第一話 7-14
「とりあえず、模写してみようか」
「模写?」
「うん。イラストの上達には、とにかく最初はうまい手本をたくさん模写するのがいいらしいんだ」
これは
「分かったよ。とにかく描いて描いて描きまくって、その手本が幻覚で見えるようになるくらいになればい~んだね?」
「それは確実に精神を病んでる人だけど……まあ、だいたいそういうことかな」
「了解、じゃあやるね!」
そう口にすると、
シャッシャッシャ……と、紙に鉛筆がこすれる音が狭い室内に響く。
扉の向こうからは、他の部屋でシャウトするだれかの歌声がかすかに響いていた。
「……」
うーん。
やることがない。
基本、
それにしてもこの状況は何だろう。
放課後のカラオケボックスに女子と二人きり。
それも相手はあの、学園のアイドルにして
ほんの二日前にはこんなシチュエーションは天地がひっくり返っても考えられなかった。妄想すらしていなかった。人生本当に何があるか分からないというか……
と、少しだけ感慨深く思いながら視線を戻すと、
「…………ん?」
え、何これ……?
「の、
「え、ピアニッシモちゃんだよ?」
思わず
「ピ、ピアニッシモちゃん?」
「うん、そう。『魔法少女ドジっ娘マホちゃん』に出てくるキャラクター。ほら、部活で受け答えができるように勉強した時にはじめてネットで調べて、その時から気になってた子なの。似てない、かな……?」
「……」
似てるとか似てないとかじゃなくて、この世の全てを恨み憎んでいる
「……あー、もうちょっと、雰囲気を柔らかくした方がいいんじゃないかな……(
「え? う~ん、難しいよ~」
「その、何だ……分からないけど、線が多いんだと思う」
「線が?」
「うん。ごちゃごちゃして見えるっていうか」
要するに迷い線が多いから、それが重なって全体的に暗い印象になってしまっているし、まるで
「あ、なるほど~。つまりもう少し主線を強調して、余分な線を減らしてすっきりさせればいいんだね~」
そうこくこくとうなずくと、
と、
「?」
「
「え、そう?」
「うん。すっごく分かりやすい。先生になれるんじゃないかな?」
「そ、そんなことないって」
「ううん、あるある。アルマジロだよ」
何だそれ。
「って言われても、ただ気付いたことを言ってみただけだし……」
「それが的確なんだよ。すっと頭に入ってくるっていうか。──あ、そうだ。
「え?」
「うん、何かその方がしっくりくる。せんせー♪」
にっこり笑いながらそんなことを言ってくる。
う、何か照れる……。おまけにせんせー、の「せー」のところが舌ったらずな感じになっているのもまた胸の奥の何だかいけない部分(ロリコン属性)をくすぐるというか……
「ほ、ほら、そういうのはいいから、続きをやろう」
「はーい、せんせー♪」
右手を上げながらどうしてか
その
「……でも、本当に俺なんかでよかったの?」
「え?」
「ほら、先生なんて言われても、そこまでイラストとか〝アキバ系〟に詳しくないし……。もっと他にいい相談相手がいたんじゃ……」
たとえば
だけどその言葉に、
「ん~ん、そんなことないよ。結果論になっちゃうけど、〝秘密〟がばれちゃったのが
ふと真面目な顔になって、
「何だろ……なんか、
そんなこと言われると、俺の方がどこかのねずみ男みたいにビビビときてしまうんですが。
まあでも、その特別な人を、最初は水酸化ナトリウムで闇に
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