第8話 魔石はバッテリー

食事を終えてさっそく魔道具店へ

時間も13時なので、1時間くらいして薬師ギルドへ向かおう


中心から外れ、南向きの大通りへ、通りを2つほど進んだ後、馬車は脇へ付けた


「いらっしゃいませ」


店員が迎えてくれた!? え、猫耳?

じろじろ見てはいけないと思いつつ、猫耳娘を観察する


「珍しいと思いますが、だ・め・で・す」


痛っ! メアリーさんにはたかれた


「すみません」

「ミイ、こちらタカハシさん、昨日来られた転移者なの」

「はじめまして、ミイです」

「こちらこそすみませんじろじろ見て、タカハシです」

「今日のご用は?」

「魔道具を見せてもらいたくて来ました」

「うちは受注生産だけど、このランタンならいいです」

「受注生産なのになぜ?」


ランタンが6つ置かれてた

話していると奥から声が


「ミイ、お客さんかい?」


出てきたのは、女性のダークエルフ

すごく胸を強調したカウボーイっぽい格好で谷間が見える……


「だ・め・で・す!」


ゴツン、今度はグーで叩かれた


「ティアラ、こちらはタカハシさん、昨日来られた転移者なの」

「失礼しました、はじめましてタカハシです」

「はじめまして、ここの店主兼工房主のティアラだ」


あ、男っぽいのね、残念、胸はかなりのボリュームなのに……

メアリーさん、今度は足ですか……


「工房主というと、この魔道具はティアラさんが?」

「ティアラでいいよ、さんづけだなんてむずがゆい……こっちもタカハシでいいな?」

「タカハシ呼びでいいよ、で、これってティアラ作?」

「ああ、ここの魔道具は全部私が作ってる」

「受注生産でやってるんですよね」

「そうだな」

「今日は魔道具を見せてもらいに来たのですが、先ほどミイさんにこのランタンならいいと、でも受注生産なのに6個もあるんですか?」

「それは」


よくある話だった

冒険者パーティーから5個の受注があったのだが、先日パーティーが全滅したらしい

全滅の連絡は今日あったと……


「ちょっと遠征したと思ってたらこれだ、なので今月の売上がダメになった」


世知辛い……


「でもほかに収入はあるんでしょ?」


メアリーさんがティアラに聞く


「魔力充填もやってるのだが、最近家庭訪問して魔力充填するやつらが現れて、こっちもやばくなってる」

「領主館の充填はティアラとミイが担当してるわよね」

「それでは、待ってもらっている支払いが厳しい」


なるほど、メアリーさんは難しい顔をしてしまった


「さて、タカハシは魔道具が見たいのだよね?」

「そうです」

「どんなところが見たい?」

「あ、そもそも魔道具がない世界から来たので、使い方から教えてください」

「わかった、それならミイでもできるね、ミイおねがい」

「わかりました~、ではタカハシさん、使い方からですね」


説明を受ける横でメアリーさんはティアラさんとなんかやり取りしてる


「ミイ、メアリーと奥にいるから、なんかあったら呼んで」

「了解」



さて、魔道具だが


・魔道具には魔石が必要

・魔石に魔力を充填して使用する

・魔石が大きいほど充填量は増えるが、持ち運びにくくなる

・このランタンに使われている魔石は、ホーンラビットの魔石

・このランタンだとフル充填で1日しか持たない

・魔力充填はLv.3以上の魔力操作スキルが必要

・ランタンは1つ銀貨10枚


ふむ、魔石は固定されているがバッテリーの役割をするみたいだ


「魔石ってどこで取引されてるのですか?」

「魔道具店は商業ギルドから買ってる、商業ギルドメンバーにならないと買えないですね」

「商業ギルドは?」

「冒険者ギルドから買ってる、冒険者ギルドは冒険者から買ってる」

「なるほど、ちなみにホーンラビットの魔石はいくらになります?」

「商業ギルドでは銅貨2枚、冒険者ギルドの買い取りだと、だいたい銅貨1枚」

「勉強になります、ちなみに充填するところも見たいです」

「特別だよ~」


ミイさんは、スイッチがオフになっていることを確認し、ランタンを横に向け側面の下側にある板を外す

ブローチみたいな形の魔石が、金属の爪3か所で固定されていた

ん? この素材って銅?


「この素材って銅?」

「そうだよ~、魔力は銅が一番通すからね」


銅……まさかね……


ミイさんは銅の爪に指先を当てて充填する

魔石がだんだんと光っていく


「へぇー、結構面倒ですね」

「うん、間違うと魔石が壊れちゃうから、気を付けながら充填するの」

「勉強になります、逆さ向きに固定されてる理由は?」

「魔法陣につながってるからだよ」


ミイさんはそう言いながらランタンのガラス側を指さす

ん? ああ、こっち側の底か?

模様が描いてある


「この模様みたいなのが魔法陣?」

「そう、この魔法陣で魔石の魔力を変換して発光させるの」


そういいながら側面の板を戻し、ランタンを立てスイッチを付ける

少し豆電球みたいな光かと思っていたら、部屋の明かりと同じ昼白色だった


「お、いいなこれ」

「でしょ~」

「ところで」

「なにかな?」

「ミイさんは語尾にニャとか付けないの?」

「あ~、もうそんな歳でもないし……、それをやるといろいろ怖いし」


とやり取りしているとメアリーさんとティアラが戻ってくる

ミイさんの目はメアリーさんを見てこっちを向く

自分もわかったとうなずく


「状況はわかったわ、明後日までに何もなければ店を閉めるのね」

「ああ」


ん? なんか聞いちゃいけないことが聞こえたような……いい大人は、見ざる聞かざる言わざるで


「では、そろそろかな?」

「あ、ちょっとタカハシ」


ティアラから呼ばれた


「転移者寮に慣れないうちに出たほうが良いぞ」

「あ~あそこ転移者寮って呼ばれてんの? わかってるんだが、その生活ができるくらい稼ごうかと……」

「そっちで行くか、いい商売あったら教えてくれ」

「もちろん前向きに考えておくよ」


そのやり取りを聞いて、メアリーさんニンマリ……重要なことなのでもう一回、いい大人は、見ざる聞かざる言わざるで


「ではタカハシさん行きますよ~」

「はい」


ティアラの店を後にした


ティアラの店にいたのは30分くらい、薬師ギルドへ向かおう

馬車に乗って、すぐだった

脇の通り入ってすぐの角

これって馬車に乗る意味あるの?

対面の問題か……


降りようとするとメアリーさんが


「タカハシさん、すみませんが商業ギルドに行かなければならなくなりましたので~」

「あ、そうなんですね、転移者寮へは?」

「お手数ですが~」

「わかりました、徒歩で戻ります」

「すみません」

「お気になさらずとも、朝マリーさんに聞いてましたので」

「では~」


自分だけ馬車から降りて、メアリーさんを見送る

馬車が角を曲がったのを見て、薬師ギルドへ入る


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