第38話 みにゃんに異変 !?

 べったりまったりマキベッドの真冬シーズンが終わって春が近づくと、マキの学説通りにみにゃんはだんだんと人から離れて行きました。


 …桜が咲いて急に気温が上がり出した頃、みにゃんは後ろ足で頭をカカカッ ! と掻くようになり、気になったので見てみると、頭頂部に小さなオデキが出来ていたのでした。

 爪で引っ掻いたらしく、被毛の中の頭皮に血がにじんでいます。

「…どうする?動物病院に連れていくか?」

 私はマキに訊きました。

「この子は皮膚が弱いのかなぁ?…オデキとか出来やすいよねぇ」

 …という訳で2人で悩んだ末に、結局いつもの動物病院に連れて行って猫を診てもらいました。

「おお、みーぽん君!今日はどうしましたか?」

 予防接種や去勢手術などでいろいろとお世話になった先生が私たちに笑顔で応対してくれました。

「すいません先生、大したことでもないとは思うんですが…」

 そう言いつつ猫の頭のオデキを見せると、

「う~ん、何だろうねぇ?…ウィルス性のものではないと思うけど…」

 先生はそう言ってオデキの部分の血液混じりの分泌物を採って顕微鏡で視たりしましたが、その正体や悪性の出来物なのかどうかは結局よく分かりませんでした。

 …その日は結局、患部の消毒と塗り薬にて処置してもらい、カラー (着け襟) は可哀想なので着けずに帰りました。

 …しかしその後、頭のオデキはいつの間にか治ったらしく、みにゃんはカカカカ掻きをしなくなりました。

「何てことも無かったみたいだな…」

 へよ~んと寛ぐ猫を見て私が言うと、マキは

「何を言うの!みにゃんは世界に一匹しか居ないんだから、変な病気になったりしたら大変じゃない !! …お医者さんにすぐ処置してもらうのが一番よねぇ!」

 と、みにゃんを抱きしめながらまたまた猫馬鹿全開で言うのでした。


 …野生動物みにゃんが野に山に江戸川河川敷に元気いっぱいの春が過ぎると、次はみにゃんがグッタリするギラギラの夏がずっしりとやって来ます。

 ドライブ猫のキャプテンみにゃんは車が大好きですが、夏はやっぱり大変です。

 私たちと一緒に走行中のときはまだエアコンがかかっているので車内でのへ~んと寛いでいますが、車を停めてエンジンを切るとたちまち赤道直下型熱帯地獄になってしまいます。

 そのため私とマキは夏のお出掛け時にはかなり神経を使います。

 みにゃんを車内に置いて行くときは、以下の対策を施しました。

 ①日陰または屋内駐車場限定利用

 ②全ての窓を少し開ける

 ③フロントガラスにシェードを着ける

 ④助手席足元にアルミ板と板氷を置く

 ⑤後席に凍結ペットボトルを置く

 …そして出来るだけ素早く用事を済ませて車に戻るのです。


 …そんな様々な猫用暑さ対策をしながらの夏も、お盆休みを過ぎるとそろそろ熱波の盛りも終わりかなという感じになりました。

 しかしそんなある日、私はみにゃんの身体に起きた異変に気がついたのでした。

「!…なぁ、みにゃんの後ろ足の付け根のところ、腫れてるんじゃないか?」

 …夜にはようやく少しずつ涼しい風が通るようになった8月終わりに、猫を散歩に連れ出そうとした私は、みにゃんを抱き上げた時にそれに気付いたのです。

「本当だ!右の後ろ足の付け根のところが少し腫れてる!…何だろう?」

 マキはみにゃんの下腹を手でまさぐりながら言いました。

 …しつこく腹をわさわさといじくられるうちに、みにゃんはだんだん不機嫌になってきて、

「ウギャギャッ!ギャッ!ハーッ!」

 と喚くと、マキの手をカプッ ! と咬んで、「痛っ !! 」と呻いたマキが手を緩めた隙にタターッと逃げて行きました。

 そして部屋の中で距離を置いてこちらを振り返ると、

「シャーッ !! 」

 と凶獣顔で吠えました。

「めちゃくちゃ機嫌悪くなっちゃったな!…どうする?アレ」

 私が訊くと、ムカつき気味にマキは言いました。

「放っとく !! 」



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