第50話 紙の漂白 その3

11日目の朝、今日はジェームス製紙工場で紙の漂白を実験する日

結果次第で懐事情が変わってくる重要な日だ


いつも通りマリーさんに起こしてもらい、自分でクリーンの魔法をかける


朝食後、メアリーさんの馬車に乗って、ティアラ魔道具店でティアラと合流し、ジェームス製紙工場へ向かった



「おまちしておりました」


ジェームスさんが迎えてくれる


「おまたせしました、やっと必要な薬品が揃いましたので、実験に入ります、あと実験が成功したら薬師ギルドに特許を出しますので、ご了承ください」

「はい、成功したら特許も含め相談させてください」

「成功した後にしましょう、まずは実験からですよね」


自分はぬか喜びしないように諭す





「まずは、いつも通りわらパルプを作っていただけますでしょうか、あといつもわらを何kgくらい使ってます?」

「15kgくらいですかね」


灰を使いパルプの抽出と抽出後のパルプを洗浄するハズなので、もう少し少なくなるはず


「実際に抄紙機へ入れる量は?」

「抽出後に洗浄し、良くない繊維を除くので、2kgくらい少なくなると思います」

「はい、では洗浄と取り除きを行った後のパルプを使いますので、そこまでお願いします。」


その間作業を見ている


パルプの抽出には大きな窯を使う、200リットルくらい入りそうな窯に水を入れ沸騰したところに灰を入れる

その後、わらを入れ、そのまま煮る

1時間程度たったところでわらを取り出し水で洗浄する、その後手作業にて良くない繊維を取り除く

取り除いている間に指示を出す


2つ目の窯で湯を沸かす


「では、こちらの窯で100リットルの湯を沸かして下さい」


紙の漂白では15%のパルプが溶けた水溶液を使う


なので、15㎏のパルプだと100リットルの水になる


「沸騰したらそのまま冷ましてください、90度くらいから薬品を入れ始めます」


温度は90度~70度の間で反応させる、5分くらい蓋を開けて冷ませば問題ないだろう


「では、できたわらパルプを入れてください、そのあとで漂白に必要な薬品を入れます」


持ってきた、過酸化水素水と苛性ソーダを入れる


今回パルプ重量を15kgと仮定すると、必要な量は次の通り


・過酸化水素水 濃度30% 1.5リットル

・苛性ソーダ 濃度50% 0.9リットル


「この液体は?」


ジェームスさんが尋ねる


「過酸化水素水と苛性ソーダです、分量に関しては、特許取得後にお伝えします」


全部窯の中に入れた後、窯のふたを閉じ1時間後に撹拌し、2時間放置する




2時間経過


「この後は水で洗浄し、良くない繊維を取り除いてください」


窯のふたを開け、水で洗浄する


この洗浄中にジェームスさんは気づく


「白くなってます! 成功ですね!」

「そうですね、あとはいつも通り抄紙機で紙を作ってください」


自分は後の作業を指示する


「かしこまりました」


良くない繊維の分別も終わり、漂白後のわらパルプを抄紙機にセットする


1枚目の紙を漉く


「おお! 白い!」


ジェームスさんはご機嫌だ


「できましたね、安心しました」

「タカハシさん、ありがとうございます、早速ですがあちらで商談を」

「ちょっと待ってください、薬師ギルドの方と確認を」


薬師ギルドの担当者は、この後すぐ特許を登録しにギルドへ戻るとのこと

ではギルド登録できた後で商談するのが良いかな


「ジェームスさん、いったん薬師ギルドへ向かい特許登録後にまた来ます」

「……私も行きます、特許登録後に商業ギルドで商談をしたいので」

「わかりました」


薬師ギルドの担当者も一緒にジェームスさんの馬車にメアリーさん馬車で薬師ギルドへ向かった

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