第23話 ワイバーンとの決戦②

【 ワイバーンの住処へと突入 】


 ダンジョンマスターの手信号の合図と同時に、網を抱えて飛び出して行く配下達。


「グルァー!!」


 何者かの侵入の気配に、翼を広げて威嚇し、立ち上がろうとするワイバーン。


 素早く突入したコボルト達とアラクネ達から、植物と丈夫な糸で作った『網』が投げられる。


「よし、そのまま上空へ逃がさないようにして、地上で戦うぞ!」


 咆哮を上げる2匹のワイバーン相手に、主力メンバーと配下達が、2チームに別れて対応する。



 ◇マスター、マシロ、セバスチャンを主力とする、Aチーム。

 ◇ライガー、凛、アリシア、ティナ、ククルを主力とする、Bチームだ。



 高めていた魔力を、地面へと手を付き発動させる。


「土の元素よ、拘束する鎖で敵を縛れ。……アースチェイン!!」


 網を投げられ動きにくそうにしている敵に、さらに土魔法で作った鎖で、ワイバーンの動きを抑える。


「行けマシロ、セバスチャン。まかせたぞ!」


「わんっ!」


「はっ、おまかせを」


 マスターの合図で、前衛としてマシロとセバスチャンが、ワイバーンへと立ち向かう。


 暴れるワイバーンに対して、主力2人を筆頭火力に、コボルト達がサポートし、冷静に対処しながら徐々に傷を与えていく。


 大きな体から振り回される尻尾と、手足の爪は、危険な攻撃だ。


「グルルァー!!」


 突然の痛みに咆哮を上げるワイバーン。


 マシロがワイバーンの攻撃をかわしながら近づき、脅威となるワイバーンの尻尾を切り捨てる。尻尾を切られ、体にに傷が増えていくワイバーン。長く感じた戦いが、ついに終わる時がくる。


「これで、止めです!」


 マシロがワイバーンの体を駆け上がり、弱点ともいえる首筋へと、愛刀の雪月花を振り切る。


 力のない咆哮を上げながら、地面へとゆっくり倒れるワイバーン。やっと、止めとなる攻撃を与える事が出来た……。


 ほっとするのも束の間、もう1体のワイバーンを見てみると、そちらの戦いも終わりそうだ。


 アリシアやティナ達による魔法攻撃、アラクネ達による巧みな魔糸による妨害、ライガー達の爪やコボルト達の薙刀によって、何度も傷を負わされ、どんどん弱っていっている。


 止めとなったのは……正面で、ライガーが注意を引き付けた瞬間。後方から絡み付けた糸を利用して舞い上がり、首筋近くへとたどり着いた凜が、そのまま力強く薙刀を一閃し、ついにワイバーンに止めを刺す事が出来た。


 ライガーと凜の、息の合った『コンビネーション』はさすがだ。


「我らの勝利だ!ガウゥーーー!」


「「ワウゥーーー!」」「「ガウゥーーー!」」


 地面へとワイバーンが倒れると、勝鬨のようにライガーの遠吠が響き、他のウルフやコボルト達にも伝染したかのように、勝鬨が響き渡る。


 草原の野生動物の白骨死体など、様々な物が散らばっている、ワイバーンの住処。


 巨大な2体の解体をすると共に、ポイントに還元出来そうな物なども集めて、持ち帰る準備をする。その中でも一番珍しかったのは、真新しいワイバーンの卵が、2つ見つかった事だ。飼育を担当するコボルト達にまかせて、どのように育つのか、観察してみるのもいいかもしれない。


 住処での後処理を終え、本拠地であるダンジョンへと向かう。


 天敵だったワイバーンという、上空の脅威は消えた。


 ついに……森の中と海岸に、街を建設する事が出来るようになったのだ。


 海辺では豊富な海産物が手に入り、海の向こう側にある島々へ渡る為の、船作りも始める事が出来る。森の中では、ドライアド達に協力してもらいながら、さらなる食料の生産と、生活を豊かにするための街を作る予定もある。


「やる事が、いっぱいだぁ~」


「わぅ。それでもマスターは嬉しそうですね」


 自分自身で初めての街づくり。苦労する事は多いけど、楽しみもいっぱいだ。


「う~ん、街の大きさを決めて壁で囲ったら、まずは水回りと下水、区画整理も必要だし、地下施設も考えて作らなきゃなぁ~」


 あれこれと独り言を呟きながら、考え事をまとめていく……。





 異世界に転生してきて、やっと70日。


 これから本格的にこの辺境の地を開拓し、さらには人族と交流して、情報を得ながら……ダンジョンを設置するという計画もある。


 振り返ってみると、あっという間の日々。


 でもまだまだ……。

 ダンジョンマスターとしては、やっとこれからといったスタート地点だ。


「よ~し。さっそく、ダンジョンに帰ったら……街作りの準備をしちゃうぞー!」


「わんっ。マシロもお手伝いしますね!」


 楽しみで仕方ないといった様子の、マスターとマシロ。


 いったい、どんな街が出来上がっていくのか……楽しみである。

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