第一話 14-14
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そしてそれから一週間後。
「いやぁ、さすが
「まさかピアニッシモちゃんのあのシーンを描いてくるとは思わなかった。やっぱり
「素晴らしかったです」
『AMW研究会』の部室では、三Kたちが大声で盛り上がっていた。
「あ、ありがとうございます。おかげさまで過分な評価をいただくことができて……」
その真ん中で、
正確に言えばランクインではなくて、いわゆる奨励賞のような位置づけ。
とはいえ十分すぎる結果だ。コメントに、まだまだ技術としては粗いところがあるけれど描いている人の心が伝わってきました、というものがいくつか見られたのが印象的だった。
「すごいねー、
と、いつの間にやって来ていたのか、隣にいた
「しかも一ヶ月足らずくらいでかー。センスと素質はあると思ってたけど、これはびっくりかもー。これはちょっとこれからの動きに注目かなー」
「……」
ん、何かその口調だと、
ま、気のせいかな。
ともあれこうして
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「本当に……ありがとう。せんせーがいてくれなかったら、わたし、もうだめだった」
まだ三Kたちが大騒ぎをする部室を少しだけ抜け出して。
人気のない廊下で、
「そんなことないって」
今回はたまたま俺が協力することになったってだけで、きっと
そもそも俺がやっていたことなんて、
だけど
「ううん……そんなこと、すごくある。せんせーがいなかったらそもそも心が折れちゃってたと思うし、ピアニッシモちゃんのシーンを描こうって提案してくれたのもせんせーだった。それに……」
「?」
「それにあのシーン……似てたんだ」
「似てた?」
って、何に?
俺の疑問に、
「ほら、せんせーが本屋さんでわたしのことを助けてくれた時に……」
「あ……」
そういえばあの時もあんな感じだったっけか。
イラスト入門書を取ろうとして餅つきダンスをしていた
だから
「あー、
「それ」
「え?」
と、
「その
気になるってどういうこと? あ、もしかして俺ごときプランクトンが
どう反応していいか戸惑う俺に、
「あのさ……
「え?」
それはまったく予想外の言葉だった。
「ほら、その、呼び方?
「あ、え……」
いきなりそんなことを言われましても。
女子を下の名前で呼ぶなんて、これまで
「あ……」
「……」
「その……」
「……(じ~)」
期待に満ち満ちた
ええい、もうヤケだ。
「……あ、
「あ……」
「……よ、よろしくな、
「うんっ……♪」
──まるでどこかの国のお姫さまみたいに。
「これはね、お母さんが大切な人に感謝の気持ちを贈る時に、やってたんだって」
「お母さんが……?」
「うん。お母さんもね、昔この
そう言うと、
そして、満面の笑みで、こう言ったのだった。
「これからもよろしくお願いします、せんせー♪」
こうして、俺と
だけどこの時はまだ、気が付かなかった。
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