第3話 新世界、0ポイントスタート
やわらかい暖かみのある、何かの光を感じる。
いつもとは……何かが違う。そんな違和感を感じて、ふとベッドの上で、目が覚める。
……ここは、どこ?
さっきまでの事は、『夢』じゃないよな?
辺りを見回してみると、そこは見慣れない場所。小さな木造の小屋の中には、テーブルと椅子があり、初心者セットらしき物とダンジョンコアがある。そして外の様子も、おそるおそる小屋から顔を出して確認してみる。
小屋の中、木造のテーブルの上にあるのは、初心者セット……。
ズタ袋・ツルハシ・短剣・砥石・ランプ・水袋・ロープ・替えの下着・服。椅子は、シンプルな木造丸椅子だ。
ダンジョンコアは、1、5メートル程の石柱の上に、多面体の宝石のような物が浮いている。
小屋の外に出てみると、縦横20メートル位の開けた場所になっていて、入り口から遠い場所に、ポツンと木造の小屋がある。
大広間から続く通路を進むと、洞窟の出口には……薄い膜のような物があって、そこから先へと続く、外にはまだ出られないようだ。
たしか、ダンジョンが開通するのは、転生から7日後だったかな。
「なんで洞窟スタートになってて、小屋があるのかわかんないけど、ちゃんと選んだ山間のふもとにある、あの場所だといいなぁ~」
近くには街らしき物はなく、海を挟んだ先には島があったはずだ。興奮するような気持ちを、ゆっくりと深呼吸して落ちつけながら、冷静に考えを巡らせる。
「ダンジョンメニュー、ステータス」
【 種族 】魔人(王種・幼生体)ダンジョンマスター
【 名前 】レンディ
【 レベル 】1
【 DP 】0
【 魔力 】220
【 加護 】魔眼:鑑定 念話 魔力増幅
【 スキル 】魔力操作1 隠密1 感知系:気配1 魔法系:火1水1土1光1時空1
不思議な空間で設定した通りのステータスに、ほっと一安心する。
「ふぅ、後はこの新しい体に、なんとかなれないとなぁ~」
新しくなった体を、点検するようにチェックしていきながら、イメージ通りに動くか……ラジオ体操のように、体を動かして確認する。さらに、初心者セットの短剣を使って、素振りをゆっくりと繰り返す。
「いっちにっ。さんしっ。ごーろく、しちはちっ!うわぁ、声高すぎ。子供すぎるだろ!」
幼生体と思って、ちゃんと覚悟はしていたけど、思った以上に体が幼い。3歳位だろうか?
見た目の服装は、シンプルな白いシャツに黒いズボン。足元は、白い靴下に黒いブーツだ。髪の毛の色は、銀髪だろうか?薄暗い場所だと、わかりにくい。
「むぅ~、鏡もないし、外見はいまいち確認できないのが残念だなぁ~」
とりあえずは体を動かして満足したし、次はやっぱり魔法の確認だな!
体の中の魔力を感じながら……イメージ次第で、ちゃんと魔法を使えるのかな?まずは、安全な魔法からがいいかなぁ。手のひらに電球をイメージしながら、さっそく魔法を試してみる。
「灯れ、魔法の光!」
初めての魔法なのに、なんとなく使える気がして、試してみると……まさかの一発成功。さすが魔人の王種だけあるなぁ。基本スペックが高そうだ。
「う~ん、色々試してみたいけど、検証もしてみないとなぁ」
ステータス画面の確認と、魔法の発動を交互にしながら、色々と検証してみる。魔法の威力や持続時間は、こめた魔力に応じて色々と変えれるようだ。
「ふぅ~。あっというまに、魔力がなくなっちゃう」
魔力の残りは50。魔法はここまでで、もう一つの検証かなぁ。
残った魔力のうち30位を、ダンジョンコアへと注いでみる。
【 DP 】17
「ん~、30位で17っていうのは、なんとも言えない数字だなぁ。ここは要検証かな」
仮説としては、魔力の質や魔力操作などが関係ありそうだけど、今は検証のしようがない。とりあえずは補給できたっていう事実だけでも、ちゃんと確認が出来たから、それでよしとするかぁ~。
「よし、あとはこの初心者セットのツルハシや、土魔法を使って洞窟の拡張が出来るかどうかかなぁ~」
なんとか重いツルハシをかかえて、洞窟の壁を少し掘ってみる。自動的に掘った場所が、修復されたりはしないみたい。ダンジョンメニューの中にある、迷宮設定の『状態保存』を押さなければ、大丈夫なのかなぁ。
「とうぶんはDP節約の為にも、自力でダンジョン作成するしかないかなぁ」
小屋にもどって、今後の計画を色々と思い描いていると……だんだんと、おなかが減ってくる。
「うわぁ~、ダンジョンマスターって、おなか減るのかよ!」
ここはゲームじゃなくて現実世界。中途半端にゲームの知識があるからこその、勘違いだなぁ。ここはゲームじゃなくて、『現実世界』って事をもっと考えて、今後の事を決めなきゃ~。
知識の本によると、入り口が解放された後は、ダンジョンの外へ出る事も可能のようだが、領域外では固有能力の制限がかかり、身体能力も低下するようだ。
「ダンジョンメニュー、商品カタログ」
メニューを表示して、カタログを確認してみる。
「うわっ、商品少なすぎぃ~。とりあえずは、おにぎりと野菜スープでいいかな」
おにぎり3個セット:5DP
野菜スープ:3DP
なんか、食べたら眠くなってきちゃうなぁ。
「あとやる事は……何かあったかなぁ~。あっ!!そういえば、モンスター召喚してないじゃん!」
メニューの中にある召喚から、魔獣リストを眺めてみる。
ダンジョンコアGランクだと、召喚コストの限界は100。
スライム:10DP
ゴブリン:30DP
キラーアント:40DP
ウルフ:50DP
コボルト:70DP
オーク:100DP
残りDP:9
「うわぁ~。スライムすら召喚できないじゃん!!」
さすがに0ポイントスタートは、やりすぎたかもなぁ。日付変更の時点で、周囲や地脈などから吸収したDPが増えるみたいだし、それまではどうしようもないなぁ。それに、いくらポイントもらえるかもわかんないし……。
「よし、ベッドに寝転がって不貞寝しよう。そうしよ~っと。果報は寝て待てっていうからな」
ベッドに寝転がると、あっというまに静かな寝息が聞こえてくる。
【 時刻:17時 】【 ダンジョン開通まで残り158時間 】
本人はまだ気づいてないみたいだが、無意識に幼児の肉体年齢にひっぱられてるのか、思考まで幼くなってきているみたいだ。
(うわぁ~どらごんだぁ~かっこいいー!)
どんな夢を見ているのか、夢の中でもファンタジー世界です。
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