第37話 冒険者ギルド その3

コン、コン、コン


受付のお姉さんがノックする


「入りな!」


姉御口調の返事が返ってくる

受付のお姉さんはドアを開け入室を促してくれるまま、部屋に入る


入った後は、受付のお姉さんがレイラさんと向かい合った席で、メアリーさんの隣に座るよう案内する


……結婚相手の面談ですか? うちの娘はやらないよ? とかですか!


ミイはちゃっかりレイラさんと向かい合わない一人掛けの椅子に座る


しかたない、社会人としてはまず挨拶からだ


「はじめまして、タカハシと申します」

「はじめまして、タカハシさん、あたいはレイラってんだ、ここのギルド長をしている」


挨拶中に受付のお姉さんは目の前に水を置いてくれる


それを受け取りながら、まずは一口いただき考える

……姉御ってどうやればうまく付き合えるの? わかんないので、素のままはなそう


「で、呼ばれた理由は……」

「タカハシさん、単刀直入に聞くがここにいるメアリーはどうだい?」


ぶほっ! 咳き込んだ


「お母様! タカハシさんが困ってます!」


メアリーさんが話すが、部屋を出ようとはしてない……

あ、これは聞きたいということですね……はい……


「まだ、イグアスに来て7日目ですよ、ドルトン辺境伯家の皆様には本当によくしていただいてますが、それ以前に自分の食い扶持を確保しないといけませんので」

「そのままでは駄目かい?」

「転移者寮は住み心地が良いのですが、それはフェアではないですので」

「稼ぐあては?」

「ありますよ、ジェームス製紙工場に紙の漂白技術について提案中ですし、それが終わったらアントニオさんの依頼に取り掛かります」

「どれくらいの儲けになりそうだい?」

「おそらく紙の漂白は白金貨10枚以上になるでしょう」


「はぁ!?」

「え?」

「なんですと!?」


みなさん想定外だったようで、それからは次の説明をした


・ジェームス製紙工場1日で作れる紙の枚数が600枚

・漂白した紙はレアものになるので高く売れる、おそらく100枚で金貨1枚

・1年365日で売上が金貨2190枚となり、白金貨21枚と金貨90枚

・1日の人件費等の費用は板紙を買った費用と同じくらいとみて銀貨5枚、年間銀貨1825枚

・つまり、どう荒く見ても白金貨21枚以上の利益は出る

・特許料は利益の20%にしたが、ジェームスさんは特許を独占したいと話すので、利益の50%もしくは、即金で白金貨10枚と提案するつもり


「以上のことより、白金貨10枚が手に入ると思います」


そりゃ黙るよね、白金貨10枚といえば日本なら10億円だ、宝くじに当たったと仮定して……、仕事辞めちゃうよね


「メアリー、これアオキよりすごいんじゃね?」

「お母様、タカハシさんに失礼です! すごいことは同意しますが」


そんなに褒められ慣れてないので、照れるなぁ~


そんなことを考えているうちに親子の会話は続き


「で、冒険者か……」

「そうです……」


「いつ出発だい?」

「明日」

「メンバーは?」

「ミイ、マリー、私」

「許可は?」

「今晩とる予定でした」

「場所はあそこか?」

「はい、あそこです」

「何日予定?」

「明後日までの2日予定」

「目標は?」

「せめて50と考えてました」

「それじゃだめだな、100にしよう」

「え?」

「あたしも行く」


……メアリーさんがなんとも言えない顔をする


「お母様、来ていただけることはありがたいのですが……、お仕事の方は?」

「大丈夫、こっちが重要だ」


受付のお姉さんもうなづいている


「お母様が来ると、男性が大変なことになりますし……」


ぶほっ! そんな開けっ広げなことを!


「そんなことはしないさ、なぁタカハシ?」


レイラさんはにやりとこっちへ向く

何でこっちに振るんですか!?


「自分としては、クライアントであるアントニオさんともめることはしたくないですね」

「なに、ばれなきゃ大丈夫、ぐはっ!」

「レイラ~駄目だよ~」


ミイが結構力を込めた肘で突っ込む、ナイス! ミイさん


「では、お母様、この後は?」

「ああ、一緒について行って、領主館に戻り夕食を取るよ」


そのあとは、メアリーさんがチーム申請の手続きをしたあと

ギルド前でミイさんと別れ、メアリーさん、レイラさんと一緒に馬車に乗り、転移者寮へ戻った


戻った際にメアリーさんはマリーさんへ


「明日、ダンジョンへ行きます、装備一式整えて同行して」

「かしこまりました、タカハシさんのアイテムボックスに入れることでよろしいでしょうか?」

「はい、それで問題ありません」

「かしこまりました」


そのまま、馬車が去るのを見送って、転移者寮へ入る

夕食を食べ、ポーションを2本ほど作った後、7日目の夜を終えるのであった

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