第21話 進化ラッシュと赤ん坊
魔物が徘徊する、森の傍。
注意してよく見なければわからないような場所に……その洞窟の入り口は開いている。
そんな、ひっそりと隠された洞窟の中、まるで生まれ変わったかのように、種族が進化する者達がいる。
光に包まれた体から、徐々に輝きが落ち着き、外見の変化が落ち着いていく。
そこに現れたのは……。
裸のままの、かわいい美少女だ。
「わんっ。マスター……お待たせしました」
「うわぁ~、まるで別人みたい。体の調子はどう……?」
生まれ変わったばかりの相手に、マスターが尋ねる。
「今までより、さらに力が漲(ミナギ)っている感じがしますね……!」
生まれ変わり、裸同然で現れたのは、コボルト亜種の守護者、マシロだ。
思わず……小さめながらも膨らみのある胸元に、ついつい目がいってしまった。自分の体が幼児なおかげなのか、性的な興奮をする事はないけど、いきなりの女性の裸には、ドキドキしてしまう。
そして、どうしても気になって鑑定のスキルを使ってみる。
(魔眼、鑑定!)
【 種族 】ハイコボルト(亜種)
【 名前 】マシロ
【 レベル 】30
【 魔力 】☆582
【 加護 】☆念話 ☆人獣変化 ダンジョン守護者
【 スキル 】☆魔力操作6 ☆統率4 ☆剣術6 ☆体術5 ☆隠密2 ☆身体強化6 感知系:☆気配3 ☆魔力3 魔法系:☆土3☆無5
種族がコボルトから、『ハイコボルト』に。
進化直前に比べると、魔力が大幅に増えていて、外見もかなり変わったみたいだ。スキルも訓練と実戦のおかげで、かなり上昇している。
元々が獣人といった感じのシベリアンハスキーに似た可愛い系の美人さんで、今は亜種という特異種のおかげなのか、顔つきや体格も含めて、かなり人間に近い外見になってきている。
意識してスキルを使う事で、以前のような獣化も行えるようだ。
アリシアと勉強した情報によると、名付けによってダンジョンマスターの影響を受けやすくなり、さらに守護者は影響を大きく受けて、特異な変化をする事がある。
「魔物じゃなくて、亜人って言われても、信じちゃう位に人間に近いなぁ」
「わぅっ?自分ではわからないですが、そうなんでしょうか」
「これからは……ちゃんと服を着てもらうからな!さすがに、刺激が強すぎる」
もしかしたら、亜人の祖先は魔物が進化して、人間のようになった種族なのかもしれない。
「あれっ?マシロ、いつのまにか……念話じゃなくて、普通に話せてるよ!!」
「そういえば、進化したおかげなのでしょうか。いつのまにか、しゃべる事が出来るようになったみたいですね」
今までは、どちらかと言えば獣体形。これからは、人間に近い体形になったおかげだろうか。
柔軟体操のような事をしながら、体の調子を確かめているマシロ。それを眺めながら、マスターが思案する。
マシロの他にも、進化した者達がいる。
他に現在判明しているのは……。
スケルトン系がレベル10ごとに、特性にあった武器や魔法を使う様になる。
フォックス種はレベル10ごとに、尻尾の数が1本ずつ増え特殊能力が追加される。
スパイダーは早熟なのか、レベル20でジャイアントスパイダーになっている。
ウルフやホークなどはコボルトと同様に、レベル30で上位種族へと進化するようだ。
種族によって、それぞれ進化の仕方が違うのは、興味深いなぁ。
外で探索する事の多いウルフなどで、上位種族へと進化した個体が多いが、守護者のライガーはホワイトウルフとなり、体格が大きくなっている。他のウルフ達も、色によってブラックウルフなど、違いが出てきている。
「うわぁ~!マシロが可愛くなってる!!」
「……そうでしょうか?」
「この大妖精であるティナちゃんには、可愛さでは負けちゃうわね!」
進化したマシロと話していると、アリシアやティナ達も来て……どんどん騒がしくなっていく。
「とりあえずは、私の服を貸してあげる。可愛い服も用意しなきゃね!」
「服を着る必要は、あるんでしょうか?」
「必要に決まってるじゃない。淑女の嗜みってやつよ!」
コボルトじゃなく、亜人のようになったマシロには……やはり服が必要みたいだ。
女性の服については、後はアリシア達にまかせておけば大丈夫かなぁ~。それに、守護者であるアラクネの凜が、色々な服を作れるようになってきている。
マスターの好みで、最近は和服なども作っている。材料については……スパイダーがいつのまにか進化して、ジャイアントスパイダーとなった事で、なんとか糸の量産については補えている。
植物を管理するドライアドにも、麻に似た植物を育ててもらって、植物由来の生地を染めて使ったりもしている。他にもドライアド達には、果物や木の実、穀物などの食べ物を作ってもらって助かっている。
このダンジョンでしか得られない『特産品』という意味でも、アラクネの凜とドライアド達には、本当に大助かりだ。
「おぎゃぁ~おぎゃぁ~」
「あっ、騒がしくなったからルナが起きちゃったかな」
つい先日、森の中で拾った赤ん坊の名前は、ルナに決まった。
黒い髪の毛をしていて……先祖は、黒猫の血を引いているみたいだ。
赤ん坊で一番困ったのは、食事について。
ダンジョン内で飼育している、ヘラジカのような生き物から乳をしぼり、それに色々な物を混ぜたりして、離乳食のような食べやすい食事を試してみて、やっと食べてもらえるようになったのだ。
抱っこしても首は座っており、生後半年~1年いかない程度みたい?よくハイハイをして動き回ったり、やんちゃな赤ん坊だ。
「は~い。ルナごはんだよぉ~?」
「あぅ~。きゃっう!」
すぐに守護者などの主要メンバー達とも仲良くなり、交代交代で赤ん坊の世話をしている。
その中でも、なぜかライガーの尻尾に一番興味を抱いて、じゃれあった後……そのままライガーに寄り添いながら、お昼寝をしている姿をよく見かける。
「あとでライガーを連れてきてあげるからね~」
「きゃう~」
成り行きとはいえ、運良く拾った命。すくすくと成長して、楽しみを見つけてほしい。
それから、驚く事に……ダンジョン内では、他にも赤ん坊が産まれる予定だ。ダンジョンの眷属であるコボルト達の中に、オスとメスで番(つがい)ができ、子供ができたメスが数匹いるのだ。
「ルナや産まれて来る子供用に、おもちゃを作ってあげなきゃだなぁ~」
猫じゃらしのような物や、転がすと音が鳴る玉なんてどうかなぁ~。
赤ん坊の好きそうなおもちゃを考えながら……新しく何を作るか、色んな物を思い浮かべながら構想を練ってみる。
「とりあえずは、試しに色々と作ってみるかぁ~」
騒がしく話していた女性陣にルナの事をまかせて、さっそく鍛冶場へと向かう。
訓練と物作りの日々。
いつも通りの日常だ……。
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