乃木坂明日夏の秘密

五十嵐雄策/電撃文庫・電撃の新文芸

プロローグ


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 クラスメイトのざかは完全無欠だ。

 や、何を突然言い出すのかと思うかもしれないけれど、それは事実なのである。厳然たる事実なのである。

 背中まで伸ばされたさらさらの髪。空に浮かぶブルームーンみたいにぱっちりとした瞳。整った鼻筋。桜色の唇。

 どこをどう取ってみても、美少女の一言しか出てこない。あるいは女神。

 成績は優秀で、入試では首席合格を果たし新入生の代表として入学式で挨拶をした。

 性格もよく、入学してから二週間がつけれどだれもかれもが彼女のことを賛美している。毎朝教卓の花を替えていたとか、せんしきに捨てられていたいぬを助けていたとか、そういうエピソードがそこかしこから聞こえてくる。

 さらに教養もある。

 趣味のピアノとバイオリンの腕前はほとんどプロ並みだというし、他にも生け花や日本舞踊、茶道なども師範級の実力であるらしい。

 これだけでももう非の打ち所なんてほとんどないっていうのに、とどめのように家柄もいいときている。

 日本で三本の指に入る名家だというざか家の次女であり、超がつくほどのお嬢様だ。

 とにかくもう、完全無欠の見本市みたいな天上の存在なのである。

 そんなほとんど完璧超人始祖みたいなざかと、平民代表みたいな俺(特技:耳を動かすこと)とでは、接点などまるでないはずだった。

 二つの線が交わることなどない……はずだった。

 だけどそんなざかには〝秘密〟があった。

 人には言えない、大小様々な〝秘密〟が。

 その〝秘密〟が、本来違う世界にいたはずの俺たちをつないでいくのである。



 これは〝秘密〟の物語。

〝秘密〟がつなぐ、きずなおもいの物語……だ。

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