ちびっこダンジョンマスターに転生!~ もふもふ、人外仲間と開拓・国作り~

飛翔

1章 辺境開拓編

第1話 前世の記憶



 ◇ とある神社 ◇


 家の近くには、歴史が古く遊戯の神様として祭られている神社がある。


 神社の中では、小規模と言ってもいい広さ。鳥居を潜り石畳の道の先へ進むと、ひっそりと建てられた古びた木造作りの本殿。


 我が家はいつも年末になると、家族みんなでこの神社へとお参りする。


 しかし……今年は珍しく、一人きりで神社へとお参り。


 その日はいつもと違い――ふと、境内の雰囲気が気になってしまう。


 今まで感じた事のない雰囲気が気になり……本能的な何かに導かれて、一人きりで裏側にある森の中へと、誘われるように向かう。


 そこで運命の出会いとも言える、一人の不思議な少女と出会う。





 巫女衣装を着た少女が木の切り株に座り、足をぶらぶらさせている。


「やぁ、ひさしぶりなのじゃ」


「……?」


 いきなりの挨拶に混乱しつつも、少女の顔を見ながら、過去に出会った事があったかどうか、思い出すように思考する。


「……ひさしぶり?」


「むむっ。……覚えてないのじゃな?10年前にも会った事があるのじゃ」


 そう言われて思い出す……。7、8歳位の時にも会った、あの時の子かな?


 確か、あの時は……好奇心から境内を遊び歩き、迷い込んだ先の小さな池で出会った。他愛のない雑談をしながら、一緒に遊んだりした気がする……。


 思い出していく内にふと気づく。あの時のままの外見の少女。少し威張った感じで、神聖な雰囲気を漂わせる、不思議な少女。


 直感的に本能が理解してしまう。人とは違う何か――神秘的な存在。


「ふふふっ、気づいたようじゃな。わらわは『神様』なのじゃ!えっへん」


 得意げになって胸を張る、神秘的な少女を見ながら……『神様』という言葉に呆然とする。


 うちの家系では、先祖は神社やお寺さんなどに関係があったらしい。それでも今までは、お化けや神様などの……霊的な物を、まったく信じていなかった。しかし、現実として目の前に居る少女を見て、考えを改めるしかない。


 トリックとは思えない雰囲気。変わらない外見、魂に語り掛けられるような言葉。


「む~、ひさびさに会えたのに反応が薄いのじゃ!大好きです。愛してますの一言くらいあってもいいのじゃぞ?」


「……?いや、そんな事を言われても」


 ふと目が合うと、ウインクを飛ばしながら、こちらをからかってきた。神様が、こんな調子で大丈夫なのか?どう受け答えをしていいか、正直戸惑ってしまう。


「いきなりの再開で驚くのはしょうがないのじゃ。次に会った時は、ちゃんと心構えをしてくるのじゃぞ」


「はい。え~っと、神様にいきなり出会うと思わなくて……」


 次に。という事は、また会えるという事なのだろうか。


「今日は、わらわから……『重大なお知らせ』があるのじゃ!異世界でな、ちょっと困った事が起きたのじゃ。狂暴な魔物が世界に蔓延り、世界の調和が崩れておる。この世界で命が尽きた時、わらわの頼みを聞いてほしいのじゃ」


「えっ……?」


 狂暴な魔物退治が使命……?


「心配せずとも、今すぐという事ではない。それに、魔物退治以外は自由に生きてもらっていいのじゃ。安心するがよい」


 予想外な事を突然言われ、思わず呆然としてしまう。


「さて、顕現する事が出来る時間も、後わずか……。簡単に説明するとじゃな、ゲームのような剣と魔法のファンタジー世界、ダンジョンのある世界なのじゃ。おぬしにもピッタリであろう?小さい頃に話した事を覚えておるかの……?貸しひとつ。困った時は、今度は助けてくれるという『約束』なのじゃ!」


 一方的に色々な事を伝えられ、徐々に透明になるように、その姿は消えていく……。


「またいつか、会える日を楽しみにしているのじゃ」


「……はい」


 伝えられた言葉を思い返し、思案する……。





「異世界、ゲームのような世界に、ダンジョン……」


 夢か幻だったんじゃないかと思うような出来事。

 思わずほっぺたをつねってみても、夢のようには目は覚めず、痛みが走る。


 少し時間が経ち、落ち着いて考えると……楽しみな事もいっぱいある。


 異世界でダンジョン。


 今すぐに死ぬわけじゃないし、生まれ変わったらその時はその時。存分に楽しんでみよう。冷静になって前向きに考えれば、自然と来世にも楽しみが出来たと喜べる。


 他の人に相談をしても……。頭がおかしくなったか、幻覚でも見たんじゃないかと心配されるだろう。


 ……この事は、お墓の中まで秘密は抱えていこう。





「いつか剣と魔法の存在する、ゲームのような世界に行けるのかなぁ~」


 ゆっくりと考え事をしながら……境内の中にある、本殿の方向へと戻る。


 今日はお賽銭を少し奮発して、777円。


「神様との出会いに感謝を。今世も来世も楽しめますように」


 少女の姿を思い出しながら、今までにない位に真剣にお祈りする。


「それにしても巫女装束、可愛かったなぁ~」


 もし次にまた会えた時は、どんな言葉をかけようかと、思いを巡らす……。からかいまじりに言われた、あの大好きです。とか言ってみようかな?自然と心もあったかくなり、少女の事を思い出すだけで、不思議と笑顔になれる。


「はぁ~~。まさか一目惚れって事はないよなぁ。会うのは二度目だし、なんていうんだろう……?」


 神様と再会を果たした少年は、色々な事を考えながら、自宅のあるアパートへと向かう。



 ◇



 この地球での……最後の時。

 ゆっくりと、今までの人生を思い出す。


 名前は『神宮司 竜馬』


 幼少期の主な趣味は、野球やサッカーなどの体を動かす遊びだった。

 それが気が付けば、いつの間にか様々なゲームにハマっていた。それは偶然なのか、運命なのか。


 走馬燈のように浮かぶ、様々な記憶。


 そして、思い出す……。


 霧がかかったように詳しくは思い出せない、夢の中での出会いのような、不思議な感覚。


 むかし何度か出会った……神秘的な少女との会話。


「わらわが困った時は、助けてほしいのじゃ。貸しひとつじゃな!」


 変わった言葉使いで、巫女装束を着た、神秘的な少女との『約束』


 あの時の出会いは『運命』だったのか……?

 落ち込み悩んでいた時に出会い、人生の転機ともいえるきっかけをくれた少女……。


 ◇


 そして新たな世界……『異世界』でダンジョンマスターとして、生まれ変わる事になる。

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