我が妹 小日向春瑚と……
「周吾郎さん、事件です!」
「ヤブカラボウニ・コヒナタサン」
「なんでカタコトなんですか?」
鶴麗贋作事件――そう名付けた日曜日から数日が過ぎた頃、春瑚は一枚の封筒を持ってきた。
「実は、手紙が届いたんです」
「手紙? 一体誰から」
「差出人はありませんが、封筒の裏にはこう書かれてありました」
封筒を受け取る。エアメール風の封筒に記されている宛先は、こうだ。
『我が妹 小日向春瑚と 少年周吾郎へ』
「……まさか」
封入されていた便箋を開くと、前のものとは違って、簡素な文章が書かれているのみだった。
『H1R21K15W15Y15R15S9K21
26秒数える間には、きっと答えがわかるはずだよ』
「倫也さんからの、暗号……」
「だと思います。でも、解法がどうにも思いつかず……周吾郎さんはどうでしょう?」
ふむ、と周吾郎は唸った。
今回のヒントは簡単だ。幸い、26という数字は該当するものに限りがある。表情に出ないようこっそり推理しながら、周吾郎は暗号を読み進めて――
「……やめておこう」
ふと、顔を伏せた。春瑚が覗き込む。
「周吾郎さん、どうかされました? 顔が赤いですが……風邪でも?」
「なんでもないよ。それより、早く次の授業の準備をしなくては」
「ええっ、もしかして暗号が解けたんですか!」
「なぜそうなる⁉︎」
「教えてください!」
「大丈夫! 謎は! 解けるようにできている! さらば!」
「あっ! ちょっ、ちょっと待ってください、周吾郎さーん……」
ほうかご探偵奇譚① -ふたりきりの約束- 【旧】鹿田甘太郎 @Chameleon
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