第21話 新しい動力も作ろう その1

報告が終わって、メアリーさんとティアラ魔道具店へ向かう


「ティアラいる~?」


ドアを開けると、ニコニコ顔のティアラがいた


ミイさんもちょっとニコニコしている


これは、お金の分配をしたのかな?


「ティアラ、いいことあった?」

「ああ、返済も終わった、生活費も確保した、これが良いことでないはずがない」

「あ、わかった、頼んでたものは?」

「ああ、できてる」


1階の奥の作業場とは違った土間? に案内された


「できたものはこれだ」


見た感じ、棒状のなにか(おそらく魔石)に、魔法陣が描かれた紙を側面に巻いてあるものだった


魔石が光っているので、充填済みなのだろう


「充填済み?」

「ああ」

「このままこれを落としていい?」

「ああ、むしろそれをしてほしい」


軽く肩のあたりに挙げて手放す、例のものはポンと音を立てて、光を失う


「お、お願いした通り、持ち運べそうになってきたね」

「そうそう、そうなんだよ」

「じゃ、次はさっきやったみたいに、肩のあたりから落としても充填されたままが保てるようにしたい」

「はい?」

「この充填済みの魔石を輸送できるようにしたいんだ」

「なぜ?」

「輸送できるようになると、ティアラが充填した魔石を冒険者ギルドや商業ギルド、もしかしたらカラクルムとは違う都市で販売できるだろ?」

「あ! いい!」

「なので、金属か何かで包んで、中に緩衝材を入れることができないかと思ってるのだが?」

「金属か……、あそこだな、知り合いの工場に行くことになるが、行ってみるかい?」

「おお、ついて行くよ、だが」

「だが?」

「次の商品のお話が先だ」

「おっけ~、聞こうじゃないか」


話の前にタブレットを取り出す


「ティアラ、最近工場に石炭を使った蒸気が動力となってることって知ってる?」

「いや、初めて聞いた」


なるほど、では説明からだ


「オッケーそこからだね、その動力の魅力は、今まで人力の限界を超えた生産ができるようになることだ」

「??? それって今までは魔法で解決したことでは?」

「そうだね、でも魔法使いは人気が高いので簡単に見つからないと思うけど?」

「あ、そっかだからその動力でまかなうのね?」

「そういうこと」


さて次は問題点の説明を


「で、これの問題は、魔法使いの魔法より、動力のほうがより生産できることになったらどうなると思う?」

「動力を作るための費用があるけど、その費用込みで利益が出るなら、魔法いらないね……」

「そうなる……実際自分のいた世界は魔法がなかったから人力でできることをやってたけど、こういった動力のほうが効率に稼げるため置き換わっていった」

「……」


黙ってしまった、結構深刻なことが想像できたかもしれないが、さらに問題がおこるんだ


「ただ、これが発明されて、200年ちょっと経ったくらいに問題がおこる」

「どんな?」

「最初は使っている地域の問題だった、空気が悪くなってその地域の人間だけに発生する病気がおこったり、石炭を熱して残ったものに人を病気にする成分が見つかったり」

「それは嫌だね」

「だよね、でもそれよりもっと大変なことがおこるんだ、世界の気温が数度上がったんだよ」

「??? それがどんな問題になるの?」

「絶対に解けないといわれていた地域の氷が解けはじめたり、氷が解けたことによって海水が上昇して陸地が減ってきたり、100年に1回くらいだった異常気象といわれる現象が毎年おこり始めた。あ、当然これが問題という完全な結論は出てないし、これが発明された時より人間が60億人くらい増えちゃってるから正しくはわかってないけどね」

「ふむ?」


しまった、元に戻そう


「何で新しい動力を作りたいかだけどね、少しでもイグアスを自分のいた世界にならないようにしたい」

「問題となる動力をつくらない方が、いいのでは?」

「いや、もう石炭火力に気づいて大量生産する工場ができたので止まらない、ならせめて少しでも自分たちと同じ世界にならないようにするだけだ、ちなみに、僕の世界ではこの発明と同じ時期に発明された内燃機関というものが世界を席巻し、1人1台はお世話になる時代になる、これもさっきから話している原因の1つになってる」

「……かなり深いね、タカハシの熱意はわかったから、その代わりに何を作る?」

「モーターを作りたい」

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