第2話 選択の間


 ◇  神秘的な空間  ◇



 雲の上に浮かぶような、ふわふわした感覚。

 声をなんとか出そうとしても、何も声が出せない。


【 ようこそ アナザーワールドへ 】

【 キャラクターメイキングスタート 】

【 制限時間 残り30分 】

【 No.27 肉体を作成し、開始地点をお選びください 】


 システマチックな音声のアナウンスと同時に、目の前の空中に選択画面と一冊の本が浮かび上がる。




「いきなりすぎるだろ!ここは転生前の場所って事かなぁ。制限時間30分で、これを見て決めろって事か」


 まずはゆっくりと一呼吸。ひとまずは、冷静に落ち着いてから。パラパラっと本をめくり、ざっと早読みしながら、重要そうな所をもう一度詳しく見てみる。


 新世界の情勢・知識・召喚獣・ダンジョン作成などなど。


 新しい肉体・加護・スキル設定について


 ダンジョン作成の為に必要となる、簡単な説明が色々と書いてある。詳しい情報については書かれておらず、自分自身で情報を集めるしかないようだ。



【 種族 】魔人(王種・幼生体)ダンジョンマスター

【 名前 】レンディ 

【 レベル 】1

【 DP 】0

【 魔力 】220

【 加護 】魔眼:鑑定 魔力増幅 念話

【 スキル 】魔力操作1 隠密1 感知系:気配1 魔法系:火1水1土1光1時空1


【継承】人型種共通言語1、ダンジョン基礎知識、知識の本、初心者セット



 名前は思い切って、ゲーム時代によく使っていた名前を参考にしてみた。

 Rendir(レンディル)スペイン語で、『屈服させる』みたいな意味だったかな。


 初期設定として用意されている、ダンジョンポイント(DP)1万ポイントをフルに使い、基礎能力の高い肉体を作成。


 一番ポイントを大きく使ったのは、魔人・王種の6000ポイントだ。その次は固有能力の魔眼に2000ポイント。肉体だけで、なんと合計8000ポイント。残りはスキルなどで使い切った。


 残りポイントがなくなるのは不安だが、思い切った選択をして使いきってみた。


 余程のデメリットを選んで、選択出来るポイントを増やさない限り、通常では選べないという伝説の種族もいて、そういった種族の中……何故か適正があって、割引で選べる幼生体がいた。4分の1のポイントで選ぶ事が出来てすごいお得な割引だ。どんな能力が眠っているのかは未知数だが、今後に期待してみようかな。



【 サポート召喚獣 】

 次はダンジョンコアの機能を、遠隔操作やサポートしてくれる召喚獣を選ぶ。


 様々な種類の中から、ものすごく可愛いのを発見してしまった。


 選んだサポート召喚獣は……基本外見はカーバンクル。リスのような骨格に長い耳、体の色を綺麗な水色にして、額にある宝石は赤色に変更。


 カーバンクルの名前は、外見から宝石のラピスラズリを連想して『ラピス』。紋章となる刺青の位置は、部位欠損で消えないように心臓の位置。


 可愛い幻獣に助けてもらえると思うと嬉しいな。


 知識の本・肉体作成・地域選択の時に手に入った情報を整理して、知識の重要そうな部分を、思い出してみる。



【 参加マスターの人数 】

 名前から推察すると、27番目のダンジョンマスター。管理されていない野良ダンジョンなどは、無数にあるようだ。


 基本種族は、人間・獣人・エルフ・ドワーフ・天使・悪魔・魔人・魔物・竜人。各種族の中でも、基礎性能から進化種なども、色々と選べるようになっていた。その他にもいる可能性がある。



【 ダンジョンコアのランク 】

 ランクはSABCDEFGとあり、Gランクスタート。ランクによって、召喚リストや守護者の数に制限がある。Gランクでは、召喚リスト5表示・守護者可できる上限数1・召喚・ガチャコストの上限数値100である。



【 ダンジョンコアのランクアップ条件 】

 守護者の数、領域の広さ、コアの数が重要になり、初期GからEへ上がる条件は、守護者獲得と領域の拡大。ランクアップの為の情報は、詳しくは書かれていなかった。自分自身で知識を手に入れるか、条件を予想してクリアするしかなさそうだ。



【 世界の大陸と境界 】

 名前を『アナザーワールド』。地球のような丸い惑星で、大きい中央大陸は、オーストラリアのような形。……かなりの大きさの大陸だ。大陸の周囲には海が広がり、中央大陸以外にも、大小様々な大陸がいくつか存在するが、今は灰色がかった表示で選択できない所も多い。


 大都市や立地の良さそうな場所は、選択不可能な領域があり、他のダンジョンマスターが居る可能性が高い。



【 世界の人口 】

 文明レベルは中世ヨーロッパ程度で、魔力によって発展した魔道具などの文明もある。中央大陸には4つの大きな都市があり、他にも……街があったり、村単位での少人数で生きている人がいるようだ。世界には狂暴な魔物が跳梁跋扈し、都市には結界があるが、その他の地域では魔物との戦いが激しく、弱肉強食の世界みたいだ。



【 サポート型召喚獣システム 】

 肉体に宿る紋章型の刺青を通し、ダンジョンコアにリンクしたり、サポート型召喚獣を召喚する事が出来る。戦闘は出来ず、ナビゲートによって、ダンジョン運営をサポートしてくれる。形状は、用意された数種類から選べる。紋章を消失した場合は、ダンジョンコアにてポイントを消費する事で、再発行する事が出来る。



【 その他 】

 1年ごとにダンジョンランキングの発表がある。特定の条件を満たすと、ダンジョンコアの機能が拡張される。迷宮神からの告知などは、ダンジョンコアの機能を通して伝えられる。



 制限時間 残り10分



 説明書の中で重要そうな箇所は、この位かな……。覚えておく事が多い、さらにこれからどんどん情報は増えていくと思う。


 スタート地点は、中央大陸・海から少し離れた場所・川と湖の近く・地形の高低差・土地の状態などなど。色々な情報を考慮し、大陸の北東へと決めた。


 大森林が広がり、山々が連なる山間のふもと。山頂に登れば、海が見渡せる絶景ポイントだ。海の先には、大小様々な島がある。


 しっかりと世界地図と周囲の様子を確認しながら、必死に地形を覚える。



 制限時間 残り3分



 ドキドキしながら、最終決定のボタンを押す。



【 ようこそ、アナザーワールドへ 】



 だんだんと、意識が遠のいていく……。

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