第41話 伝説の種族
ソラや仲間達と、ダンジョン攻略成功を喜び合った後。
まずは、傷ついた仲間の傷を治療する――
それから、調査で亡くなった仲間を、遺品と共に丁重に弔ってから、洞窟の入り口にある防御陣地を強化して、魔物が勝手にダンジョンに入れないようにした。
そして、そろそろ帰ろうかと、出発の準備をしている時に――
上空から響く鳴き声と共に、それは突然やってきた。
「クュルックゥーー!」
「……なんだ?」
「にゃにゃ、あれは島のヌシにゃ!!」
上空からやってくる、只ならぬ気配。みんなが咄嗟に武器を手に構えて、警戒して目の色を変える。
「静まれ!! 我は、離島を治めるグリフォン。話し合いに来た」
「……俺がこの者達の、マスターだ」
一触即発の雰囲気にも関わらず、悠然と地面に降りたち、念話で話しかけてくるグリフォン。
感じる魔力や姿からしても、これまでの相手とは完全に別次元。先程のダンジョンマスターよりも、遥かに強そうな格上の気配。……只者じゃない相手だ。
(魔眼、鑑定!)
【 種族 】グリフォン
【 名前 】???
【 レベル 】???
【 魔力 】???
【 加護 】???
【 スキル 】???
鑑定を発動した直後、グリフォンが魔力を放出して魔眼を防ぐ。
まさかの『鑑定失敗』だ……。
「クゥルッ。そなたは魔眼持ちか。何の能力かは知らぬが、次からは敵対行動と見なすぞ!」
「今のは、能力鑑定の力だ。気を悪くしたなら申し訳ない」
まさか、魔眼にそんな防ぎ方があるなんて驚いた。
「魔眼の能力者には、過去にも会った事がある。使えば魔力の気配で、すぐに察知出来るぞ」
「なるほど。自分以外には、魔眼の能力者には会った事がなかった。気をつける事にする」
このグリフォンは、かなりの魔力コントロールのレベルと、魔力察知能力がありそうだ。
以前にも魔眼能力を持った相手と、何かあったのだろうか……?初対面でいきなり使われても、それにすぐさま反応して対処できるというのは、並大抵じゃない。
話し合いに来たという事だし、どういう事なのかを聞いてみるしかないかな。
「……さっそくだが、話し合いというのは、どういう事なんだ?」
「クゥルッ。条件次第では、そちらに味方をする。……説明しよう」
主要メンバーと共に、グリフォンから詳しく話しを聞いてみる。
離島にはヒッポグリフも居るが、他にも災いを避けてきた、共に暮らす人間が居るみたいだ――
お互いに争い合えば、大きな被害が出る。そこで、無駄な争いを避けるために、話し合いに来たとの事。
以前いたダンジョンマスターとは話が通じずに、好戦的な相手だったため……離島で、距離を置いて暮らす事にしていたようだ。
ヒッポグリフについては、成り行きでボスに収まっただけという事で、特別に思う所はないが、人間の子供の安全だけは第一に……というのを、強く主力していた。以前に助けた時に、そういう約束をしたようだ。
魔物と共に暮らす人間の子供……。
なぜか気になってしまう。同じような境遇だからだろうか?
「この島に居るのは、俺達だけじゃない。猫族とも話し合うから、少し時間がほしい」
「クゥルッ。いいだろう」
「にゃにゃ、長老にまかせたにゃ!」
エルメテオが、どうしていいかわからず……長老に全てをまかせる。
猫族達の長老、ラシルドにも話しを聞いてみる……。今までグリフォン相手には、戦いになっても、死者が出た事は無かったという話しだ。あの雰囲気と力を見る限り、手加減してくれていたのだろうか?特にグリフォン相手に悪感情を持っているわけではないという事。
話し合った結果、グリフォンと『同盟』する事に納得してもらう事が出来た。
「話し合いが決まった……。俺達と猫族は、グリフォンのあなたが味方してくれるなら同盟を結びたい」
「クゥルッ。では同盟成立だな!」
まさかの、離島の『島のヌシ』との同盟。この展開は、さすがに予想していなかった……。
お互いに、すぐに仲良くなるのは難しいかもしれないが、話し合いがきちんと出来て、共存しあえる理性ある相手。野生のモンスターは、狂暴な相手が多かったせいで、つい……全てが敵だと無意識に思ってしまっていた。
でも、そういう相手だけじゃない。という事がわかって、正直に嬉しかった。
それからは、共存していくための話し合いが行われ、島にあるひょうたん形の『大きな湖』がある地域は、お互いに争いが起きないように、共同で水場として使う事とし、こちらは南東と南西を中心に治め、グリフォン側が北西にある離島を治める事になった。
「もう1体の島のヌシ、巨大なアーマーロックタートルとは、話し合いは出来るのかな?」
「やつは、縄張り意識が強く、話し合いにも無関心で狂暴だ……。戦うしか道はないだろう」
もう一匹いる島のヌシについて、何か情報がないか聞いてみる。
グリフォンが、以前に念話で話しかけた時は、問答無用で攻撃されたとの事。争わずに和解出来ればとも思ったが、そう簡単にはいかないようだ。
「そろそろ……住処に帰るとするぞ。我も、以前に守護者としてダンジョンマスターに仕えていた事がある。意外とあっさり、死ぬ時は死ぬものだぞ! 気をつけられよ」
「えぇっ!?」
別れの間際に、意味深な発言。聞き返す前に、グリフォンは住処へと帰っていった。
どうりで話し合いをしてみると……時々こちらの事情などが、なんとなくわかっているような雰囲気もあったし、念話が使えるのにも納得だ。いつかは、過去に何があったのか……教えてくれる事はあるのだろうか?ぜひ、聞いてみたい。
次の戦いは……巨大なアーマーロックタートル。
連戦の疲れもあるし、準備の時間も必要だ。これからの予定を考えてみる……。うん、やはりまずは休息だな!
「マシロ。少しの間は、休息日にするぞ!」
「わぅ。あせる必要はありませんからね」
共に戦った仲間達と、みんなの帰りを待っている者が居る、中央付近の防衛拠点へと向かう……。
◇ その頃の、とある執事 ◇
「レンディ様は、いつになったらこちらへ来るのでしょうか……?」
後は、マスターを待つのみという執事のセバスチャンが呟く。
人族の街に溶け込み、今では大人数ともなる仲間達と、ハンターや商売を兼業している。ダンジョン候補地となる場所も見つかり、順調に活動出来ている。
「セバスチャン~。そろそろ、職人の面接希望者が集まるわよ」
「わかりました。どんな人が来るか楽しみですね」
商人と思われる女性と、楽し気に話すセバスチャン。
あっという間に、大商人として成り上がり、共同で経営する女性にも信頼されているようだ……。
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