日本社会の表と裏。そこに一人の女性の人生がある。

圧巻。ああ、これがカクヨムで言うところの『現代ドラマ』なのだなと、深く思い知らされました。まさにトンカチで頭を殴打されたかのような……。

物騒な喩えになってしまいましたが。
だんだんと主人公(というより、謎多き人物)・悦子の人生において、いつ、何があったのか? それが明確な文章の形をとって、読者である我々に開示されていく。

それが貴作の主な形式ですが、描いている『内容』と『文体』が、恐ろしいほどマッチしています。

魔法もビームもハイメガキャノンもない現実世界、そこにぽつんと存在するゴミ屋敷。
そこからどのくらいの規模で、どのくらいの人数を登場させるか?
それが計算し尽くされていて、どんどん引き込まれます。

文体に関しても同じく。
どの要素をどの程度広域展開すべきか・あるいはせざるべきか、その取捨選択が凄すぎる。
最早『巧みだ』だの『洗練されている』だのといった有体な言葉では表しきれません。

これは……一種の恐ろしさというか、怖いもの見たさというか。
それを欲して、我々は否応なしに、しかしきちんと体勢を整えた上で、一文一文を吟味させられてゆきます。

上述しましたが、凄い。凄すぎる。人物描写が特に、生々しくてある意味美しい。

わけの分からないレビューになってしまったこと、皆様(特に著者様)にお詫び申し上げねばならぬところです。

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