第29話 獣人とケットシー

【 異世界転生 88日目 】


 2度目となる手紙が届く。


 セバスチャン達は順調に街へと到着し、新米ハンターとして活動を開始したようだ。さらに手紙には、気になる事が書いてあった。


 信頼できる女性の商人と仲良くなり、預けられた商品を元手に、新規拠点の為の費用を手に入れる事が出来るようになったとの事。新たな人材と、商品の追加要望も来ている。


 さすがはセバスチャン……さっそく女性を、口説き落としたのだろうか?





 森の中の街『フォレスタ』と、海辺の街『アクアパラダイス』


 2つの街の建設ラッシュが、やっと落ち着きだした頃……。

 海辺の拠点近くで、新たな発見が――





 最近では海での戦力を強化する為に、新たにマーメイドとマーマンを召喚した。守護者のセレネを筆頭にした、海を治める配下達が強化され、その数と力が増してきた。海の魔物を倒しながら、海上での索敵範囲を、どんどんと広げていっている。


 海には、ソードフィッシュ・シーシャーク・キングホエールなどの魔物がいる。


 危険な魔物の数が多く、海の安全を確保するのは大変だ。さらには、北側にある離島からは危険なヒッポグリフの姿も発見されており、島に近づくかどうかは様子をみている。


 そんな矢先……なんと、海を越えた先にある離島。そこに『亜人の集落』を発見したのだ。


 セレネ達を筆頭とする海の眷属達が狩りをしている時に、島の近くにある海上で、海の魔獣に襲われている所を助けた者がいる。助けたお礼として招かれた島の中には……驚く事に、猫の妖精ケットシーと、猫の獣人が暮らす、亜人の集落があったのだ。



 ◇



 セレネからの念話が届く。


「レン様、亜人達と話してみた所、敵対する意思は無く、こちらと友好的な関係を持ちたいとの事。どうしましょうか?」


「交渉はセレネにまかせたよ。こちらも敵対する意思はないし、友好的な関係がいいな」


 セレネから詳しい状況や、集落の事などを聞いてみる。


 ケットシーと猫の獣人達はその昔……故郷である北の大陸から、船に乗って移住してきて、ほとんどの者が離島に住み着いたらしい。


 そこからは……島の魔獣をたおしながら、海辺では漁師のように海の魚を捕り、暮らしてきたみたいだ。島の中には、ヒッポグリフやリザードなどといった危険な魔獣も多くいて、隠れるように……ひっそりと、集落を作って暮らしていたのだとか。


 集落の中には、ケットシーと猫の獣人がおよそ50名程。思ったよりも、小さな集落である。


 以前に拾った赤ん坊の猫獣人ルナ。彼らとは関係があるのだろうか……?



 ◇



 そして猫獣人達を発見してから数日後……。新たな展開が――


 交渉役として、猫獣人の集落で暮らしていたセレネから、こちらの街へと移住したい者が多数いるとの報告を受ける。


「移住の方法はどうしよう?船はまだ出来てないし、セイレーンが抱えて、空から一緒に来れるかなぁ~?」


「はい。一人ずつなら、なんとかなりそうです。海辺のお城に連れていきますね」


 マスターがセレネ相談し、空からこちらへ来てもらう事になった。


 セイレーンに抱えられて、運ばれてくる……ケットシーと猫獣人。その姿は、興奮しながら楽しそうにしていたり、慣れない空の旅に、落ち着かない様子をしていたりと様々だ。


 先に移住してきたのは8名。獣人とケットシーが4名ずつだ。


「初めまして。この街を作っているレンディだ。よろしくな」


「ケットシー族の代表、エルメテオにゃ。よろしくにゃ」


「セリアン族、猫の獣人、ラナにゃん」


 猫獣人達と、自己紹介を交わすマスター。話してみるとすぐに仲良くなれて、自然と会話が楽しくなってくる。語尾が猫らしく、にゃんと喋っているのが、本当に可愛らしい。


 少し気になったのは、ひっそりと暮らしているせいなのか、衣服がやぶれたままの箇所も多く、魔物の毛皮や、植物か何かの繊維を使った、質素で実用性重視な衣服がほとんどだ。


 ケットシーは猫の妖精族とも言われている。小柄な体格で、カウボーイハットを被っているのが特徴的だ。それと、セリアン族というのは獣人の種族で、初めて見る本物の猫の獣人は……まさに、ファンタジーといった感じで、猫耳と尻尾が特徴的な、アニメで出て来るような、可愛い猫の獣人だった。


 まずは、どんな相手なのか気になって、鑑定を使って確認してみる。



 (魔眼、鑑定!)


【 種族 】ハイケットシー

【 名前 】エルメテオ

【 レベル 】35

【 魔力 】682

【 加護 】妖精魔法 

【 スキル 】魔力操作6 魔力回復4 体術4 隠密4 感知系:気配4魔力4 魔法系:火6水3風5光3無5


【 種族 】セリアン

【 名前 】ラナ

【 レベル 】21

【 魔力 】288

【 加護 】感知増幅 

【 スキル 】魔力操作3 魔力回復1 体術5 隠密4 感知系:気配5魔力3 魔法系:水3風3無4



 可愛らしい外見とは違い、かなりの戦闘能力。


 ケットシーのエルメテオは、能力だけみると守護者級に匹敵する……。さすが代表になるだけあるなぁ。


 守護者などの主要メンバー達とも挨拶を交わし、正式に移住を受け入れる事にする。





「まだまだ作りかけの街だけど、移住してくるなら、家もちゃんと用意するよ」


「にゃ。こんな立派な街に住めるなんて、夢みたいだにゃ!」


 さっそく街の施設を案内していくマスター。


 猫族達が街の中でも、特に気に入ってくれたのは、川から流れてくる水を引いた湖だ。湖では釣りも出来るようになっていて、珍しい川の魚に、興味津々といった様子だった。


「にゃにゃ、こんな安全な水場で釣りが出来るなんて、すごい所にゃ!!」


 ケットシーの代表エルメテオが、水場ではしゃぎまわっている。


 北にある離島では、水場にも魔獣が居る。釣りをするにも命がけで、危険が多かったらしい。騒がしく会話しながら、興味のある物を見つけては、うろうろしたりするケットシーと猫獣人達。


 一通りの場所を案内し、後は何かあった時の為に、ドッペルゲンガーの中から補佐役にメイドを二人残して、後の事をまかせる。


 執事であるセバスチャンの指導のおかげで、ドッペルゲンガーの中にも、多数の執事見習いとメイド見習いが出来て、様々な雑用仕事をしてくれている。人語もしゃべれて、連絡役としても最適だ。





「なんだか、案内するだけで、一気に疲れちゃったなぁ~」


「わぅ。騒がしかったけど、楽しかったですね。友好的な相手でよかったです」


 疲れた表情で、少し眠たげなマスター。マシロの手を握って寄りかかっている。


 新しい仲間が増えて嬉しいけど、気になる点がある。戦闘能力を見ても……かなり強いメンバーがいるにも関わらず、離島の魔獣には苦戦している。これから先を見据えて、離島の安全確保もしたいけど、さらなる戦力強化が必要そうだ。


 ダンジョンメニューの召喚リストを思い出しながら、ゆっくりと思案する……。




 やはり、戦力を高めるならアレしかないかなぁ~。


 新たな、戦の予感。

 今後の事を考えながら……眠気と戦いつつも、戦力を増強する計画を立てていくのだった……。


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