第一話 12-14
ところで合宿ということは当然泊まりがけであり、泊まりがけということは文字通り寝食も共にするということである。
要するに、いっしょに生活をして、ご飯を食べて、同じ屋根の下で寝るということだ。
その中で、
どういうことかというと。
たとえば一日目の夜、俺と
……ただし、何だかよく分からない肉塊と化した。
「……う、うう……も、申し訳ございません……」
目の前には平身低頭する
そう、これは
そもそもは、
『お世話になるのですから、お料理くらいはやらせてください。ローストチキンを作りますね』
その言葉に俺たちは一も二もなくうなずいた。
だって完璧超人始祖の
そして出てきた料理は……死んだ鶏の肉という形容がふさわしいものに成り果てていた。
「……こ、これは責任をもって私が一人で食べます……だから
泣きそうな顔でそう口にする
「大丈夫、
「え……」
「うん、見た目は悪──ゴホン、少し不格好だけど、ちゃんとローストチキンの味がする」
「さ、
「あ、ほんとだ。おいしい」
「す、
意外なことに、味は悪くなかった。悪くないというか、絶品だった。くどいようだけど見た目は
こんなこともあった。
「──それでは、お
「あ、うん」
夕飯を食べた後に、入浴の時間になった。
バスタオルを抱えた
「……」
俺の中の
『きゃあっ!』
ふいに浴室から、そんな声が聞こえてきた。
今のは……
何かあったのかと慌てて脱衣所へと向かうと、中から
『だ、だいじょーぶ、
『……う、ううう……』
続いて苦しげな
「ど、どうしたんだ!?」
『そ、その、
「!
『あ、あのね、カランからお湯を出そうとしたら、まちがえてシャワーを出しちゃって、びっくりしてそのひょうしにうしろにひっくりかえってよくそうにおちちゃったんだよ……!』
「え……」
『それだけじゃなくて、よくそうからあがろうとしてそのままおふろのフタにおもいっきり頭をぶつけちゃって……』
それ……かなりの大惨事じゃ。すぐに手当をしないと──
『なのにたんこぶひとつできてないんだよー。びしょぬれにはなっちゃったけど……』
「……」
……それ、すごくない?
というか今どきそんな絵に描いたようなドジをする人、いるんだ……
曇りガラスの向こうからは、『うう……お騒がせしてすみません……こういうことはよくあるので受け身だけは得意なんです……』という
そしてさらにはこんなことまでも。
一日目が終わり、寝ようとする際に、
「じゃあおやすみ、
「あ、うん……」
「? どうかした?」
「その……」
身体の前で手をきゅっと握りしめながら、客間の前でもじもじと恥ずかしそうに視線をさまよわせている。
え、これってもしかして、「もう少し……せんせーといっしょにいたい(ベタ)」とか……?
だけど次に
「……教えて、ほしいの……」
「え?」
「わたし……その、はじめてだから、分からなくて……」
「は、はじめて……」
って、何が……!?
夜の一つ屋根の下、二人きり(妹はいるけど)、頬を赤くするお嬢様。
そのこれ以上ないくらいの意味深なシチュエーションに思わず心臓の鼓動が速くなる俺に、
「……ええと、
「え?」
「いつも寝るのはベッドで、
「…………」
……ですよね! 分かってた!
こんな時間に恥ずかしそうな表情で教えてくれって言ってくることなんて、
心の中で血の涙を流しながら
「…………」
それにしても……一連の出来事で一つ思い当たったことがある。
薄々だけど、そうなんじゃないかと疑っていたこと。
もしかして
学校ではどんな時でも優雅で上品で、先生からの質問に如才なく答えたり、音楽の時間に
ポンコツというか、どこか抜けているというか。
でも何か……完璧で隙なんて一切ないと思っていた
・
集中する時は眼鏡をかける。
・
料理が独創的。
・
・
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