第25話 国立がんセンター

 お義母さんが2度目のダウンということで、さすがにマキも会社を休んで搬送先の病院に行きました。

「…また入院して検査することになった」

 …私の携帯にマキからの報告が来ました。

「…胃潰瘍が再発したのかな?」

 私が言うと、

「分からない…でも今回は胃とかじゃないみたいだよ!…」

 マキは言いました。


 …結局3日間入院して検査したお義母さんの病状は、私たちが思っていた以上に深刻なものでした。

「…何か、肺に影が見つかったんだって!…それで、専門医のところで詳しく調べてもらって治療を受けて下さいって… !! 」

 マキは病院からの結果報告を受けて言いました。

「専門医のところ?…」

 私が訊くと、マキは思い詰めたように答えました。

「柏市の…国立がんセンターだよ… ! 」


 それから10日後、私とマキと猫は団地にお義母さんを迎えに行き、車に乗せて国立がんセンターに向かいました。

「…別にたいしたこと無いのに大げさよねぇ!…こないだちょっと胸に変な感じがしたからお父さんにタクシー呼んでもらって病院行ったらこんなことになっちゃって…!」

 お義母さんはしかし表面上は元気に振る舞い、車の中では気丈にそう言うのでした。

 とりあえず私たちは少しホッとしながらも、

「たいしたこと無いかどうかは詳しく検査してみないと分からないでしょ !? 」

 とマキは言いました。

 国立がんセンターは柏市の柏の葉公園の近くにあり、団地からは車でおよそ40分ほどのところでした。

 …入院病室は8階の部屋でした。

 詳しい検査等は当然ながら入院が前提なので、私たちは病室のベッドが空くのを待っていたのです。

(しかし、それで10日間も待たされてたって訳か ! …)

 私は心中でブツクサ呟いたのでした。…もしもお義母さんが本当にがんに侵されているとしたら、一刻も早く治療に入らなきゃいけないのでは !? と思っていたからです。

 お義母さんの入った病室の窓からは、真下に見える外来者用の駐車場や、その向こうには柏たなか駅から茨城県方面に伸びるつくばエクスプレスのレールと周辺の開発中エリアの景色が見えました。

 部屋も思ったより広く、同じフロアには図書室や談話室なども有って、イメージよりは断然明るい施設でした。

 …指定された病室のベッドに入院用の準備を揃えると、マキはお母さんに言いました。

「大丈夫?…何か必要なことや要る物があったら電話するのよ!」

「平気よ!…別に身体が痛い訳じゃないし、検査するだけだもの!あんたたち、もう良いから帰りなさい」

 お義母さんは笑顔で応えました。

「…じゃあ帰るわよ、気を付けてよ、お母さん!」

 マキはそう言って、私たちはがんセンターを後にしたのでした。

「…お義母さん、全然元気そうだし、大丈夫なんじゃないか?」

 …帰りの車のハンドルを握りながら私はマキにそう言いました。

 別に無理に気を使った訳でもなく、素直にそう思ったのですが、マキは冷静にかつアッサリと言いました。

「医者ががんセンターでよく診てもらえって言うんだから、間違い無くがんだよ!…」

 私が驚いてマキの顔を見ると、その目はまっすぐ前を見詰めていたのでした…。


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