第30話 戦力増強

 ケットシーと猫獣人達が移住してきて数日。


 街にも慣れて、落ち着いてきた頃……。ダンジョンマスターと眷属達に、新たな動きが見える。





 すでに何度目かとなる、恒例のイベント。


 いつも通りなら、洞窟の大広間で行われるはずが……。今回行われる場所は、洞窟近くの外にある、見渡しの良い空地。


 今までにない程の、大物が登場する予定だ。そう、それはモンスターの新たな召喚。


 種族名は『ワイバーン』。


 ドラゴンの成りそこない、下級竜など言われ方は様々だが……。この辺りでは、『空の王者』として君臨していた存在だ。


 さらに今回は、今までにない試みも行われる。


 召喚を開始する時に、相性の良い死体や骨を用意する事で、コストの軽減や基礎能力の高い個体が産まれる事がわかった。


 そこで、以前にワイバーンの居た山の頂上を探索していた時に見つかった、竜の白骨化した古い骨を用意したのだ。



 ◇



「ワイバーンは、少し前までお互いに敵同士だったけど、これからは仲間になる。みんなよろしくな」


「わぅ。いよいよ大物の召喚ですね」


「ガウッ。これで、また我らの戦力が増えますな」


 わくわくした様子で、ダンジョンマスターであるレンディが、集まった者達に声をかける。すぐ傍でそれに答えたのは、守護者達の筆頭格、マシロとライガーだ。


 これから召喚するワイバーンは、コスト8000ポイント。かなりの高コストを要求される。


 古い竜の骨を捧げる事で、今までにない展開が予想される。その結果は……どうなるかは、誰にもわからない。


 イメージは……頭が良く、勇ましく決断力に優れる……まさに、勇猛果敢。力強く自由に飛び回り、空の王者と呼ばれる存在。



「ダンジョンメニュー 守護者召喚!」


「きゅいっ」


 サポート召喚獣であるラピスが、ダンジョンコアの機能を使い、その体が輝き始める。


 ラピスが幻想的な雰囲気で、白骨化した竜の骨を中心に、巨大な魔法陣を描き出す。


 イメージを強く思い浮かべながら、その巨大な魔法陣へと、マスターがゆっくり魔力を流し込む。


 巨大な魔法陣の光が満ち、心臓が鼓動するように魔力が振動する。そしてついに……新たな守護者の出現だ。


 光が収まると……そこには、今まで感じた事の無い、魔力濃度と存在感を示す存在。空のような、綺麗な青色をした外見。その体格は……ワイバーンよりも遥かに小型で、首を傾げる姿が、どことなく幼さを感じさせる。


 大きさを比べるなら、マスターよりは大きいが、人間の大人と同じ程度だろうか。


「えっ……?」


「キュ?」


 思わぬ結果に、鑑定を使って確認をしてみる。


(魔眼、鑑定!)



 知識の継承:中央大陸一般常識1、地球一般常識1、地球一般教養2


【 種族 】レッサーブルードラゴン(亜種・幼生体)

【 名前 】

【 レベル 】1

【 魔力 】350

【 加護 】念話 魔力増大 原初魔法 竜の咆哮 ?????

