概要
クピド症候群と名付けられた病気の専門病院は、その症状と特異性から「虫籠」と呼ばれていた。
おすすめレビュー
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- ★★★ Excellent!!!蝶の翅が彩る、美しいだけではない恋模様
病気を患って入院することになってしまったら、一日も早く快癒して退院したいものでしょう。でも、その病気の症状が背中に蝶の翅が生えるというもので、治療には「恋をすること」が必要だとしたら、どうなるでしょうか。
蝶の翅が生える病気、との設定に興味をもって読み始めた本作、すぐに症状そのもの以外にも様々な問題というかドラマを孕んだシチュエーションであることに気付いて引き込まれました。
美しく珍しい姿の患者たちは、「虫籠」とも呼ばれる病院に保護の名目で収容されます。医師もスタッフも美男美女ばかりなのは、患者が恋愛感情を抱けるように。閉ざされた環境の限られた人間関係の中で、翅を持つ少年少女たちは「…続きを読む - ★★★ Excellent!!!美しく不思議な病と、少年少女の恋の話
背中に蝶の翅が生える奇病・クピド症候群。恋をすると翅が落ちて治るという部分も含めてなんとも美しい病。
そんなクピド患者が集められた虫籠と呼ばれる病院を舞台に、色々な「恋」を描いているお話です。
恋をすれば治るのなら、自覚した瞬間にさっさとその気持ちを受け入れてしまえばいい――と割り切れるのは元々こざっぱりした性格を持っている人か、ある程度経験を積んだ大人くらいでしょう。しかしこの病は成人前の子どもしか発症しません。
それなのに恋をしたら翅が落ちます。つまり恋をしたこと、さらに場合によってはその相手まで周りに知られてしまうのです。
多感な年頃にはなかなかハードルの高い状況……そんな中で彼らが…続きを読む - ★★★ Excellent!!!翅は自由を齎し、蝶は標本を誘う。
人の背中に蝶のようなハネが生え、恋をすればハネは落ちる、クピド病。
そんな奇病にかかった少年少女が集められる施設は『虫籠』の異名で知られる。美しい温室も備えたその施設は、不穏な謎も纏いながら、思春期の揺れ動く感情を湛えている。
とかく、美しい。
蒼穹に透ける翅、温室のガラスに触れそうな掌、夜闇に融ける会話。クピド病という病の美しさに、サナトリウムのような(この奇病は治るはずなのだが)静謐さが輪をかけて、情景を美しくさせる。
短編集の趣きだが、共通する登場人物が抱える謎こそが一層仄暗く、物語の輪郭がはっきりと見える日が待ち遠しく思える。
現代を舞台に、隔離された施設での、奇病を介した感情の…続きを読む