第一話 4-14
やって来たのは、本屋の近くにある公園だった。
昼間は近所の親子連れや散歩する老人、犬を連れた愛犬家の人たちが
「……」
もう泣いてはいないみたいだったけれど、その顔は暗闇でも分かるくらいに真っ青だ。
「ええと、何か飲む……?」
「……」
「それともお
「……」
返事がない。ただの
それはまあ冗談なんだけど、
しばしの沈黙。
やがて
「……たんでしょ……?」
「え……?」
「……見抜いた……んでしょ……?」
え、見抜き?
って、な、何を?
若干アレな勘違いをする俺に、
「と、とぼけないで……わたしがイラストなんて何も描けない素人だってこと、見抜いたんでしょ……?」
顔を上げて、
「そ、それだけじゃない……ほんとはわたし、『魔法少女ドジっ娘マホちゃん』なんてほとんど何も知らない……神作画とか、覇権とか……何にも分かんない……。暗記した知識だけを披露してそれらしく振る舞ってるってことも、もう分かってるんでしょ……!」
「え、そうなの?」
「え?」
「え?」
「……」
「……」
一瞬、何ともいえない空気が俺たち二人の間に流れる。
カサカサと、丸まった紙クズが風に流されて俺たちの背後を転がっていった。
「…………」
……ええと、まだいまいち状況を
実は
それどころか、驚くなかれそもそも『魔法少女ドジっ娘マホちゃん』についてすら、大した見識を持ち合わせていない。
そしてそれを、別に何も気付いていなかったカブトムシみたいに勘の悪いことこの上ない俺に向かって、あろうことかカミングアウトしてしまった。
だいたい、そういうことだよね?
「……」
「……」
「……」
……ああ、これ、とりあえず厄介事の匂いしかしないやつだ。
「……ごめんね、それじゃあ、俺はこれで」
「……ま、待って!」
ガシッ!
さりげなくその場から退避しようとしたのに、アザラシを
どうしていいか分からなくなった俺に、
「お、お願い……わたしを助けて!」
助けてほしいのは俺の方です。
3
翌日。
教室で音楽の授業を受けながらも、俺は上の空だった。
頭の中は別のことでいっぱいいっぱいで、授業の内容なんてこれっぽっちも入ってこない。普段は面白いはずの非常勤の
何でかって言われれば、原因は一つしかない。
昨日の──
ちらりと斜め前方を見る。
その様子は完璧なお嬢様そのもので、昨日の泣き顔の
あれは夢か幻覚か何かじゃなかったのか。そう思わせるほど現実感がなかった。
だけど、夢じゃないんだよな……
残念なことに。
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