第三話 5-11
クラスも中学も違うし特に接点はないのだけど、悪い意味で有名人なので知っていた。何でも家が新興ゲーム関係の会社の社長らしく、〝アキバ系〟の知識に相当の自信があるのだという。ただそのことを鼻にかけることも多く、さらに女癖の悪さが中学の頃から知られていて、一部男子からは牛乳を拭いたまま一週間放置された雑巾のごとく嫌われているとのことだった。
え、
「こうして
違った。勝手に来てただけだった。
「やはり〝アキバ系〟のマスターたる
「は、はあ……」
いや現状、おそらく
「ところで
幸いなことに、話の内容は『魔法少女ドジっ娘マホちゃん』の方に向いてくれたみたいだった。さすがは今期の覇権アニメにしてアキバ系の八割が見ていると言われるだけはある。これなら
「どうですか、
「あ、ええと、ピアニッシモちゃんが好きで……」
「僕のお気に入りはマホちゃん一択です。やはり『魔法少女ドジっ娘マホちゃん』といえばヒロインであるマホちゃん以外あり得ませんよね。他のキャラなんておまけみたいなものです。ああ、そうそう、実は僕、アニメのプロデューサーと知り合いなんですよ。だからその気になればアフレコを見学することだってできる。よかったら
「え、ええ……」
見事に会話のキャッチボールができていない。
あれ、
「──ふむ、
「あ、部長」
と、いつの間に戻ってきていたのか、片手にフランクフルトをもぐもぐしながら
「あの男も来ていたのか。
「部長、知ってるんですか?」
「ああ。入学してすぐの頃に、『AMW研究会』に入ってやる、と我が物顔でやって来た。だがどうにも性格に問題があってな。私の権限で丁重にお帰り願ったんだ」
小さくため息を
うーん、だれにでも人当たりがよくてどんなカップリングにも寛容なこの先輩がそんな表情をするなんて珍しい。
「……基本的に『AMW研究会』は来る者は拒まない。だけどそれはきちんとコミュニケーションができるという最低限の礼儀をわきまえているという前提の話だ。調和を乱す者、相手の話している内容を受け入れられない者には遠慮願うことにしている。それは
「……」
……まあ、見るからに自分のことしか話さずに相手の主張は小馬鹿にするタイプですよね、あの人。
「それにしても、きみと話している時とは大違いだな」
「え?」
「
「や、それは……」
それは……きっと俺が
その後十五分ほど、さんざん自分の自慢話だけを一方的に
「大丈夫だったかい、
戻ってきた
「え? あ、
「割って入ろうかとも思ったのだが、あれでも
「そう……ですね。気を遣っていただいて、ありがとうございます」
さすがというか何というか、普段は三Kたちに混じって「うむ、やはりダンプカーと電柱のカップリングはよいものだ……」とか幸せそうな顔で言っている印象が強いから、余計にそのギャップに驚いてしまう。
「
「え、いや、俺はいいんだけど……」
そう答えると
(また……後でお話ししますね♪)
ささやくような吐息。
なんか全身がゾクリときて力が抜けていくような気がした。お耳の恋人ってこういうことを言うのかもしれない……
・
「あ~ん」がデフォルト。
・
ささやきがほとんど必殺兵器。
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