第5話 ダンジョン開通まで後少し

【 時刻:6時30分 】


 洞窟内で、今日も日課になりつつある掛け声がする。


「いっちにぃ~、さんっしぃ、ごぉーろくっ、しっちはっちぃ~」


 あっという間に、ダンジョン6日目。

 日の出から洞窟へと朝日が差し込むと同時に、早朝訓練が開始される。


 外の世界へと繋がるまで、残り30分程……。

 開通まであと僅かにもかかわらず、今日も元気にいつも通りの訓練だ。


 抱き枕と化したマシロから離れて、ベッドから起き上がると、寝起きからゆっくりとストレッチ。体の調子を確かめるように、ラジオ体操と素振り、その後は軽く体術訓練のスパーリングだ。


 最近でのコボルトリーダー、抱き枕と化したマシロとの体術訓練での対戦成績は、なんと……マシロの15連勝!!


 実力差はハッキリとしてきた。解せぬ!!


「うわっ、幼児相手にも容赦なしとか、マシロ強すぎるだろ!くっ、まだまだ~っ!」


「わぅ。訓練とはいえ、手加減しませんよ。」


 まさに、マシロ流のスパルタ方式。


 魔法を封印した体術勝負とはいえ、こんなにも負け続けるとは……。これでは、マスターとしての威厳にかかわる。もっと強くならないとなぁ。


 いかにマシロの基礎能力が高いとはいえ、体格の差・筋力の差・リーチの差など幼児にはきびしい世界だ。





【 1日目~6日目までの主な出来事 】


 1日目 生まれ変わり、現状確認、不貞寝する

 2日目 守護者、召喚獣召喚

 3日目 配下モンスターが増える。ダンジョンコアFランクへ昇格

 4日目 トイレ建築、湧き水の泉(小)の設置

 5日目 ウルフを守護者召喚、洞窟を拡張した場所にみんなで住居を建設

 6日目 開通前の最終チェックなう



 ◇現状確認。主な配下モンスター、残りダンジョンポイントなど


 ☆領域拡大後に、ダンジョンコアがランクFへと昇格

 守護者可能数1増加、魔素吸収、領域拡大能力が増加


 守護者:マシロ、ライガー

 スライム3匹、コボルト6匹、ウルフ2匹


 名づけによる効果は、繋がりの強化。守護者と違い、能力が上がったりはなかった。


 ◇配下モンスターの名前

 スライム:スラリン(1匹目のみ)

 コボル:♂クロ、コテツ、レオン ♀ココ、サクラ、ナナ

 ウルフ:♂ライガー、グレイ


 一日ごとの収益:271

 残りDP:58


 配下が増えた事で、食費が増えて……ぎりぎりレベルのかつかつである。衣食住は、なんとか最低限。外へと繋がれば、すぐにでも食料問題をなんとかしなければ。





「ダンジョンメニュー、ステータス」


【 種族 】魔人(王種・幼生体)ダンジョンマスター

【 名前 】レンディ 

【 レベル 】5

【 DP 】58

【 魔力 】☆298

【 加護 】魔眼:鑑定 魔力増幅 念話 

【 スキル】☆魔力操作2 ☆魔力回復1 ☆瞑想1 ☆体術2 隠密1 感知系:☆気配2 ☆魔力1 魔法系:火1水1土1光1☆無1時空1


 ☆マークは前回から上昇した目印。

 加護に固有能力としてユニークスキルが含まれる。


 魔力の増加と、日々の訓練の成果で、スキルが大幅に増えたのが嬉しい。


 毎日ぎりぎりまで魔力を使いきり、スキルを取得する度に嬉しくなって、訓練のやる気モチベーションも高い。努力した結果が、スキルに現れるのがすごく楽しい。


【 種族 】コボルト(亜種)

【 名前 】マシロ

【 レベル 】5

【 魔力 】☆122

【 加護 】☆念話 ダンジョン守護者

【 スキル 】☆魔力操作1 ☆統率2 ☆体術3 隠密1 身体強化2 感知系:☆気配2 ☆魔力1 魔法系:土1無1


 訓練による戦闘系スキルの増加、そして待望のユニークスキル『念話』を取得。

 召喚されてからは抱き枕にされていて、時々みせる仕草も可愛らしい。


 念話の取得条件は、守護者、ダンジョンマスターである事。取得する為のポイントは300だった。


【 種族 】ウルフ(亜種)

