第35話 島の南東地域と、防衛拠点①
【 猫達の離島 2日目 】
お魚騒ぎがあった翌日……。
さっそく島を攻略するために、動き始める。
今日の目標は、島の南東地域の調査と敵の討伐だ。
中央近くの南東には、湧き水の湖と川が流れる場所があり、東の端近くにも小さな水場がある。両方の水場とも、魔物がうろつきまわり、危険な地帯だ。今日はその魔物、リザードを討伐していく。
【 討伐隊の編成 】
◇地上斥候チーム
守護者ライガー、ホーク1、ウルフ10、騎乗できるコボルト4。
◇上空チーム
守護者セレネ・ソラ、ホーク8、セイレーン5、ワイバーン2。
◇主力チーム
マスター、守護者マシロ・凛、アリシア、ティナ、ククル。
スライム2、ウルフ4、コボルト30、ホーク4、マジカルキャット4。
ドッペル5、アラクネ10、ビッグタイガー4、ヴァンパイア4。
◇援軍チーム
ケットシー4、猫獣人12。
◇騎乗・荷物運搬用
ウォーホース15。
援軍として参加する猫達も、やる気に満ちた様子。ほとんどの者がレベル30を超えた、総勢100を超える大部隊だ。
◇
「よし、まずは東の水場まで向かいながら、敵を倒していくぞ!」
「わぅ。南東地域を制圧しましょう!」
「にゃ。やってやるにゃ!」
マスターの出発の合図と共に、やる気に満ちた声を上げて進み始める討伐隊。
配下達の中でも、選りすぐりの精鋭部隊……。チームごと、種族ごとにまとまり、心地良い緊張感を保ちながら、慎重に進み始める。
南東地域は所々に木々が散らばる森。開けた場所や、水場もあって様々な魔獣が住んでいる。
先行部隊のライガー達が、少数の敵を発見しては、すぐに倒していきながら、どんどんと進んでいく。
「ガウッ。マスター、この先で敵の集団を発見しましたぞ!」
「わかった。本隊の主力部隊で相手をする」
発見した敵は、通常のリザード8体、アーマーリザード4体。最初に肩慣らしをする相手としても、丁度良さそうだ。
「……ライトニングボルト! よし、次は刀で相手だ!」
牽制として雷魔法で攻撃する。そして、今度は日本刀を使って、体の調子を確かめるように倒していくマスター。
相手の戦闘能力を見極めながら、確実にリザード達をたおしていく。アーマーリザードも、弱点である首や、魔法での攻撃なら、問題なく倒せるみたいだ。
弱肉強食のこの世界。ちょっとした油断が命取り。緊張感を緩めず、慎重に。
配下の者達も、何度も戦いを経験してきた猛者達。危なげなく敵を倒している。倒した魔物の処理は、解体が得意な部隊にまかせて、先を急ぐ。
その後も何度か少数のリザードと遭遇したが、危なげなくたおして進んでいく。
「ガウッ。あそこが水場ですな」
「うん。安全確認をしたら、水は火で沸騰させてから補給しよう」
水を沸騰させて補給している内に、今後の予定の確認をする。
次の水場へと向かう本隊とは別に、30名の別動隊チームで散らばっている少数の敵を倒してもらう。
別動隊の指揮はセレネ、アリシア、ティナ、ククル達にまかせる。戦闘経験も豊富で森に強いメンバーなら大丈夫だろう。
「別動隊の指揮は、アリシアお姉ちゃんにまかせるね」
「お姉ちゃんにまかせなさい。森人のエルフにとっては、森なんて庭みたいなものよ」
「この大妖精であるティナちゃんがいれば、どこでも安心ね!」
「レン様。何かあれば、いつでも連絡してくださいね」
やる気充分といった感じのアリシア。別れ際になぜか、レン君成分の補給!と言われながら、抱きしめられる。
ペットのような弟扱いに、なんとも言えない気分。
だが、反論も出来ない、ちょっとだけ嬉しい。
……慣れって怖い!
