第一話 6-14
4
授業はほとんど頭に入ってこないまま、放課後になった。
終業のチャイムが鳴り響き、教室が
俺はバイトや委員会もやっていないし、ラノベの主人公のように放課後限定で魔術師やら秘密の
だけど今日は……
「──
「お……」
途端に周りにいたクラスメイトたちがざわりと顔を上げて、クラス中の視線がマンガの効果線みたいにこっちに集中する。
「お、おい、どういうことだよ……?」
「何で
「確か同じ部活だったはずだけど、いつの間にそこまで仲良くなったんだ……!?」
ひそひそとそんな話し声が聞こえてくる。うん、それは学園のアイドルである
うーん、それは昨日、彼女に協力するという約束をしたわけだから、声をかけてくるというのは自然な流れなのだけど、だったらもうちょっと目立たないというか穏便な方法で接触してきてほしかったなと思ってしまう。うう、視線が痛い……
周囲からの視線に針のむしろのようになっていると、あんまり空気を読まない
「あれれ、今日は部活行かないの、
「ん、悪い。ちょっと今日は用事があって」
「用事って、
「あ、うん」
「ふーん、そっかー。
「あー、ごめんな」
「いいよいいよー。じゃあまた明日ねー!」
そうにっこりと笑うと、
「え、ええと……それじゃ行こうか、
「あ、はい」
とりあえず教室にいると明日からの平穏な学校生活が保障されなかったため、
とはいえ教室を出た後でも、廊下や昇降口で注目を浴びて大変だった。動物園のパンダはきっとこんな気分なんだろう。それはストレスで鼻も白くなるわ。むしろ教室の中の方が上級生や他クラスの生徒がいなかっただけマシだったくらいだ。
改めて、
でもそれもむべなるかな。
何ていうか……こうして改めて見てみても、
美人だし、かわいいし、
「? どうかされましたか?」
「! え、あ、や、何でもないです!」
クンクンしてたのとかばれてないよね!?
「??」
不思議そうな顔をする
そこから電車をいくつか乗り継いで、駅から少し歩いて。
やって来たのは、カラオケボックスだった。
「……ふう、ここまで来ればだいじょぶかな」
「カラオケって……歌うの?」
「違うよ~。イラストの特訓をするんだよ。ほら、カラオケは個室だから落ち着いて作業ができるし、フリータイムで入ると料金もお得……ってネットに書いてあったから」
お嬢様なのに意外とそういうところはしっかりしているんですね。
ともあれ確かにカラオケボックスは秘密の特訓場所として最適かもしれなかった。
入り口で受付を済ませて部屋へと入る。六畳ほどのさして広くはない部屋だ。注文した飲み物を置いて店員さんが去ると、部屋の中には俺たち二人だけになった。
「さ、やるぞ~」
そう言うと、
いわゆる、ツインテールってやつだ。
「こうすると何だか気合いが入るんだよ。えへへっ」
見ているだけで元気が出てきそうな笑みを浮かべてそう口にする。
よく分からないけど、そういうものなのだろうか。
まあ何であってもやる気を出してくれているのはいいことだと思う。
ところがその直後に、
「──で、特訓なんだけど」
「うん」
「何からやればいいのかな?」
俺は盛大にずっこけた。
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