【 名前 】ライガー

【 レベル 】4

【 魔力 】☆108

【 加護 】嗅覚増幅 ☆念話 ダンジョン守護者

【 スキル 】☆魔力操作1 統率1 ☆体術2 ☆身体強化2 感知系:☆気配2 魔法系:雷1無1


 2匹目の守護者であるライガーも、コボルトのマシロと同様に、リーダータイプだ。性格は従順で、なんともいえない古武士のような貫禄があり、威厳も備わっている。


 初期状態の配下モンスターはこんな感じ。


【 種族 】スライム

【 名前 】初期

【 レベル 】1

【 魔力 】10

【 加護 】吸収1 消化1

【 スキル 】魔法系:無1


【 種族 】ウルフ

【 名前 】初期

【 レベル 】1

【 魔力 】20

【 加護 】嗅覚増幅1

【 スキル 】体術1 魔法系:無1


【 種族 】コボルト

【 名前 】初期

【 レベル 】1

【 魔力 】30

【 加護 】

【 スキル 】体術1 感知系:気配1 魔法系:土1無1


 守護者のマシロと違い、初期状態のモンスターは弱い。

 訓練でスキルを強化してから、実戦に参加させたい所だ。


 配下モンスターとの意思疎通は、基本的には念話でイメージを伝えながら会話をし、コボルト組はマシロという通訳を通して、会話をしてる感じだ。


 念話のテストとして、色々と検証してみると……対象の相手が離れていると、遠距離になればなるほど魔力の消費が激しくなる。逆に対象に触れている状態だと、魔力の消費はほとんどないみたいだ。そしてさらなる発見としては、守護者との念話は対象が離れていても、繋がりを通して会話をすれば、魔力の消費無しで行える事がわかった。



【 時刻:6時55分 】【 ダンジョン開通まで残り5分 】



 確認の為にも、そろそろみんなに声をかけなきゃだなぁ。


「ダンジョン開通までもう少し……。まずは、斥候として守護者のライガーが周囲の様子を確認。何かあれば、安全重視ですぐに撤退だ。命を大事にしろ!その後は、Bチームのウルフ1匹とコボルト4匹で周囲の安全確保と警戒。その後に、俺たち主力組Aチームも探索に出るぞ!」


 役割の確認をしながら声をかけると、みんな興奮してるみたいだ。


 自分自身も、未知の新世界への第一歩にドキドキしっぱなし。調子に乗って失敗しないように気をつけなくちゃ。



【 No.27 レンディのダンジョンが開通されました 】



 システマチックな音声と共に、洞窟の入り口にあった『光の膜』が解除される。


「よし、行けライガー!周囲の確認をしたら、すぐに戻って来いよ!」


「ガウッ!さっそく周囲の確認にいってまいります」


 はやる心を落ち着かせるようにゆっくりと深呼吸をし、その場でゆっくりとストレッチをしながら、ライガーの帰りを待つ。


「まずは安全第一。無茶はしない。冷静に!ライガー早く帰ってこないかなぁ……うーん、大丈夫かなぁ~」


「わぅ。落ち着いてくださいね。」


 時間にして10分程だろうか。今か今かと待っていると、ライガーが帰ってきた。


「ガウッ!ただいま戻りました。周囲には危険な生物はいないようですぞ。小さな動物が数匹いただけでしたな」


「よくやった。さっそくみんなで探索に行くぞ!!」


「きゅいっ」「わうっ」


 ラピスやマシロの声と共に、配下モンスター達も、声を上げてやる気をアピールする。

 最優先は食料だけど、他に色々な発見があると嬉しいなぁ~。





「よ~しっ!いっくぞぉぉおー!!」


「わぅ……!?待ってください、マスター!」


 こらえきれないように、真っ先に飛び出していくマスター。

 慌てながらも、守護者と配下のモンスターが、すぐさま後を追いかける。


 さっきまでの自分自身への注意事項は、一瞬で忘れ去られてしまうのだった。

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