本作は幽霊が出る怪談というより、人間が怖い「ヒトコワ」のお話。「幽霊がいることよりすれ違う人や電車に乗り合わせた人、同僚など身近な人の方がよっぽど怖い」と感じている人は、本作が刺さるでしょう。誰しもが心の奥底に抱えている、でも出さないようにしているドロリとした負の感情。それが表に出たときどうなるのか…本作はある意味、いつか私たちに降りかかるかもしれないリスクの可能性とも言い換えられるかもしれません。
誰だって何かしら心に翳りを持っている。 ふとした拍子に、その薄暗いものは人から人へ巡っていく。 仮にそういった人を見かけても、気安く接してはいけない。 きっとすぐに思うことだろう。「聞かなきゃよかった」と。・ 様々な人が持つ諸事情が繋がっていく短編連作。「聞かなきゃよかった」と思う嫌な話が続くのだが、 この作品は話し手と聞き手の両方の反応が生々しくて、ダブルで嫌になる。 人どうしの「追い詰め合い」は心がささくれるものだ。 それでも良ければ、是非とも聞いてみて欲しい。