第38話 ドルトン家の夕食
Another Side:アントニオ=ドルトン
珍しくレイラが領主館へ戻ったので食堂のセッティングが変わる
領主である私だけがお誕生日席へ
第1夫人であるエリザベスは右、第2夫人のレイラは左
エリザベスに続き右側にクロエ、エイミー
レイラに続き左側にメアリー、アオキとなる
アオキとクロエは来月式を挙げる予定なので、領主館で寝食を共にしている
あのレイラが夕食に加わったことで、エリザベスの機嫌が良くない
それを知ってか知らないでか、レイラは堂々と食事をする
さて、帰ってきた理由を聞かねば
「レイラ、珍しいな夕食を取るなんて」
「ちょっとね、最近面白いことを聞いたのでね」
「面白いこと? 思い当たらないが?」
「タカハシ」
ぬぉっ! エリザベス、クロエ、エイミーもびくっとしている
おお、アオキさんは反応しなかったので、『え? なんかあった?』という感じにキョトンとしている
アオキさん、あなたはそのままでいいのですよ、むしろそれだからこそクロエの夫にふさわしい
「最近、転移者寮へ入ったそうじゃないか?」
「そうだねぇ、でも7日前だよ」
「それにしては、2日目に食事会をやったそうじゃないか?」
「そうだね、クロエを誘わなかったのは悪かったのだけど、いつも忙しそうだし……」
「……、まぁいいそういうことにしておこう」
ほっ、助かったー
「で、そのタカハシについてメアリーから報告があるらしい」
「メアリーそうなのかい?」
「はい、お父様、少々時間がかかりますがよろしいでしょうか?」
「構わない、食べながら聞こう」
メアリーが説明する
「では、タカハシさんのことですが、本日ジェームス製紙工場にいき、発明品を使った提案をしましたが失敗しました」
「ぶっ、そんなことで?」
エリザベスとクロエが苦笑している
「ですがこの後、紙を白くする技術について提案します」
「ほんとかい?」
たまらず私は聞きなおす
「ええ、本当です、紙を白くする技術です」
「タカハシさんはいくらで売る予定だい?」
「白金貨10枚だそうです」
「……」
全員黙ってしまった……
「その技術、どれくらいで実現できそうなのかい?」
「時期は未定ですが、ゴードンの契約があと1月なので、そこまでには技術が渡せるのではと思います、当人はやり方がわかっているようでした」
「具体的な技術について何か話してたかな?」
「水に弱い雷を流すそうです、こんな形をしたガラス器具を使うようで、薬師ギルドに発注しました」
メアリーは両手で親指をつなぎ、人差し指を上に向けガラス器具の形を示す
「アオキさん」
「はい?」
「このようなものって、そちらの世界にありますでしょうか?」
「ええ、おそらく水の電気分解をする装置かと……」
……あ"~~~~、ほんっと転移者の知識はオーバーテクノロジーだよ! 理解できん!
「白金貨10枚の根拠は?」
「ジェームス製紙工場の生産枚数が1日600枚、100枚を金貨1枚で販売したとしての年間利益を金貨2190枚として算出し、さらにジェームスが特許の独占契約に出ると見越して、利益の50%か、即金で白金貨10枚を提案するそうです」
「……、ジェームスは白金貨10枚出すね、別の事業もあるからそれくらいある」
白金貨10枚は現実的だ
「さて、メアリーはどうする気だい?」
「お父様に許可をいただきたく、明日、お母様、ミイ、マリー、私とでタカハシさんのレベルアップに行きたいと思います」
「わかった、むしろいいタイミングだ、とはいえタカハシさんが強くなってしまうとなぁ……」
タカハシさんが強くなり、金銭的にも問題ないとなるとドルトン家の庇護は不要となってしまう
「その点は大丈夫じゃない?」
レイラが話す
「今日タカハシが冒険者ギルドへ登録しに来たのでからかった」
「失礼なことはしてないだろうな?」
「からかった結果、『クライアントであるアントニオさんともめることはしたくないですね』と言ってた」
「それは、ありがたい」
「そうか? むしろこっちの考えていることもわかって行動しているぞ? おそらくアオキとエリザベスのことも気づいてるんじゃないか?」
タカハシさん聡いな……、まぁいい
「目指すレベルは?」
「100」
「場所は?」
「ダンジョン」
「え? あそこは1日で100まで上がらないぞ?」
「1泊2日の予定、ダンジョンで1泊過ごす」
だからマリーか……、あれがいるなら安心できる
「わかった、許可するので気をつけて行きなさい」
「お父様ありがとうございます」
Another Side End
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