第24話 新たな街と綺麗なお城


 ワイバーンとの戦いが終わった翌日。


「よ~し。新しい街を作りに、拠点に向かうぞー!」


「わぅ。ついに、念願の街建設ですね」


 やる気満々といった感じのマスター。大量の建設資材を用意してあり、準備も万端だ。


 守護者達や、建設が得意なメンバーを集めて、予定地へと出発する。



 ◇



 最初に取り掛かるのは……海辺へと向かう中継地点ともいえる、森の中にある拠点。


 小高い丘のようになっており、森の中の木々が伐採され、ぽっかりと開いた空間。


 周辺には、大きな長方形に土堀が掘られており、土と石材で出来た『巨大な防壁』が聳(ソビ)え立っている。地下施設へと続く階段もあり、以前から土堀や防壁と地下施設だけは、前もって先に建設を開始していたのだ。


 地下には、下水を処理するための水回りを管理する通路が、網の目のように張り巡らされている。


 所々には危険な外敵が訪れた場合の、安全地帯として避難場所が建設してある。そして、水回りの終着点には……巨大な地底湖とも言える場所が作られており、スライムが水の浄化作業を手伝っている。



 ◇



「水回りは崩れないように、コンクリートで頑丈に作ってみたけど……水の流れる傾斜は、高低差を考えながらだと、予想以上に苦労するなぁ」


「土魔法が得意な者を集めても、かなり大変な作業ですね」


 水を入れた容器を使って、水平を図りながら……傾斜を考えるマスター。


 完成した地下施設を、改めて見回ってみると、まるで地下迷路のダンジョンみたいだ。


 これからはさらに、地上部分に石畳で塗装された道や、新たに住居などを作っていき、食べ物を育てるための場所の確保も、重要なポイントになってくる。


「自分で最初から街を作るのは、思ったより大変だぁ~」


「コボルト達も張り切ってますし、一緒に頑張りましょうね」


 土魔法が得意なコボルト達と、作り方を指導するように、魔力を練って作業するマスター。


 魔法による時間短縮やごり押し作業で、かなり建設は楽になったとはいえ、物資を運んだりする力仕事も多い。単純な力仕事は……重量級モンスターでもある、ゴーレムやバルムも大活躍だ。


 住居部分は、とりあえずは休めれば良いという事で、レンガのような素材を積み上げた、簡易住居が多い。


「さすがに、レンガで住居を作ると、殺風景だなぁ~。今度は木材でチャレンジしてみようかな」


「わぅ。今は、夜を安全に過ごせるだけでも、充分快適ですね」


 総勢30名に及ぶ、コボルトなどの配下達の活躍によって、急ピッチで街の基礎と簡易住居が作られていく。



 ◇



 街の中に確保された、ダンジョンマスターと守護者達の住居予定地。


「よ~し……この場所には、立派なお城を建てちゃうぞー!」


 この場所には……神聖ローマ帝国で有名な『デル・モンテ城』をアレンジしたお城を建設する予定だ。


 八角形の中庭の周りに、八つの八角形の塔。

 白い石材を中心に使い、見た目も綺麗に仕上げる。


 巨大で立派なだけではなく……防御にも優れた、実用的なお城だ。


 う~ん。どういう風にアレンジするか悩むなぁ。住居部分を増やして、中央の広場と屋上には……ワイバーン達も自由に行き来出来るようにして、広い庭にしちゃおうかな。



 ◇



 あっという間に時は過ぎ……街が、徐々に出来上がっていく。


「マスター、夢中になるのはわかりますが、食事はちゃんと食べてくださいね!」


「うん。もうちょっとしたらひと段落するから、みんなで食べようか」


 マシロに注意されて、食事の事を思い出すマスター。


 本拠地であるダンジョンからは、小型の象に似たバルムによって、材料や食料が次々と運ばれてきている。


 街の中央では、キャンプファイヤーをするように……大きな焚火が起こされて、みんなで食事をする用意がしてある。


「さぁ、食事が出来たわよ~。焼き肉とスープ、みんなの分がちゃんとあるから、慌てないようにね~」


 料理を担当しているのは、アリシアとセバスチャン。


 串焼きにされたお肉と、用意されたいくつもの大鍋には、大量の食材を手早く調理してスープを作っていく。


 塩コショウで味付けされたお肉。さらに、エルフ特性の調味料の入ったスープの味は絶品だ。


「うん、おいしぃ~」


「ふふっ、どうよレン君。お姉ちゃんは、料理も得意なのよ!」


 予想以上の美味しさに驚くマスター。エルフのアリシアは、みんなに食べてもらえるのが嬉しいのか、笑顔を振りまきながら上機嫌だ。


 エルフ特製の、『謎の調味料』……粉のような物を入れるだけで、何かのだしの風味も増えて、料理が美味しくなる。何が入っているのか聞いてみたいけど、聞くのも怖いなぁ~。


 おなかが満たされた所で、またお城の建築作業の再開だ。魔法が使えるとはいえ、巨大なお城を作るのは簡単にはいかない。


 完成するまでには、まだまだ日にちがかかりそうだ。


 光を反射しながら、白く輝くデルモンテ城……。完成予想図を想像しながら、地道に土魔法を使って、基礎となる石材をどんどん作っていく。




 まだまだ辺境地の開拓は、始まったばかり。

 これから街は、どんどんと発展していく……。


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