第9話 ゴブリンの集落を襲撃
【 異世界転生 18日目 】
恒例となっている朝の訓練風景を、ゆっくりと一人一人を確かめるように見回す。
思いつくままに作った、立体機動を鍛えるアスレチックなどの、施設も充実してきた。植物のローブと木材を組み合わせた物など……色々な種類の、訓練用具がある。
訓練教官として、みんなを鍛えているマシロを呼ぶ。
「新しく召喚したモンスター達も、みんなに混じって頑張ってるみたいだな」
「わぅ。マスターが用意してくれた『訓練メニュー』を参考にして、言葉が通じない者にも、一人一人念話で、イメージを伝えながら指導してますよ」
訓練を行っている装備は、木製の物と獣の毛皮が多い。
木刀・木の槍・木の盾・木の兜・木の仮面・木の小手。
毛皮は、シンプルにマントのように使っている。
さらに、初期に名前を付けた戦闘部隊には、商品カタログから購入した、短剣も渡してある。
「マシロ、今日は訓練を早めに切り上げて、ゴブリンの集落に向かう者を選ぶぞ」
「わんっ。ついに、あの集落を攻めるんですね!」
洞窟の西側には森があり、その奥へと進むと20匹程のゴブリンが居る集落がある。
海へと向かうには……ゴブリンの居る場所の近くを通る事になるので、先手を取って攻める事にしたのだ。
「よし、みんな揃ったな!今回選ばれなかった者にも重要な役割がある。みんなの帰ってくる場所をしっかりと守ってほしい。ダンジョン防衛部隊の指揮はイブキにまかせたぞ!」
「わんっ」
初めての集団戦、相手がゴブリンとはいえ油断出来ない。
命の奪い合い、訓練を毎日しているとはいえ……実戦不足で、戦闘経験の少ない者も多い。気を引き締めて、しっかりと指揮をしなければ。
【 ゴブリン集落 襲撃メンバー 】
ダンジョンマスター
守護者:マシロ、ライガー
ウルフ:3匹
コボルト:12名
ホーク:1匹
バルム:1頭
ウルフ1匹、コボルト4人の基本構成の3チームと、マスターの居る主力部隊に分けて攻める予定だ。
「よし、準備は整ったな。みんな、行くぞーっ!!」
「きゅい」「ガウッ」「わんっ」「パオーン」
斥候役のライガーを先頭に、チームごとにまとまって移動していく。
ホークは上空からの偵察。ワイバーンにも警戒だ。
小型の象に似たバルムは、荷運び役としての参加。
初めての大規模な集団戦……。
みんなの表情を見てみると、やる気充分で興奮している者、緊張のせいか硬い者など様々だ。
集落に近場で一度みんなを停止させ、外に出かけているゴブリンがいないか、落ち着いて確認をする。
ABチームは正面から、CDチームはそれぞれ左右から。
「たおしきれなくて、逃したゴブリンの深追いはしないように。ケガをした者は、無理せず後退して援護に徹するようにな」
改めて、繰り返すように作戦と注意を促す。
静かに……それぞれのチームのリーダーに従って、その場を離れていく。
「よし、そろそろ主力部隊の俺たちも動くぞ」
「わんっ。前衛はマシロにまかせてください!マスターの為にも、道を切り開いてみせますね」
「ガウッ。我は、周囲の警戒と援護をしよう。マスターには近づけさせぬ」
初めての戦いとあって緊張するが、今回は守護者達に接近戦をまかせて、ダンジョンマスターである自分自身は、比較的安全な魔法主体での戦闘となる。
低い前傾姿勢から素早く飛び出していくマシロとライガー。
あっという間に入り口の見張り達が倒され……さっそく、集落へと踏み込んでいく。
高めた魔力を土属性へと変換し、足元の地面から魔法の元となる、土の元素を手のひらへと集める。
「……ストーンショット!……ストーンジャベリン!」
風魔法も使って回転する石弾を発射したり、地面から作り出した槍を身体強化で投げつける。守護者達が前衛として大暴れする中、土魔法で援護しながら、1匹1匹を確実にたおしていく。
順調にゴブリンをたおしていくと、中央にある一番大きな建物から、声を荒げながらドカンと音をたてて、壁を破って出てくる大柄なゴブリンを発見する。
「あいつがこの集落のボスかな?」
「ガウッ。ゴブリンの中では一番歯応えがありそうですな」
「よし、マシロ・ライガー!あいつには手出し無用。……俺が、直接片付ける」
「わぅ。無茶はしないでくださいね」
大柄なゴブリンと向き合いながらも、さっそく魔法を発動する。
「……ストーンショット!!」
魔力を先ほどより多めに混めた、石弾を複数発射する。
「グルラァァア~!!」
大柄なゴブリンの全身に魔力が走り、身体強化をしながら……両手で魔法をガードしつつ、こちらへと突っ込んでくる。
相手が負傷しながらも近づいてきた瞬間。
全身に薄く、足元には多めに魔力を集め、身体強化をしながら……こちらからも、飛び出していく。
すれ違いざまに、ショートソードで足へと一閃!
体制を崩しながら、手をついて振り向こうとした相手を、素早く先に態勢を整え……距離を詰めて、軽く飛び上がりつつ、首を一気にはねる。
「大将首、討ち取ったり!!」
「わぅ。お見事ですね」
「ガウッ。おみごと!」
群れのボスをたおした後は、残ったゴブリン達を協力しながらたおしていく。
たおしたゴブリンの数は……偵察した通り、20匹程。こちらの被害は、かすり傷を多少負った者がいる程度だ。
どうしても、印象に残ってしまった場面もあった。
赤子をかかえて逃げるメスや、小さな子供が居た事だ。最初から殲滅する予定だったが……それを見て、戸惑ってしまう場面もあった。
ゲームなんかでは、モンスターと言えばレベルアップする為の存在。
でも、この異世界では……。
それぞれに生き方がある『必死に生きている』存在。
「ゴブリン相手とはいえ、もっと違う選択肢もあったのかなぁ~」
現状では、ゴブリンの赤子や子供を連れ帰って育てるのはきびしい。種族が違えば、価値観も大きく違う。考え方もそれぞれだ。
いつかは、みんなが楽しく共存できる場所を作りたい。そんな未来を、実現できるようになるといいな~。
戦闘後の後片付けを見守りながら、一人思案する。
まさに弱肉強食の、現実的な異世界……。
強さが無ければ、魔物に怯えて暮らすしかない。
「マシロ、俺はもっと強くなるぞ。心も体も両方だ!」
「わぅ。私だって、もっと強くなりますよ」
一人一人を、労う様に声をかけていくマスター。
ダンジョンマスターとして、魔物や魔人の王として、少しずつ成長していく……。
☆マークは能力UP、スキルUP
注意:スキルUPの恩恵は、知識と感覚の獲得。実際の強さとはまた違います。
【 日替わり収入:718 】
【 種族 】魔人(王種・幼生体)ダンジョンマスター
【 名前 】レンディ
【 レベル 】☆9
【 DP 】1420
【 魔力 】☆411
【 加護 】魔眼:鑑定 魔力増幅 ☆妖精魔法 念話
【 スキル 】☆統率2 ☆魔力操作3 ☆魔力回復2 ☆瞑想2 ☆剣術3 ☆体術3 隠密1 ☆身体強化2 感知系:気配2☆魔力2 魔法系:火1水1☆土3☆風2光1☆闇1☆無3時空1
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