★★★ Excellent!!!
そこへ一歩足を踏み入れるごとに「彼女」の人生が浮かび上がる 柊圭介
タイトル通り、ある日ゴミ屋敷の住人である老女が死んだ、というところから始まる物語。市役所職員とボランティアによってゴミ屋敷の処理が進められるなかで、ひとりの女の人生が浮き彫りになってくる。
ゴミの城と化した屋敷へ一歩ずつ足を踏み入れるごとに、読者も誘われるように「彼女」の過去へと入り込んでしまう。今は口を開くことのない彼女の代わりに、ゴミがその人生を物語る。そこには「ゴミ屋敷の住人」という表面からは計り知れない奥深いドラマがある。
過去と現在をつなぐオブジェの数々。そのひとつひとつにも物語があり、その時を必死で生きた女の姿が刻み込まれている。
読者は彼女を知るほどにもっと知りたくなるだろう。そして理不尽な運命に憤り、愚かさにため息をつき、束の間のあたたかさに安らぎを覚える。そして、読後にはあたかも彼女が本当に存在したかのように、その姿が脳裏に残ることだろう。
本作はそういう作品である。