第四話 6-13
3
「──それではこれより、『ぽろりもあるよ! 〝アキバ系〟大クイズ大会』を始める。諸君、準備はいいかい?」
『ぽろりもあるよ! 〝アキバ系〟大クイズ大会』は始まりを告げた。
「まずは参加者の紹介をするとしよう。一人目は、我が
簡単な紹介とともに、参加者の名前が読み上げられていく。
参加者は全部で八人。
その中でも、
ちなみに俺は今日のソロ戦には参加しないので、舞台袖からどこかの家政婦のようにひっそりと応援するだけである。
「それにしてもよくこんなに集まったもんだよなあ……」
改めて見てみると、メインステージにはたくさんの観客……〝アキバ系〟の人たちが詰めかけていた。
「ではでは、参加者も
「テーマは知っての通り今期の覇権アニメ、『魔法少女ドジっ娘マホちゃん』だ。みんな、『マホちゃん』は好きかーい?」
「「「おおー!!!!」」」
地面が揺れるような大歓声。
『マホちゃん』のキャラクターの描かれたボードを大きく掲げたり、コスプレをして飛び跳ねたりしている
「『マホちゃん』といえば不朽の『ドジっ娘魔法少女』シリーズであり、今期のナンバーワンであることは間違いない。なので今回も当然『マホちゃん』がテーマである──」
「……」
「──と、言いたいところなのだが」
そこで、
「『魔法少女ドジっ娘マホちゃん』は確かに疑うことなき今期の覇権アニメだ。だがあまりにも覇権すぎて、皆語り尽くしてしまっている感もあるだろう。SNSやネット上でも、毎日のように『マホちゃん』や『MGO』の話題で持ちきりだ。むしろ九割方それしかないと言ってもいい」
観客席から「確かに……」「それはそうかも……」といった同意の声が上がる。
「だからこそ、今ここでそれ以外のものにも脚光を当てたいと思う」
え、あれ? こんな
クイズの問題とは関係のない進行台本は見せてもらっていたけれど、今の部長の
「『マホちゃん』以外にも素晴らしいアニメは今期もたくさんある。それらがフィーチャーされないのは、この上なくもったいないことであり、同時に悲しいことだ。やはり〝アキバ系〟を極めようとする者は、深さとともに様々なジャンルにまたがる広い視点を持ってほしい。そこで──」
言葉を
え、待って……この流れ……まずくないか?
「そこで……今回の『ぽろりもあるよ! 〝アキバ系〟大クイズ大会』の問題は、私の独断とサプライズで、『マホちゃん』以外のアニメから出題することにした!」
「な、何だってー!!」と、観客席からざわめきが上がる。
突然のサプライズ。
だけど問題はそこじゃない。
このサプライズで……致命的なダメージを受ける者がいた。
「…………」
だって
解答者席の
ど、どうしたらいい……!?
この流れはまずい。非常にまずい。
今から問題を元に戻してもらう……いやそんなのは無理だ。醜悪なイカクリムゾンのコスプレをして「グロッグロッグロッ……」とステージに乱入する? つまみ出されて終わりだろう。放送室に行って校内放送で
俺が舞台袖で
「──それでは第一問。まずは小手調べといったところだ。『ぬるカン』の第一話で使われた酒器は何であるか?」
出された問題を受けて、参加者たちが次々とフリップを出す。
だけど
「あれ、どうしたんだろう
辺りからそんなささやきが聞こえてくるものの、
「さあ、残り時間はあと三十秒だ。まだ解答を出していない者は急いでくれたまえ」
「……」
制限時間いっぱいになって……ようやく
途端に周囲がざわつく。
「え……どうして
「──正解は『江戸切子』。?
「では次の問題だ。『アワビさん』の登場人物で一番
再び次々と出されるフリップ。
だけどやはり……
やがて制限時間になり、
この辺りで、さっきまではさざ波のようだった動揺が本格的なものになった。
「え、どうして……?」「演出にしてはくどいよな……」「もしかして、本当に分からないとか……?」「いやいやあの
解答者も観客も、問題を出している
その困惑の視線を受けて、岩のようにじっと自分のひざの上を見つめている
こ、こうなったら、とにかく体調不良でも何でもいいから、一度
そうしたところでどうにかなるものでもない気がするけれど、とにかくこのままだと完全にアウトだ。
必死にバチバチとウインクをしてアイコンタクトを送るものの、だけどその祈りは
全身を震わせながら、今にも倒れてしまいそうな顔にもかかわらず、必死に解答しようとしている。
「……」
ダメだ、もう……
その後も、微妙な空気の中で問題は続けられた。
「『はにトラ』のヒロインは三人だが、その中で唯一動物ではないのはだれか?」
解答者たちから次々と出されるフリップ。
だけど
「どうなってるの、これ……」「ウソだろ……」「え、え、意味が分からないよ……」「
「…………」
とうとう最後の問題に至るまで……
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