第24話 テレビ放送の結末

「…それで、今日撮ったこれはいつ放送されるんですか?」

 取材の最後に私とマキはお姉さんに訊きました。すると、

「…え~と、ご協力頂いてアレなんですが、全部の撮りを終えた後に番組編成会議を局内で行いまして、そこでどの VTRを使うかを決めるんですよ!…今日の映像が放送に載るかどうかはまだ分からないんです、すみません…」

 お姉さんの答えはちょっとガッカリするものだったのです。

 …マキが猫を抱いて助手席に乗り込むと、私はサービスエリアから車を発進させました。

 Fテレビのお姉さんは私たちに手を振って見送りながら、それをまた VTRカメラで撮っているのが見えました。

「…放送されるのかなぁ?これ」

「う~ん、…もともと予定してなかったオマケの取材対象だからなぁ…」

「サービスエリアで猫の散歩なんて風変わりだからついでにちょっと撮っとこうか…くらいのノリだよね…」

 走行中の車内で、マキと私は今の取材の件を検討しましたが、

「テレビ放送はあまり期待しない方がいいかな… ! 」

「…そうだね」

 という結論に達したのでした。


 その後、私たちは郊外へ車を走らせ、温泉に入ったり買い物したりと楽しみつつ、ペットショップでみーぽんグッズなど眺めながら平和な休日を過ごしたのでした。

 …そうするうちにテレビ取材のことも私たちの中からすっかり忘れ去られて行ったのです…。


 ところがそれからひと月ほど経ったある日のことです。

 夕方、まだ会社で忙しく仕事をしている私の携帯にマキから着信が入りました。

「あなたっ、大変なの !! 近くにテレビある?」

 いきなり興奮して話を切り出すマキに驚きながら、

「会社の仕事場だからテレビなんか無いよ!…どうしたの?」

 と訊くと、

「今お母さんから電話が入って、みーちゃんがテレビに映ってるって!…ほら、こないだのやつ !! 」

 マキは勢い込んで言いました。

「ええっ !? 採用されたの?みーちゃん映像 !! 」

 私はその知らせに大いに驚きましたが、何しろ近くにテレビが無いので確認することが出来ません!

「お前、テレビで確認出来ないのか?」

 と言うと、

「私は今、会社からの帰り道を家に向かって歩いてるところだもの… ! 」

 …という訳で当の私たちは肝心の映像を見逃す結果となったのでした。

 …翌日、会社の他部所の人間からも、「テレビ見たよ!」という報告をちらほら聞かされ、私は何だかホゾを噛むような気持ちになりました。


 …後にお義母さんに聞いたところでは、みーぽんのサービスエリア内での散歩風景と、例の私の振り返ってのセリフ、猫の顔のアップなど、わりとキチンと放映されたようで、時間にして1~2分くらいだったとのことでした。


 …こっそりテレビデビューを果たしたみーぽんは、その後も相変わらずにガツガツと餌を食べ、元気にお散歩して綺麗なお姉さんにスリスリしつつ、マイペースな猫生活を過ごして行きました。


 みーちゃんが3歳を過ぎた頃には体重が7キロ半くらいになり、もはやめったなことではコイツより大きい猫を見なくなりました。

 …そしてそんなある日、マキに妹サチから連絡が入りました。

「あなた大変!うちのお母さんがまた倒れて病院に運ばれたって !!…」

 マキの顔に不安の影が走りました…。


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