第9話 薬師ギルド

薬師ギルドの印象は、役所の小さい出張所

受付のカウンターがあって、その奥は事務作業をしている人が数人机に向かって座っている

カウンターは開いていてお客もいない……静かな空間


入ってきた自分を見て手前の女性がカウンターに来る、自分もカウンター前の椅子に座る


「本日のご用は?」

「ギルドに入りたいと考えております、あと紹介状を持ってきました」


紹介状を女性に渡す


「お預かりいたします」


女性はその紹介状を、奥の誕生日席に座っている、男性に渡す

紹介状の中身をみた男性は、もみ手をしながらこっちに向かってくる


「これはこれは、タカハシ様、私はジョンと申します、本日はメアリー様のご紹介で?」

「はい、昨日カラクルムに着きまして」

「そうなんですね、紹介状には講習も受けられるとありますが?」

「はい、ですがどの講習がいいのかわからないので、そこから教えていただけると……」

「かしこまりました、では」


まとめると


・カラクルムの薬師ギルド講習で覚えることができるポーションは次の4つ

 ・回復ポーション

 ・マジックポーション

 ・スタミナポーション

 ・キュアポーション

・それぞれのポーションには初級、中級、上級と等級がある

・ポーション生成には専用の錬成盤が必要で薬師ギルドで販売している

・ポーションによる錬成盤の違いはない、初級、中級、上級の違いのみ

・上級向け錬成盤で中級、初級も錬成できる

・講習はポーション4種×等級3種の12種ある

・レシピはそれぞれの講習を受けることで覚えることが可能

・対応する錬成盤を持ってないと講習は受けられない

・ポーションにはそれぞれ高、中、低の品質があり、品質が高いと効果が高くなるので価格も上がる

・生成したポーションの個人販売は禁止、個人使用は可能、販売する場合は薬師ギルドに売ること


なるほど、初級用の錬成盤を買うと4つの初級ポーションが生成でき、中級用だと初級と中級の8種が生成できると


あと、回復ポーションでも品質が高、中、低とあり、品質が高いと販売価格、買い取り価格も高くなるようだ


販売禁止とあるが、生成したポーションをチーム内のメンバーと共用するのはあり

むしろ目をつぶってるらしい


「では、初級の錬成盤を購入したいのですが」

「でしたらセットがおすすめです、初級錬成セットで銀貨10枚です」


ん? お手頃なのかわからない


「すみません、値段がわからないので、初級ポーションの買い取り金額について教えてください」


ポーションの在庫にもよるそうだが、基本の値段は高、中、低の品質の違いのみ


初級ポーションの品質と値段は次のとおり


・高:銅貨70枚

・中:銅貨60枚

・低:銅貨50枚


なお、取引税がかかるので、実際の手取りは次になる


・高:銅貨63枚

・中:銅貨54枚

・低:銅貨45枚


薬師ギルドの販売額も教えてもらった


・高:銀貨1枚、銅貨10枚

・中:銀貨1枚

・低:銅貨90枚


取引税を引いた薬師ギルドの取り分は次になる


・高:銅貨99枚

・中:銅貨90枚

・低:銅貨81枚


「なるほど、ありがとうございます、初級錬成セットには何が入っているのですか?」

「初級錬成盤、乳鉢、乳棒、三角フラスコ、蒸留水、漏斗、乾燥させた薬草10枚、ポーション瓶10本、持ち運び用のバッグですね。薬草はポーションに合わせて選択できます」


理科の実験みたいな道具だ……、乳鉢と乳棒、三角フラスコ、漏斗は陶器製の箱に入っており、バッグの中身はそれぞれ入れるための仕切りがあった


「結構ありますね、これで銀貨10枚」

「ええ、実は原価ギリギリなんですよ」

「それは何でですかね?」

「薬師になりたい方が少なくて、せめて初級錬成セットだけは原価ギリギリにしてますが……」

「銀貨10枚ではね」

「そうなんです……」

「話は置いといて、初級錬成セット買います、あとはマジックポーションの講習を受けたいです」

「薬草は魔力草になります、初級錬成セットと講習料で銀貨11枚になります、あとポーションを持ち運ぶバッグがありますが、こちらもいかがでしょうか?」

「あ、そんなバッグがあるのですね」


見てみると革製の背嚢で中にポーション1本づつ入れるために、15本分入る陶器製の仕切りが2段分入っていた


「おいくらですか?」

「このバッグで銀貨10枚です」


うぉ! 結構するなぁ……仕方ない


「わかりました、購入します」

「では合計で銀貨21枚です」


銀貨21枚を渡す


それにしても21万円……マリーさんに聞いていた額より安いが結構なお値段だよね、初級にしてはハードル高い


「では講習を行いますので、2階へ」


ジョンさんに連れられて、2階に上がる、すぐ手前の部屋へ案内された


部屋は小さい理科室で、洗い場の両脇に作業台があり、背もたれ付きの椅子が4つ、洗い場には水が出てきそうな蛇口があった


ジョンさんはドアから見て奥の席をすすめた


「さて、早速ですが講習をはじめます」

「ジョンさんが講習されるのですか?」

「ええ、薬師ギルドの職員全員、講習できるようにしております」

「素晴らしいですね」


さて、ポーション1本分の作成方法だが


・魔力草を1枚ちぎって乳鉢に入れ、乳棒で粉になるまですりつぶす

・魔力草の粉を三角フラスコに入れ、蒸留水を100cc入れる

・初級錬成盤の片面は水を温める機能になっており、その面の上に三角フラスコを乗せ、魔力を流し温める(沸騰厳禁)

・温まったら初級錬成盤を反対にし、ポーション生成を行う、目安は液体の色が変わればOK

・最後に漏斗を使って三角フラスコからポーション瓶に移し替える


結果、MPを20ポイント使い、初級マジックポーション(品質:中)ができた


「いい品質ですね、魔力の流し方次第で高品質になりますよ」

「そうなんですね、転移者寮で試します」

「高品質のマジックポーションお待ちしております」

「自分で使うかもしれませんよ?」

「その場合は薬草のご購入おまちしております」


使った器具を洗い場で洗った後、カバンに入っていた布で拭き、バッグに片付ける

そのままバックと背嚢をアイテムボックスに入れる


「お! アイテムボックスをお持ちで?」

「そうですが?」

「アイテムボックスは商人のあこがれです、何も持たず行商に行けますので」

「そうですか、私はカラクルムからあまり出なくてすむ方法で稼ぎたいですね」

「それでポーションですか、今後ともよろしくお願いいたします」


そう話しながら、薬師ギルドを後にした

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