第三話 8-11
4
さて、そんなことがあって一時間ぶりくらいにパーティー会場に戻ってきた俺たちを待っていたのは。
「だからね、その時に僕は言ってやったんだよ。あの劇場版は本当に駄作で、いいって言ってるやつらはみんなにわかで何にも分かってないって」
「は、はあ……」
「そうしたらそこにいるやつら、全員何も言えなくなっちゃって、はい論破って。まったく、
いつの間にか
また
しつこいというか
さすがは牛乳雑巾みたいに嫌われているだけはある。
「でさ、さっきも言ったと思うんだけど、『マホちゃん』のアフレコに行かない? 今度の木曜日とかどうかな?」
「あ、え、ええと……」
「ねえ、いいじゃないか、
「い、いえ、ですからその日は用事がありまして……」
「そんな用事なんてキャンセルしちゃえばいいって。僕と出かける以上の楽しいエンタテインメントなんてあり得ないからさ。それに女の子のイヤはイヤじゃないってこと、知ってるんだよ?」
しかも
というかさすがにあれは見過ごせなくないか?
なんかやたらと息遣いがハアハアしてるし目付きがいやらしいし、いくら何でもやめさせないとハラスメント警察的に完全にアウトなレベルですよね……と思ったところで、さっきの
『あれでも
「……」
あんな見るからに人様に迷惑をかけているセクハラ行為でも、注意したら問題になるのだろうか。
性格が悪いっていうのはこの短い時間の
だけど。
「ほら、じゃあ待ち合わせは何時にしようか? 学校が終わったら教室まで迎えに行くからさ」
「あ、あの、ですから……」
「んー、あんまりもったいぶるのもかわいくないよ? 僕は紳士だからいいけど、器の小さいやつだったら気を悪くしちゃうかもしれないからさ。あ、僕は大きいけどね。アハハハハ」
「……」
あんな風にして嫌がっている
よし、決めた。
俺は一歩前に出て、
「……そこまでにしときましょうよ」
「あん、何だよ、お前?」
「ええと、あんまり強引に誘うのはよくないですよ。ほら、
すると
「はあ? お前には関係ないだろ。だいたい
ドンと肩を押してくる。
くっ、こいつ、殴りたい……
だけどここで騒ぎを起こしたら負けだ。
「いや、いちおう関係あるというか何というか……。お願いしますから……」
「うるせぇな、
「そんなこと言わずに……」
不本意だけど、こうしてとにかく悪代官に黄金色の
「ちっ! マジしつけぇな……って、ああん、よく見ればお前、『AMW研究会』のやつか。その量産型のジムみたいな顔、見たことがあるぞ」
「……」
……ガマン……
「はっ、情けないな。そうやってコメツキバッタみたいにへこへこするしかできないのかよ。プライドってもんはないの? この根性なしの腰抜け骨なし軟体生物野郎が。まるでスルメイカタイプの醜悪なクリムゾンみたいだな」
「……」
……ガマン……ガマン……
……まあそのクリムゾン役、やりましたけどね……
心の中でひっそりと突っ込みながらもとにかく耐える。
だけど暴発は、想定外のところから飛び出してきた。
「……今、せんせーのこと、スルメイカタイプのクリムゾンみたいって言ったの……!」
「あ、
「わたしのことはいいけど、せんせーにひどいことを言うのは許せないよ……っ……! …………こ、こうなったもう、闇に
え、もしかして、素が出ていらっしゃる……?
慌てて口をふさいで誤魔化す。
周りにはたくさん人がいるし、
「ハッハッハ、これだけ言っても何も言い返せないのか。本当に情けないな。おい、びびってんのか? スルメイカクリムゾンくん?」
「……ま、またせんせーのことを……く、駆逐してやる……っ……」
「あ、
ぜんぜん
今にも大噴火しそうな
それを必死に止める俺。
ああ、何かもう何が何だかよく分からない……!
あまりにカオスな状況に頭を抱えていると、
「はいは~い、そこまでそこまで~」
ふいに会場内に場違いな声が響き渡った。
ぱんぱんと手を
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