本隊には、まだ100近い数がいる。別動隊と分かれても大部隊。このまま予定通り、次は川が流れる水場へと向かう。
「そろそろ、こちらも出発するぞ」
「ガウッ。露払いはおまかせくだされ」
ライガーを先頭に、また森の中を進んでいく……。
「ガウッ。この先に、エイプを発見!木の上に注意してくだされ」
「こっちにもエイプがいるのか。凜のアラクネ部隊と、和弓で狙ってみる」
「レン様、森の中では狙いにくいですが……曲射の技を使って、狙ってみるでありんす」
手信号を使い、前方に敵がいる事を伝えながら、凛とアラクネ達がいる弓部隊を率いて進む。
「いくぞ。風切……!矢羽をねじりながら、曲射の技を使って、木の上にいるエイプを狙うぞ」
「はい。まかせてくださいでありんす」
距離は50メートル程……前方に見えるエイプの数は、5匹程。
ゆっくりと体に魔力を巡らせて、身体強化をしながら……狙いを定めて、静かに弦を引く。
「いまだ……。狙い撃つ!」
マスターの弓矢が放たれる音と共に、同時にアラクネ達の弓矢も飛んでいく。
木々を避けながら、カーブするように進む矢は、見事にエイプに命中!身長に併せて作られた、小柄な和弓。敵を貫いた弓矢が……さらに木に深々と刺さっている姿を見ても、その威力は圧倒的だ。
熟練の弓の使い手である、アリシアに教えてもらって、毎日訓練していたおかげかなぁ。
「全員進むぞ!きっちり止めを刺すまで、油断はするな!」
様子を見ていた他のメンバー達も、弓矢から逃れた敵や、他に敵がいないかを確認しながら、一気に敵へと進んでいく。あっという間に、エイプとの戦いは終わってしまった。
エイプは群れで行動する。一気に仕留めないと……仲間を呼んで、数がどんどん増えてしまうという、やっかいな敵だ。
その後も、リザードやエイプといった魔物を倒しながら、川近くのポイントへと、順調に進んでいく……。
「よし、ここなら広さも充分。川にも近い、良い立地だなぁ~」
「わぅ。周囲を警戒しながら、一気に建ててしまいましょう」
今日の最終目標である、空地ポイントまで到着。ここで……新たな『防衛拠点』の建設だ。
その場所は、上空からも物資を運び込める、開けた空地になっていて、ケガ人が出た時、野営をする時にも、防衛の基点となる拠点があれば、安心して休む事も出来るだろう。
ワイバーンを呼んで、空から物資を運んでもらいながら、急ピッチで拠点を建設していく。現地で伐採した木材や、運び込んだ物資が雨に濡れないように、屋根付きの倉庫が作られ、物資がどんどんと運び込まれていく。
伐採したばかりの木材は、水分を含んでいて……すぐに燃料や木材として使う事は出来ない。魔法によって、ある程度の乾燥をさせた後は、拠点の資材として保管しておく予定だ。
「ふぅ……。まずは、これで一安心だなぁ」
「わぅ。これで南東地域は、安定しそうですね」
猫族達が居て、今後の為にも重要になる地域が安定してきて、ほっと一安心。といった感じのマスター。
まだまだ戦いは始まったばかり。これからは拠点を中心にして、敵の数を減らしていき……その後は、この島のヌシと言われる、強敵達が待っている。
島のヌシとの戦いは、今までにない激しい戦いになるかもしれない。気を引き締めながらも、休める時には、しっかり休むのも重要だ。
「ピューイッ」
「よしよし、良い子だなぁ~」
領域外で強引に念話を使おうとすると、大量の魔力が必要になる。
そこで……連絡手段として多用しているのが、ホーク達だ。マスターがよく愛用して可愛がっているのは、ブラックホークとなったスバル。可愛らしい仕草とは裏腹に、空を自由自在に飛び回り、戦闘能力も高い、肉食系のタカだ。
「なぁ、マシロは……戦いが、怖くはないの?」
「わぅ。怖いと思う時もありますが……いざという時に後悔しないように、毎日の訓練をしているのです。大丈夫ですよ」
日々積み重ねてきた、厳しい訓練を思い出す。
能力や技術だけではなく、心も鍛えられた訓練……。指揮官として冷静に、何があっても大丈夫なように、覚悟を決めて進む。不安になったり、困った時には、傍に居て支えてくれる仲間もいる。
改めて気持ちの整理をして、次なる戦いに備えるのであった……。
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