第45話 巨大な島のヌシ②
中継地点として作った、物資を補給した拠点を出発する。
これから向かう先には……『巨大な敵』が居る。
それは、この魔物の島のヌシ『ギガントタートル』だ。
◇主力メンバー達
Aチーム:マスター、マシロ、ライガー、凛、セレネ、ビッグタイガー2。
Bチーム:アリシア、ティナ、ククル、エルメテオ、ラシルド、ミラ、ビッグタイガー2。
Cチーム:ウルフ2、コボルト5、アラクネ7。
調査隊:レフティ、ウルフ3、ホーク2、アラクネ4、セイレーン3。
その他にも、多くの配下達がサポート役として、巨大な島のヌシ討伐戦に参加している。
道中の敵を倒しながら……順調に、巨大な島のヌシまでの、道を進んでいく。
そしてついに、マスター率いる大部隊が、岩がゴロゴロと転がっている『岩石地帯』に到着する。
「ガウッ。マスター、もう少しで敵が見えてきますぞ」
「うん。いよいよ島のヌシとの戦いだな」
ライガーが、注意をマスターに呼びかける。
マスターはうなずきながら……ゆっくりと深呼吸をして、冷静に振る舞おうとしている。そして、その手を握ったり開いたりして、少しでも緊張を解そうとしているようだ。
そしてついに、目視でぎりぎり……目標を確認できる距離に、精鋭部隊が到着する。
そっと物陰から遠くを確認してみると、以前に調査しにきた時と同じ場所に、堂々と巨大な島のヌシが居座っている。やはりここが……巨大な島のヌシの『住処』なんだろうか。
改めて周囲を見回して、地形の再確認をする。
その場所は、山と山に挟まれた場所で……少し窪んだ盆地のようになっており、巨大な島のヌシに踏み固められたのか、草木も見当たらない、茶色の大地になっている。所々には大岩があって、地面は平らで硬そうだ。
「周囲の弱い敵は、サポート組のメンバーにまかせる。主力は、ヌシとやりあうぞ!」
「わぅ。まず最初は、様子見の攻撃からですね」
配下達へと、慣れた様子で指示を出していくマスター。
今までに、多くの敵と戦ってきた経験が、配下だけではなく、マスターも大きく成長させている。
それは……レベルといった数値だけでは測れない、仲間同士の絆であったり、自身の心の強さだ。
指示の確認も終わり、いよいよ戦が始まる――
「セレネ、ソラ、凛。上空部隊と遠距離部隊の事は、まかせたからな!」
「はいレン様。上空部隊はおまかせください」
「キュ。ソラ、がんばる!」
「アラクネ部隊は、まかせてくださいでありんす」
マスターへの返答と共に、そっと静かに行動を開始する、主力メンバー達。
作戦の内容は……上空部隊からは、幻覚の粉・痺れ粉・毒の液体などの状態異常の薬品を、導火線付きの袋に入れて、上空から順番に落としていく。
気づかれにくいように、巨大な島のヌシの上空から落として、気づかれないように狙う作戦だ。
そして、状態異常の薬が投下された後に、アラクネ達やマスターを筆頭にした、遠距離が得意な精鋭部隊で、巨大な島のヌシに火力を集中して、一気に攻撃を仕掛けるのだ。
正直に言えば、敵一匹を相手にするには、この作戦はやりすぎ感はある。だが、それ程に巨大な島のヌシの体格は大きく、生命力も高そうだったのだ。
セレネやソラ達が飛び立ち、静かに作戦開始を待つ。
そしてついに、巨大な島のヌシの真上。上空から……次々と、薬入りの袋が投下され始める。
「やっと始まったな。上手く効いてくれればいいけど……」
「わぅ。通常の個体なら効くみたいですが、あの巨体ですからね」
空から落ちてくる袋を、ジッと見つめるマスター。
上空から投下された袋の導火線が燃えて、その中身が敵へと降り注ぐ。巨大な島のヌシが異変に気付いて、何が起こっているのか警戒しながらも、キョロキョロと見回す感じで、首を伸ばして確認をする。
感知できない上空から、突然薬品が降ってくるなんて、誰も予想しないだろう。
「グルォォオーー!」
妙な薬品を振り払おうと、暴れ始める巨大な島のヌシ。
巨体を駒の様に回転させたかと思うと、土埃が巻き起こるほどの風圧が生み出される。その風圧によって、薬が周囲に飛び散り、まき散らされる。気になる薬品の効果は、あまり効かなかったみたいだ。
「よし、遠距離部隊もいくぞ。狙いは、頭と前足だ!」
「はい、レン様。」
指示をしながらも、高めた魔力を練り上げ、愛用の和弓で標的を狙うマスター。
「雷を纏いし、俊速の弓矢よ……くらえっ。ライトニング……ファイナルアロー!!」
限界ぎりぎりまで雷の魔力を集め、解き放たれる弓矢。マスターの最大火力を誇る『魔道弓』だ。
雷光を纏って進む矢が……巨体から顔を出していた、敵の首元へと狙い通りに命中し、肉をえぐるように突き刺さる。……効果は絶大だ!
