第23話 みーぽんTVデビュー !?

 一方、赤ちゃん猫の時から一緒にドライブに連れて行ってたせいか、みーぽんは車が大好きになり、走行中の車内では酔うことも無くへよ~んと寛ぎ、時々インパネデッキの上にあがって、フロントガラスに顔を押し付けて前方の景色を眺めたりするのでした。(この状態の猫をマキはキャプテンみーちゃんと名付けました)

 …週末ドライブで高速道路のサービスエリアに寄った際にみーぽんを散歩させると例によっていろんな人からのいろんな声が集まって来ます。

「あっ!にゃんこ、可愛い~っ !! 」

「凄~い!お散歩してるよ~!」

「デカいな !! 本当に猫?」

「えっ!…猫だよね !? 」

 口々に何だかんだ言われるので、

「普通の猫ですよ」

 と応えると、中には真面目な顔で、

「この子はお散歩出来るように特別に訓練された猫なんですか?」

 とか、

「ずいぶん大きいですが、何ていう種類の猫ですか?」

 さらに、

「車に同乗させるにはどういう躾けをしたら良いんですか?」

 などといろんな事を質問されて、私たちもだんだんと面倒くさい気持ちになって来たのでした。

「こいつは捨て猫だったので雑種です。生まれたばかりの頃から車に乗せてます。ガツガツよく食べるのでデカくなりました。気まぐれに好き勝手なところに行くと困るのでハーネス&リードを着けて散歩させてます」

 …一気に説明すると、ギャラリーの人たちはさらに興味ひかれたらしく、携帯を取り出して、

「写真撮らせてください!」

 と言ってみーぽん撮影を始めるのでした。

 …そんな状況の中、当のみーぽんは特に嫌がることも無く、シレッとした顔でマイペースに歩きます。

 面白いのはやっぱり猫とは言えオスなので、若い綺麗なお姉さんが、

「や~ん、にゃんこ可愛い~!」

 と言って寄って来ると、みーぽんもお姉さんにトコトコ近付いて行って足にスリスリしたりして甘えるのです。

「や~ん、超可愛い~っ !! 」

 思わずお姉さんがしゃがんでみーぽんに触れると、猫は顔を上げてキラリン眼でお姉さんをじっと見つめるのでした。

 そうするともう大抵のお姉さんは甘くとろける官能ラブラブモードにイカされてしまい、みーぽんはスカートの中に頭を突っ込んでクンカクンカと匂いを嗅いだり贅沢放題やり放題なのでした。

「凄いなみーぽん!女ゴロシだぜ !! 」

 リード紐を持ちながら私が感心していると、背後から声をかけられました。

「すいませ~ん ! ちょっとよろしいですか?」

 何かなと思って振り返ると、若い女性と VTRカメラを持った男性が立っていました。

「Fテレビですけど、取材させて頂いてもよろしいですか?」

 その女性は私に笑顔を向けて言いました。

「…実は高速道路特集の番組を現在製作中でして、その中のワンシーンとして撮らせてほしいんです!…ご主人と一緒にドライブして散歩する猫ちゃんて珍しいですよね !? 」

 Fテレビの女性スタッフはそう言ってみーぽんに視線を移しました。

「はぁ…別に、ウチの猫で良ければ撮って頂いてかまいませんが…」

 私が応えると彼女は後ろの VTRカメラのお兄さんに目で合図して、さらに私に言いました。

「ありがとうございます!そしたらですね、ご主人にはいつも通りに猫ちゃんと散歩して頂いて、私が後ろから声をかけますから、振り返ってひと言コメント頂けますか?」

( えっ !? 猫だけ撮るんじゃないのか!…)

 内心ちょっと驚きましたが、とりあえずお姉さんのリクエストに従いリード紐を持ってみーぽんと散歩します。

「すいませ~ん!何をされてるんですか?」

 お姉さんの声が聞こえたので注文通り振り返って答えました。

「はい、…え~と、猫と散歩してます」

(はい、OK !! ) …かと思いきや、お姉さんはちょっと小首をかしげて、

「う~ん、あの~…猫ちゃんを出来るだけ可愛く撮りたいので、できればご主人には振り返った時にパッと笑顔でですね、明るい感じで猫ちゃんを紹介するような流れでコメントお願いしたいんですけど…」

 と、いきなり難易度2ランクアップ注文を付けてきました。

( 突然後ろから声かけられてパッと明るく笑顔で振り返る奴なんていないだろ !? 普通…!)

 内心テレビ局のヤラセに戸惑いを覚えた私は隣で見ていたマキに、

「…ということだけど、お前やってみない?」

 と言いましたが、マキは即答で

「やだ !! 」

 と逃げました。

 仕方ないのでもう一度、声かけシーンのテイク2です。

「すいませ~ん!何をされてるんですか?」

 私の振り返ってのコメント、

「はいっ !! 愛猫みーぽん君とお散歩してま~す!😄」

 わざとらしい笑顔で応えるとお姉さんは、

「オッケーで~す !! 」

 と満足そうに言いました。

 私はその瞬間心の中でくたびれながら、普段テレビの中のタレントやレポーターなんてお気楽な商売だなと思っていたけど大きな間違いだったなと感じました。

 その後、VTRカメラのお兄さんがみーちゃんの散歩風景や猫の顔のアップなどを10分くらい撮影し、私とマキはお姉さんとみーぽんの普段の飼育などに関する話をしたのでした。


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