第17話 製紙工場

製紙工場は街の東側にあった


工場のオーナーなのかな、ちょっと裕福そうな人が迎えてくれた


「ようこそおいでくださいました」

「おせわになります~」


オーナーはメアリーさんと挨拶を交わす


「はじめまして、ジェームスです」

「はじめまして、タカハシと申します」

「今日はどのようなご用で」

「実は、新しく紙を使う商品を考えているのですが、今の技術でそれが作れるのか確認したく思いまして」

「そういうお話でしたらウェルカムです、よろしければその新商品についても発注いただければ……」

「まぁ、それはおいおいに」


さて、異世界の製紙技術だが……


・原材料は麦藁むぎわら稲藁いなわら

わらを灰の入った水で煮て繊維を取り出す

・煮るため窯は魔力専用の窯

・繊維を取り出した後、長網式抄紙機ながあみしきしょうしきの金網で紙を漉き取る

・漉き取った紙は毛布の上に乗せ、リールで巻き取る

・できた紙をある程度切断し、陰干しで乾かす

・紙の色は少し黄色

・すべて人力で作成している


なるほど、ほぼフォードリニアマシンだ……

抄紙機しょうしきがあったことは非常によろしかったが、改善点は多い

だがまずは、あの紙製品から作るか……


「ありがとうございます、大体作り方はわかりました、ちなみにこの工場では1日どれくらいの紙を作り出せますか?」

「幅1mの紙を10km作るのが限界です」


A4コピー用紙が210mm×297mmなので、大体1600枚ちょっとくらいか?

これトイレットペーパーにするには高くない?


「機械は、ここにある2個ですかね? あと作業に当たられている人数は?」

「機械は2個です、人数は12名ですね」

「なるほど」

「もっと生産量を増やす予定はあります?」

「それなんですが……」


お、難しそうな感じ


「ですが?」

「最近、ライバル工場に石炭を使った蒸気を動力とする機械が導入されたらしく、生産量でかなり負けるようになりました」

「あ~、蒸気機関が導入されてるんですか!」

「うちも導入すべきか悩んでまして……」

「あー、金額面ですかね?」

「そうなんです! 白金貨100枚必要と言われてます」


おっと!? 100億円ですか! そりゃ高い?

いや、工場から直さなければならないから……多分正しいお値段かもしれない


「機械だけではなく工場も作り直しのような提案と思われますが?」

「そうなんです、わらを煮るための窯を石炭の熱を使うように変更する点、紙を乾かすのもその熱を使うそうです」


あー、かなりいい提案だ、これ蒸気機関を作る人に会ってみたい、乾かす方は現代と同じになるはず


「その提案はいいかもしれませんが、工場を作り直す間、紙が作れなくなりますね……」

「そうなんです、新しく工場を作ることも考えてますが、そうなるとすべての機械を発注するので白金貨200枚以上かかりそうで……」

「うわ、結構お値段かかりますね」

「はい、さらに魔力充填担当者を配置転換しないといけなく……」


お、工場に魔力充填できる人がいる!? いいことを聞いた


「いつまでに回答しないといけないのです?」

「3週間以内ですね……」

「回答はどれくらいで考えてます?」

「いい案が出て、値段が安くなるかもしれませんので、3週間ギリギリで回答しますよ」

「なるほど、いい考えですね」

「さて」

「さて?」

「なにやら、新しい商品を考えているとか?」

「あ、そうでした、今作っている紙を分厚くすることってできますかね?」

「今作っている紙は、筆記用の紙で5枚くらいで厚さ1mmになってますが」

「そうですね、1枚厚さ1mmくらいの紙を1m四方でいただければ……」

「それなら、実験的に作った紙があるはず……ちょっとお待ちを」


なんと! もう作っていた!


「これになります」


あった! 板紙いたがみ! 1枚のサイズは1m四方


「これを1枚ほどいただきたいのですが、おいくらですか?」

「そうですね、ばら売りはしていないので……」


ジェームスさんはチラッとメアリーさんを見る

なるほど? 税金? そういうこと?


「わかりました、丸ごとでおいくらですか?」


100枚くらいありそうだ


「そうですね、銀貨5枚でいかがでしょうか?」

「? 安くありません?」

「いえいえ、きちんと利益は出てます、でもこのまま売れ残ってしまうのもあれなのでお値引きはしてますが……」

「ありがとうございます、では銀貨5枚を」

「はい、いただきました」

「ちなみに」

「ちなみに?」

「もし、これと同じ紙を大量に発注することがありましたら、また来ます」

「はい、その時はジェームス製紙総員で対応します」


板紙いたがみ100枚をアイテムボックスに入れ、お礼を言って工場を後にする

ジェームスさんいい人だった

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