第15話 新たな守護者が仲間に
【 異世界転生 31日目 】
ワイバーン討伐の翌日。
未だ生まれてたての弱小ダンジョン。
そのダンジョンの強化をさらに進める為の……第1歩が、今始まろうとしている。
大広間では、今か今かという多くの視線が、ダンジョンマスターに集まる。
これから行うのは、新たな『守護者の召喚』
イメージとしては、計画能力が高く、他の人を使いこなすのが上手い、礼儀作法に優れていて、能力はあらゆる場面でそつなくこなせるようにバランス型の万能タイプ。
前世のアニメと、実際に見た事のあるイケメン執事を併せたような感覚だ。
「ダンジョンメニュー 守護者召喚!」
「きゅいっ」
サポート召喚獣であるラピスが、ダンジョンコアの機能を使い輝き始める。
ラピスが幻想的な雰囲気で、地面に魔法陣を描き出す。
イメージを強く思い浮かべながら、その魔法陣へとゆっくり魔力を流し込む。
魔法陣の光が満ち、ついに新たな守護者が出現する。
光が収まると……そこには、男性用の礼服であるタキシードを着こなす、黒髪の人物が現れる。
「初めましてマスター。新たに与えていただいた、力と命をもって、全力でお仕えしたく思います」
優雅に片膝をつき、胸に手を当てながら、礼儀正しい仕草で一礼する姿は……イメージした以上な感じがして、思わず驚いた。
まさに、どこかの皇族にでも仕えてそうな執事だ。
「おまえの名前は、セバスチャンだ。おまえには……重要な役目を、色々とやってもらう事になる。頼むぞ!」
「はい。何なりとお申し付けください」
マスターの名づけと共に、周りで見守っていた配下達も、歓声を上げながら……新たな守護者の誕生に、みんなで喜ぶ。
初期設定でイメージした外見は、目鼻立ちがハッキリした、地球に居そうな30代位の黒髪男性といった姿だが、彼も立派なモンスターだ。
種族の名前は『ドッペルゲンガー』
ユニークスキルを使って、触った対象の形状を記憶して、外見をそっくり真似する事が出来る。あくまで外見だけで、対象人物の記憶はないので、そこは注意が必要だ。
新たに出来るようになった知識の継承も使って、初期能力の高い守護者となっている。
知識の継承:中央大陸一般常識1、人型種共通言語1、地球一般常識1、地球一般教養2
(地球知識は、1が小学校低学年、2が高学年レベル)
【 種族 】ドッペルゲンガー(亜種)
【 名前 】セバスチャン
【 レベル 】1
【 魔力 】128
【 加護 】念話 形状記憶・変化 ダンジョン守護者
【 スキル 】魔力操作4 統率1 体術1 隠密1 身体強化1 感知系:気配1 魔法系:火1水1無1
ダンジョンコアと一心同体とはいえ、地球の知識を継承できるのには驚いた。
前世の事をわかりあえる相手というのは、本当に貴重だ。
小学生レベルとはいえ、この世界にはない知識を持つというのは大きなメリットになりえる。その知識をどう活かしていくかは考えないといけないけど、今後の展開に向けて何かを決めていく時、選べる選択肢は大幅に広がりそうだ。
「セバスチャンには、執事として様々な事を行ってもらうが、さらに重要なのは……人族の町に行って、諜報活動もしてもらう事になる。一ヶ月の準備期間で、人族の町に旅立つ用意をしてもらうぞ」
「はい。お任せください」
マスターからセバスチャンに、重要な役目が与えられる。
エルフのアリシアに聞いた情報から、人族の村が徒歩3日程の距離にあるのがわかっている。魔獣の多い辺境で、3日の距離は遠いが……訓練して、戦えるようになってもらうしかないかな。
「同じ守護者の仲間に聞いたり、わからない事は、どんどんマスターである俺にも聞いてくれ。後は……配下として、同じ種族のドッペルゲンガーとウォーホースを、直属の配下として4体ずつ付けるぞ」
「ありがとうございます」
通常のドッペルゲンガーは戦闘能力が低く、外見を真似する能力があっても、育つまではかなりきびしそうだ。ウォーホースは、人族の元でも実力のあるハンターや商人も使う人が居るらしく、赤い目をした立派な馬だ。戦闘になっても、怖がらず勇猛だ。