【 スキル 】魔力操作2 体術1 感知系:気配1魔力2 魔法系:水1風2光1



「ますたぁ~?」


「う、うん……。綺麗な青い空と同じ色だから、お前の名前はソラだ。よろしくな!」


 種族にも驚いたけど、初めて鑑定でも読み取れないスキルまである。


 素材にした未知の竜の骨……本当に生前は、ただの竜だったのだろうか……?今となっては、わからないままだ。


「おまえには、これから強くなってもらって、みんなを守れるような存在になってもらうからな!」


「キュ。つよくなる。みんなまもる!」


 マスターの声に答える様子は、伝説のドラゴンとは思えないような、愛らしい仕草と鳴き声。他の守護者達とも自己紹介をし、すぐさま仲良くなっていく。


「これは運命ね!この世界を制するのは、ドラゴンを乗り回す、この大妖精であるティナちゃんよ!!」


「ちょっとティナ、ソラも困ってるでしょ!」


「キュ……?」


 ブルードラゴンであるソラの頭の上に乗り、威張り始めるティナ。騒がしいお調子者は、いつも通りである。





「それじゃ、他にも戦力になりそうな者達を、召喚していくぞ~!」


「わぅ。新しいモンスター、楽しみです」


 召喚リストを眺めながら、将来有望そうで……共存できそうなモンスターを選んで、順番に召喚していく。



【 召喚されたモンスター 】


 ◇ワイバーン

 空の王者として、以前は辺境地域の主となっていた存在。空を自由に飛び回る能力と、尻尾にある毒が特徴的。


 ◇ビッグタイガー

 大型の猫科肉食魔獣。ライオンに近い外見と体格をしていて、群れで生活をする。


 ◇シュトラウス

 ダチョウに似た騎乗できる草食魔獣。持久力などの騎乗性能は戦馬に劣るが、短距離スピードに優れ、短時間だが空を飛べる。



 さらに、余ったポイントを奮発して、ランダムガチャを試してみる。


 今回行うのは、Cランク11連と、Dランク11連ガチャだ。


 Cランク11連:50000ポイント消費

 Dランク11連:20000ポイント消費


 ☆表記は、レア召喚された場合の目印です。



【 Cランク11連 】


 ①スケルトンナイト、②☆何かの卵、③ファイアリザード、④ミスリルゴーレム、⓹マジックスライム、⑥ブラックウルフ、⑦ホワイトハーピー、⑧ブルーシャーク、⑨☆☆レッサーヴァンパイア、⑩ガーゴイル、⑪エント



【 Dランク11連 】

 ①アーマータートル、②マッドボア、③ホワイトホーク、④キラーマンティス、⓹☆クロノサウルス、⑥ホブゴブリン、⑦アラクネ、⑧マジカルキャット、⑨ドッペルゲンガー、⑩☆マジックドール、⑪ブラックホーク



 上位種がそのまま現れたり、今までに見た事のないモンスターなどが増えている。



【 モンスター説明、簡易版 】


 ◇スケルトンナイト

 白骨化した骨騎士。剣と盾を持っている。


 ◇☆何かの卵

 魔力紋を登録する事で、登録主の魔力で孵化したモンスターと契約できる。


 ◇ファイアリザード

 火魔法が得意なリザード。


 ◇ホワイトハーピー

 ハーピーの上位種で、白い毛皮を持った鳥型モンスター。人間のような顔立ちをしている。知能は低く人間の幼児並み。


 ◇ブルーシャーク

 シャークの上位種。青い外見をしたサメ。


 ◇☆☆レッサーヴァンパイア

 人間と同じ外見をしている吸血鬼。暗い場所を好む。血への欲求は1月にコップ1杯あれば充分だとか。


 ◇ガーゴイル

 空を飛ぶ事も出来る、石像タイプの悪魔ゴーレム。


 ◇エント

 樹木に宿った精人族。


 ◇アーマータートル

 硬い甲羅と外骨格を持つ亀。


 ◇キラーマンティス

 森での擬態が得意な、巨大なカマキリ。


 ◇☆クロノサウルス

 水陸両生類。海の恐竜。


 ◇☆マジックドール

 意思の宿った魔法人形。外見をカスタマイズする事が出来る。



 扱いに悩むモンスターも居るが、新種のモンスターもかなり増えた。


 水槽と共に現れた海洋生物や、突然のヴァンパイアという魔人が出てきたり、驚かされる事もあったけど、これからどのようにみんなが進化していくのか、楽しみが増えたなぁ。


 何かの卵については、欲しがっている者達の中で、ジャンケンをしてもらっている。何が産まれて来るのかわからない、与えた魔力によっても、産まれて来る存在が変わってきそうだ。





 新規に増えたモンスターが慣れた頃には、次なる遠征の予定がある。


 それは……。本拠地から南にいくと、草原エリアがある。


 そこには、たくさんの草食・肉食動物や、魔獣達がいる。今までは、ワイバーンがよく現れていて行けなかったが、これからは違う。


 新たに調査拠点をいくつか作り、本格的に調査を行う予定だ。行動範囲を広げていく為、人間達の集落や街に向かう道を作る為にも、調査は必要だ。





「新しいモンスター達の訓練がひと段落したら、次は遠征に向かうぞ」


「わぅ。前に言ってたように、支配領土を広げていくんですね」


 次なる予定に向けて、準備を進めるマスター。マシロと密かに相談している事がある。それはみんなが楽しく生活出来るように、新たに国を作る計画があるのだ。


 まずは草原エリア。さらにその次には離島エリアも待っている。


 新たに心強い者達も増え、かなりの勢力になってきた。これからは、支配領域を拡大していく時期。戦いの日々が続きそうだが……楽しみである。

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