってたと思ってるんですか」
赤城は影にブツブツと口を尖らせて文句を言っている。
どうやら簡単にサラッと解決した影に不満があるようだ。
それはそうだろうと思い、影は黙っておく事にした。
影も未来、即ち近代化の知識があるわけではない。
ただ参考書に書かれている文章を読み、それを自分の言葉に変換して皆に伝えただけで実際自分一人の力で全部しろと言われたらハッキリ言って無理である。
「でもまぁこれで赤城のお願いは叶えれたと思うけどどうかな?」
「えーそうですね! フェルト資源庫の件も内政面の件もぜぇ~んぶ影提督が何とかしてくれましたもんね!」
影は子供みたいにいじけた赤城を見て、もう何をどうしてあげたら機嫌を直してくれるのかがわからなかった。だけど拗ねた赤城も可愛いなと思って眺めていると、目と目が重なりあう。
「なんですか?」
「……あっ、別に何でも……ないよ」
「正直に言って下さい」
「いや、その何て言うか、拗ねた赤城って新鮮で可愛いなって」
指で頬をかきながら少し頬を赤く染めて照れくさそうに言う影。
「ばかぁ」
そして今度は顔を赤くして、影とは反対の方を向く赤城。
――本当は可愛いと言われて嬉しくてしょうがなかった。
それに今まで自分一人で何とかしないといけないって思っていた課題を影は文句ひとつ言わずに解決してくれた。そう思うととても嬉しかった。だけど……影にとってはこの程度の問題は簡単に解決できると思うと……悔しくて悔しくて悔しくて悔しくて仕方がなかった。
だって影にとっての私の存在って本当にちっぽけな物でしかないと感じたから。
そして気づいたら涙が零れてきた。
それも一粒や二粒じゃない。
数え切れないほど沢山出てきた。
「大丈夫?」
そう言って影が顔を覗き込むようにして隣に座ってくる影。
とても心配してくれていることは表情でわかった。
それでも聞かずにはいられなかった。
「……私いらない子ですか? 影提督にとって私はいてもいなくてもいい存在ですか?」
「急にどうしたの?」
頭を撫でてくれる影。
いつもなら嬉しくて笑顔になれる。
だけど今はなれない。
心の中で感じた不安がとても大きかったから。
「答えてください」
影は子供のように泣いている赤城をそっと抱きしめる。
影の心音が赤城の耳に伝わる。
「いるに決まってる。だって俺、赤城の事が好きだからさ」
その言葉に赤城泣くのを止める。
それはあまりにも予想外の言葉だったから。
勿論願望ではある。
もしかしたら聞き間違いかもしれない。
そう思い。
「いま、なんと?」
「赤城の事が好きって言ったんだよ。いつも隣で俺を支えてくれて、いつも隣で俺を導いてくれて、いつも隣で一緒に戦ってくれる赤城が好きって。本当は気付けばいつも隣にいてくれる赤城を好きになってたんだけどね……」
なんだろう、この感じ。
胸が張り裂けそうなぐらいに締め付けられるこの感覚。
だけど痛くはなかった。
どちらかと言うと、とても嬉しくて心臓が戸惑っている感じだった。
この人になら抱かれても良い。
この人になら全てを捧げても良い。
そう身体が訴えているかのように。
「……それは本気ですか?」
鏡を見なくても分かるぐらいに顔を真っ赤に染めてもう一度確認する。
生まれて初めて恋した相手にそんな事を言われたから嘘だと思ってしまう慎重深い自分が心の中にいたから。
「……うん」
恥ずかしそうにコクりと頷く影。
だからちょっとだけ意地悪をしてみる。
「飛龍のおっぱいをチラチラ見てたのに?」
すると影の顔がとても困った顔になる。
――顔にすぐに出て可愛い
でもそんな影の困った顔が好きな私がいる。
「噓です。でも女は言葉だけで好きって言われても信じない生き物ですよ。だから行動で………んッ!?」
赤城が冗談を言っていると途中で唇をふさがれた。
影の腕が赤城の身体をホールドしてて何処にも逃げられない。
初めてのキスの味は少ししょっぱくて涙の味がした。
でもとても嬉しい気持ちで一杯になって心が満たされていく、そんな感じのキスだった。
そしてあろうことか身体が素直に反応してしまい、色々と大変な事になる。
ずっと好きだった人に初めての唇を奪われている為に、身体が反応してしまったのか上も下も声が出そうになる程過敏に反応してしまった。こうなってはもう素直に影の事が大好きと認めるしかなかった。そう下着が濡れてしまう程に色々と大変な事になったのだ。
そして、無意識に身体がその気になってしまい気づけば赤城も力いっぱい影を抱きしめていた。
ぷはぁ~
「もぉ~まだお仕事中ですよ。責任は家に帰ってからちゃんと取るって約束してくれますか?」
赤城はオデコとオデコをくっつけて影に尋ねる。
「うん」
「よろしい。ならもうちょっとしてから離れましょうね」
赤城はセシル提督が病に倒れてから死んでからずっと一人で戦って来た。
そしてようやく救われた。
今は一人じゃない。
そう思うと心が満たされた。
「これからは俺と一緒に戦って欲しい。そして隣にいて欲しい。どうかな?」
影は赤城にお願いする。
これから先、今より過酷になるであろう戦い。
それは影一人では決して戦って勝てる相手ではない。
だからこそ、隣で支えてくれる人生のパートナーが必要だった。
そして赤城の答えは。
言葉ではなく影の唇をふさぐことで伝えられた。
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終わり
今のご時世、提督も出撃しなければならない、てか提督スキルってなに…… 光影 @Mitukage
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