ハンターというのは、よくある小説に出てくるような冒険者のようなもので、魔獣を専門にたおす人が居たり、商人などの護衛をしたり、様々な雑用をしたりと多種多様の仕事をこなす職業だ。
SABCDEFGのランクがあり、大きな街や都市にはハンターギルドがある。
セバスチャンには、まずは村へと向かってもらい、そこからさらに街へと行ってハンターになってもらう予定だ。重要なのは……人族の情報を集めてもらう事。さらに、人族の街で活動する為の、拠点の確保だ。
戦力的な不安があるため、仲間の中から相性の良い者を選んで、魔獣のテイマーとして活用してもらう。
「少しの間は、ワイバーンへのおとり罠作戦と、戦力強化だなぁ~。よし、次の守護者召喚をするぞ!」
ダンジョンコアがランクアップしてから、新たに召喚出来るモンスターも増えた。種類が大幅に増えた中でも、どうしても気になっていた種族を召喚する。
イメージは、手先が器用で糸をうまく使いこなし、『衣服』を作るのが上手い。下半身がクモのようになっていて、上半身が人族の女性のような存在だ。
戦闘では、待ち構えるクモ糸の罠と、器用さを活かした、遠距離攻撃の弓が得意なイメージ。
「ダンジョンメニュー 守護者召喚!」
「きゅいっ」
サポート召喚獣であるラピスが、ダンジョンコアの機能を使い輝き始める。
ラピスが幻想的な雰囲気で、地面に魔法陣を描き出す。
イメージを強く思い浮かべながら、その魔法陣へとゆっくり魔力を流し込む。
魔法陣の光が満ち、ついに新たな守護者が出現する……。
光が収まると、イメージ通りに上半身が女性型のモンスターが現れる。
奇麗な黒髪に、複眼になったいる少し特徴のある目をしている。糸で作った簡易な服を着ていて、胸の形がハッキリとしており……気が付けば、胸元に目がいってしまった程だ。
「おまえの名前は、凛。りりしく女性らしい様子からとってみた。どうかな?」
「はい。嬉しく思います」
2度目となるが、共に見守っていた配下達に歓迎され、みんなで新たな守護者の誕生を喜ぶ。
照れたように、ニコっと笑った表情が、非常に可愛らしい。
知識の継承:中央大陸一般常識1、人型種共通言語1、地球一般常識1
【 種族 】アラクネ(亜種)
【 名前 】凛
【 レベル 】1
【 魔力 】92
【 加護 】念話 魔糸操作 ダンジョン守護者
【 スキル 】魔力操作3 統率1 隠密1 感知系:気配2魔力1 魔法系:水1無2
人型のおかげか、念話無しでもちゃんとしゃべる事が出来て安心した。物腰が柔らかく落ち着いた感じで、今までの配下の中には居ないタイプの女性だ。
「凛には、人型種族の者や希望する配下達に、『衣服』を作ってあげてほしい。見本となる服は少ないが、試しに作ってみてくれ」
「わかりました。喜んでもらえるように頑張りますね」
服を作ってもらえると聞いて、さっそくアリシアと妖精のティナが凜に突撃していく。
重要な衣食住のうち、服は初期にもらった自分用のシャツとズボンしかカタログにも載ってなくて、困っていた所だ……。
ドッペルゲンガーも増えて、新たな服の需要もこれから増えていきそうだけど、これでなんとかなるかなぁ。
女性陣が集まってわいわいと話をしている中、余ったポイントを使って、さらに配下を増やしていく。
【 新たに召喚したモンスター 】
ドッペルゲンガー8、ウォーホース12、アラクネ2、ドライアド1、コボルト4、ウルフ2、ホーク2
今回は、大量のポイントを使って戦力を増強した。
ワイバーン戦と、今後の人族対策へ向けた早めの投資もあって、ポイントを使い切る勢いだ。
洞窟の中に居れば安全とはいえ、早めに外の世界で自由に活動していきたい。急がば回れ……なんていう言葉もあるように、今は地道に自力の強化も重要だ。
今日もまた一歩、夢に向かって進めた実感もある。
慎重すぎる位が、ちょうど良いかなぁ~。なんといっても……やり直しなんて効かない、リアルな現実。
「まだまだやりたい事、いっぱいだぁ~!!」
さっそく次の予定に向けて、うずく体を動かしに飛び出して行く……。
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