マスターと同時に攻撃を開始した、アラクネ達の攻撃も、次々と巨大な島のヌシへと放たれる。
クモ型の下半身で、しっかりと体を支えながら……大きな和弓を、限界まで引き絞って放たれる矢は、凄まじい威力だ。
他にも、主力メンバーや精鋭達の、遠距離からの強力な攻撃魔法が、的確に敵を狙って雨のように降り注ぎ、その巨体にダメージを与える。
「グルォォオオーー!」
遠距離から攻撃してくる者を察知し、弓矢と魔法攻撃による激しい痛みによって、怒りをあらわにする、巨大な島のヌシ。
「グルルォガォオーー!!」
今度は反撃とばかりに、巨大な島のヌシが……魔法によって、周囲にあった岩などを操作し、大小様々な岩が空を飛び、遠距離に居るマスター達を襲う。
「何かしてくるぞ。……岩が飛んでくる。全員、回避!!」
「わんっ。回避、回避!!」
飛んでくる無数の岩を、遠距離攻撃と魔法で、必死に迎撃するマスター達。
それでも、迎撃しきれなくて……小さくなった岩などが、こちらへと降り注いでくる。安全な場所へと避難しきれない者は、地面に杭を打ち込むタイプの、タワーシールドの後ろ側に隠れている。さらにマシロなどは、日本刀で岩を切り裂いて、味方を守って居るようだ。
そして、なんとか無事に、敵の攻撃を防いで、岩を避けきる事が出来た。
防御に徹していると――上空から、かすかに『鳴き声』が聞こえてくる。
「クュルックゥーー!」
「キュ……!?」
あれは以前に聞いた事のある、あの『鳴き声』だ。
視線を上げて上空を見てみると、通りすがりにソラに一言、何かを喋った感じで……そのまま一気に、巨大な島のヌシへと、急降下してくる存在がいる。
あれは、前に同盟を組んだ相手。『グリフォン』だ。
巨大な島のヌシが、マスター達へと攻撃している隙をついて、上空から奇襲をしかけるつもりのようだ。慌ててソラやセレネ達も、一緒に急降下してくる。
「クュルックゥウウーー!!」
勢いよく降下してくる速度が、凄まじい速さだ。そのままの勢いで、巨大な島のヌシへと襲い掛かり……地面に亀裂を残す威力で、首筋へと爪撃を繰り出す。
「グルォォオー」
首元から大量の血が噴き出す、巨大な島のヌシ。グリフォンの強烈な一撃が、致命傷となったのか……その咆哮は、非常に弱々しい声だ。
「ギャォーン!」
「これで、止めです!」
そしてそのまま……グリフォンと共に上空から降下してきた、ソラやセレネ達の追撃が、巨大な島のヌシへと襲い掛かる。
首筋の傷口を、更にえぐるようなソラの爪撃。そして、セレネが持つ細長い針のようなスピアが、急所の首筋へ深々と突き刺さる。
その急所への攻撃が、弱った巨大な島のヌシへの止めとなり……ついにその命が尽き、地面に倒れこむようにして、島のヌシが息を引き取る。
「さすがに生命力の高い巨体相手で、戦うのは大変だったなぁ~」
「わぅ。それでも、上手く倒す事が出来ましたね」
大きな被害もなく……無事に倒せた事に、ほっと一安心。といった様子のマスター。
「クゥルッ。恩を売りに来たつもりだったが、我の手助けは必要なかったようだな」
「そんな事ないよ。ありがとう、グリフォン。手助けのおかげで、大きな被害も出なくて、本当に助かったよ」
絶妙なタイミングで現れたグリフォンに、お礼を言うマスター。
何故か、ヒーローは遅れてやってくる。なんていう話しもあったなぁ……などと、変な事を思い出しながらも、援軍に来てくれたグリフォンに、心から感謝する。
「クゥルッ。そういえば……忘れておったわ。我が保護している人間が、そなたに会ってみたいそうだ。また今度来た時にでも、一緒に連れてこよう」
「前に言ってた、人間の子供かな?それは、どんな子なのか楽しみだなぁ~」
以前に話を聞いてから、気になっていた人間の子供。相手から会ってみたいと言われて、マスターの目が、キラキラと好奇心で輝き、非常に嬉しそうだ。
「それにしても、この巨大な島のヌシ……後処理が大変だなぁ」
「わぅ。少しずつ、運んでいくしかなさそうですね」
巨大な島のヌシを見上げながら、この後の事を考えると、頭を抱えたくなるマスター。
この巨体から取れる素材は、非常に量が多くて、腐りやすい肉などは、真っ先に魔法で凍らせながら解体していくなど、非常に大変な作業となる。そして、その質量と素材としての価値は、予想も出来ない程に価値がありそうだ。
「ふぁ~。早く作業を終わらせて、お風呂に入りたぁぁーい!」
「わぅ。解体作業で、血の匂いだらけですね」
「にゃにゃ、一緒に水浴びしながら、お魚とるにゃー!」
長時間の解体に疲れつつも、必死に作業を続けるマスター達。
大人数で、少しずつ解体しては移動していく。それでも、巨大な相手に数日間はかかる事になる……。
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