概要
死亡していたのはゴミ屋敷の住人で60代の老女、花村悦子。
警視庁の森川警部は聞き込み捜査を進めるうちに、彼女がかつて銀華という名の知れたキャバクラで働いていた人気ホステスであったこと、だが近年はゴミ屋敷にまつわる近所トラブルが絶えず周囲から疎まれていたことを知る。
センセーショナルな話題は各方面に飛び火し、マスコミもこぞって『ゴミ屋敷殺人事件』として報道を重ねたが、老女の死因が寒さによる心筋梗塞であったと判明し、事件性は薄いと判断して警察は事件から身を引いた。
――市役所の山村優馬の元にゴミ屋敷の処理の話が回ってきたのは世間のほとぼりが冷めたある日のことだった。
おすすめレビュー
新着おすすめレビュー
- ★★★ Excellent!!!日本社会の表と裏。そこに一人の女性の人生がある。
圧巻。ああ、これがカクヨムで言うところの『現代ドラマ』なのだなと、深く思い知らされました。まさにトンカチで頭を殴打されたかのような……。
物騒な喩えになってしまいましたが。
だんだんと主人公(というより、謎多き人物)・悦子の人生において、いつ、何があったのか? それが明確な文章の形をとって、読者である我々に開示されていく。
それが貴作の主な形式ですが、描いている『内容』と『文体』が、恐ろしいほどマッチしています。
魔法もビームもハイメガキャノンもない現実世界、そこにぽつんと存在するゴミ屋敷。
そこからどのくらいの規模で、どのくらいの人数を登場させるか?
それが計算し尽くされていて、どん…続きを読む - ★★★ Excellent!!!そこへ一歩足を踏み入れるごとに「彼女」の人生が浮かび上がる
タイトル通り、ある日ゴミ屋敷の住人である老女が死んだ、というところから始まる物語。市役所職員とボランティアによってゴミ屋敷の処理が進められるなかで、ひとりの女の人生が浮き彫りになってくる。
ゴミの城と化した屋敷へ一歩ずつ足を踏み入れるごとに、読者も誘われるように「彼女」の過去へと入り込んでしまう。今は口を開くことのない彼女の代わりに、ゴミがその人生を物語る。そこには「ゴミ屋敷の住人」という表面からは計り知れない奥深いドラマがある。
過去と現在をつなぐオブジェの数々。そのひとつひとつにも物語があり、その時を必死で生きた女の姿が刻み込まれている。
読者は彼女を知るほどにもっと知りたくなるだろう。…続きを読む - ★★★ Excellent!!!あなたの近くにも潜むリアル。その人の死は様々な人生を読者に投げかける。
まず、タイトルが素晴らしいです。
この一文だけで、10万字を超える長編の始まりが見事に表されています。
タイトル通り、ある日ゴミ屋敷の女主人が亡くなります。
警察の捜査が入りますが事件性はないと判断され、それから市役所環境課による屋敷の壮絶なる処理作業が始まるわけですが…。
環境課の職員・優馬は大量のゴミのひとつひとつに故人の人生の意味を捜します。
不思議なゴミの様相、近所の人の話などから、花村悦子という名の故人の生き様が少しずつ解かれていくのです。
その人生は壮絶かつリアル。
まさに現代社会の問題点を多数浮き彫りにしているかのようで、その中で翻弄されながら生きてきた悦子という人物像を…続きを読む - ★★★ Excellent!!!勧善懲悪でない物語の醍醐味を体現した作品! 現実味が見どころ☆
読む前に知っておいていただきたいのは、この物語は善人と悪人がはっきりと分かれたお話ではないという事です。
きっとアナタが好きになれない登場人物も出て来る事でしょう。
ですが、そこがこの作品の醍醐味かなと思います。
犯罪者が倫理的にも絶対的に悪、犯罪に問われたことが無い人が絶対的に善などという事は現実にはなかなか無い事なのだと、この作品を読んで改めて気づかされました。
まさかゴミ屋敷の住人の死から、こんなに物語が広がっていくとはッ!
驚きました☆
主人公はもちろんの事、主人公と関わった登場人物たちの心理描写にご注目いただきたいです。とても細かく描写されています!
人間の良いところも悪い…続きを読む - ★★★ Excellent!!!一人の女性の人生を描ききった素晴らしい物語
町でも有名なゴミ屋敷に住む一人の老婆が亡くなります。
彼女は近隣の人から厄介者として扱われていました。
そしてゴミ屋敷は行政とボランティアによって片付けられていくのですが、そこからゆっくりと彼女の人生が紐解かれていきます。
そこから描かれていくのは一人の女性の濃密なドラマであり、ゴミ屋敷を築いたミステリーであり、感情を静かに揺さぶる文学でもあります。
とにかく面白いの一言に尽きます。そしてすごく胸に残る物語でした。
どんなに抗おうとも何度も襲い掛かる過酷な運命、そこで彼女が下す決断は良いとか悪い、正しいとか間違っている、なんてことを簡単に吹き飛ばします。
彼女はゴミ屋敷の主人、立派な…続きを読む - ★★★ Excellent!!!そのゴミ屋敷は、彼女へと続いている。
主人公はゴミ屋敷を片付けることになった三十路の男。ゴミは層をなし、崖となり、行く手を阻む。しかしその層は、まさしくゴミ屋敷の主の人生そのものだった。そして謎の指輪2つが、猫砂を敷き詰めたタンスから出てきた。さらに主人公を驚かせたのは、あれだけのゴミに埋もれながら、寝室だけはきれいな状態で残されていたことだった。一見、不可解なゴミ屋敷。
しかし、そこはかつて一人の美しく明るく、誰からも好かれる女性の家だった。女性はキャバクラで働いていたが、ある事件を契機に転落していく。そして「神の声」に導かれるように、ゴミを集めだす。そのゴミの中の玩具を近所の子供に与えていた。女性は、野良猫に餌をやり、一…続きを読む