3章:迷宮都市
第47話 帰ってきた執事。いざ人間の街へ
今日は、遠征をする為に、北の離島へと戦いに行っていたメンバーが、本拠地に集まってくる。
主要メンバーを集めて、これから行われるのは……さらなる遠征の為の会議だ。
会議の準備をしていると……慌てたアリシアと、いつも通りのティナが、こちらに駆け寄ってくる。
「レン君~。一大事よ!卵から、『精霊』が産まれたわ」
「大先輩である、このティナちゃんに比べれば、まだまだ赤ん坊ね!」
「そういえばいたなぁ。あの時の卵か~。どんな子なんだろう?」
駆け寄ってきたアリシアに紹介されたのは、アルラウネという種族の、可愛い『植物の精霊』さんだ。エルフと妖精のティナの魔力をたくさん注がれて、ちゃんと産まれる事が出来たみたいだ。
「ふふっ。可愛いでしょ~。植物を操作してくれて、役にも立ってくれるのよ」
「このティナちゃんが、もっと可愛いポーズを教え込んであげるわ!」
「初めまして。俺の名前はレンディだよ。よろしくね~」
アルラウネに自己紹介をしてみたが、どうやら喋る事は出来ないみたい。
アリシアの陰に隠れたがる、恥ずかしがりやさん。植物を、自由に操作出来るというのはすごい。色々な場面で、役に立ってくれそうな、可愛い精霊さんだなぁ。
◇
会議の部屋へと続々と集まってくるメンバー達。
その中でも、ひさびさに会う事が出来た人が……今まで『人間の街』へと調査に向かっていた、黒髪の執事の帰還だ。
その執事とはズバリ、守護者のセバスチャン。
「あっ。セバスチャン、おかえり!調査はどうだった?」
「レンディ様、ただいま帰りました。拠点となる家と商店を手に入れて、候補地も見つけて来ました」
まずは挨拶変わりとばかりに、手を両手で握って、ぶんぶんと上下に振って喜ぶ。
そして、もう一つ気になっていた『人間の街』。もう我慢出来ないといった様子で……セバスチャンに、どんな街だったのか聞いていく。
「では、これからの予定については、セバスチャンからの情報を元に、決めていくぞ」
「はい。それでは、説明いたします……」
人間の街や、周辺の地理などの情報が、主要メンバー達に共有されていく。
その目は好奇心からか……キラキラと輝き、これから向かう場所が、本当に楽しみで仕方ないといった様子で、事細かに質問をするマスター。
そして、重要となる今後の予定が決まる。
本拠地と北の離島については、他のメンバー達にまかせて、少人数の人型タイプの者達で、人間の街に向かう事が決まったのだ。
◇ 同行するメンバー ◇
主力:マスター、マシロ、セバスチャン、ドッペル8
その他:ウォーホース12、スライム1、マジカルキャット1、ホーク2
回復魔法が使えるスライムのスラリン。ホークは、スバルとスパローだ。
そして、時々マスターの寝ているベッドにも潜り込んでくる、マジカルキャットの黒猫ララも、今回は一緒だ。セバスと一緒に遠征に行っていたが、帰ってきてからは……我が物顔で、マスターのフードの中に居座り、丸まってお昼寝している。
アリシアも人間タイプだが、猫族達の事をまかせていて、島の開拓をしてもらう事になった。
他の主要メンバーや配下達には、いつでも人間の街に向かえる様に、道中の整備を進めて、さらに拠点内の設備を、強化してもらう予定だ。
本拠地であるダンジョンも、どんどんと拡張されており、今ではいつの間にか……15階層もある、巨大なダンジョンになりつつある。
地下1~5F 大迷宮
地下6~10F アンデッド・ヴァンパイアの支配地
地下11~14F 配下達の居住区や、様々な各種施設
地下15F 主要メンバー達の居住区、コアルームなど
異界領域1~3F 農園、繁殖場など
重要な施設などには、転移ポイントも設置され、移動するのも楽になった。
暇になったビッグモール達が、どんどんと迷宮を掘り進めていて、気が付けば大迷宮。マスターや主要メンバー達でさえも、マップ表示という道案内がなければ、迷子になる程の広さだ。
◇
そして、集まっていた主要メンバー達と別れ、いよいよ調査へと向かう。
え~っと。これとこれと……必要になりそうな物は、だいたい魔法で収納出来たかなぁ。忘れ物がないか、ちゃんと確認してから行かないとなぁ。
よーし。準備完了!
いざとなったら、工具箱もあるし、現地で作っちゃえばいいかな。
「よし。セバスチャン、道案内はまかせたぞ!」
「はい、レンディ様。おまかせください」
セバスチャンに手助けしてもらいながら、さっそくワイバーンへと乗り込む。
移動距離を短縮するために、途中までは空を飛んで移動する。そこから先は……人間達もよく使う道を使って、地上を旅をしていくのだ。
◇
足元には、箱型のカゴを抱えて、空を飛ぶワイバーン。
「空の旅も、気持ちよくて楽しいなぁ~」
「わぅ。体を乗り出しすぎて、落ちないでくださいね」
両手を大きく広げて、気持ちよさそうに、風を受け止めるマスター。
すぐ傍では、そっと服を握って、万が一にも落ちる事のないように、落ち着いて見守るマシロ。景色を眺めながら、はしゃいでいるマスターは、いつも通り楽しそうだ。
これから向かうのは、人間の街。
どんな場所なのかなぁと、色々な事を思い浮かべる……。
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