第22話 マキの母、倒れる

 …元気いっぱいのみーぽんは、元気いっぱいのままやがて2歳になりました。

 その後も私とマキとみーぽんは、お散歩もドライブも旅に行くのもいつも一緒でした。

 週末の休みにマキの実家に行くと、お義母さんとサチが喜んで迎えてくれました。

「まぁ~っ、う~ちゃん !! …よく来たわねぇ!元気だった?」

 もちろん歓迎する主賓はみーちゃんです。

 その団地のお宅にお邪魔すると、猫は2DKの各部屋を巡回チェックした後、お気に入りのサチの部屋に行きました。

 そして、畳の上に洗濯してたたんであるサチの衣類の上にちまんと座って満足そうなお澄まし顔になりました。

「いや~ん、そこはダメ~っ !! 」

 という訳で、サチにあられも無い叫びを上げさせる女泣かせの罪なみーちゃんなのでした。

「あら、大丈夫よ!…前からう~ちゃんはいつもあんたの服を洗濯する度に上で丸まってたから ! 」

 お義母さんの言葉にサチは、

「それって全然大丈夫じゃないよ~っ!」

 と取り乱すので、

「やっぱりみーちゃんも年頃の男の子なんだねぇ!…お姉ちゃんの服にくるまって嬉しいんだな…」

 と私がフォローを入れましたが、

「それも全然フォローになってないよ~っ!」

 サチはさらに叫ぶのでした。


 …という訳で猫を中心に2つの家族の中を楽しく幸せな時間が過ぎて行きました。


 その年の秋になり、私が道端の草の中にコロコロリーと鳴く虫の声など聞きながら帰宅すると、マキから思いがけない報告がありました。

「…サチから連絡があって、今日お母さんが倒れて入院したんだって !! 」

「ええっ !? …どうしたんだろうね?病気かな?」

 私が驚いていると、

「明日検査するらしいの…!」

 マキが言いました。


 …結局、その週末の土曜日に私はマキとお義母さんの入院先である松戸市内のT病院に様子を伺いに行きました。

 病室に入ると、ベッドの脇でサチとお義母さんが拍子抜けするくらいに明るく元気にお喋りしていました。

「何よ~、おおげさに2人して病院まで来ること無いのに…!」

 私たちを見ると、お義母さんは笑って言いました。

「胃潰瘍だったんだって…!」

 隣でサチが言いました。

「はぁ…、そうですか !? 」

「だってお母さん、めったに入院なんかしたこと無いのにビックリしちゃったわよ~!」

 マキがそう言うと、お義母さんは、

「ところで、う~ちゃんはいないの?」

 と訊きました。

「車に一緒に乗せて来たけど、病院の中までは連れて来れないでしょ !? 」

 マキはちょっと呆れたように言いました。


 …後になって思えば、この頃がマキの家族が一番幸せな時だったかも知れません。

 それに気付くのは、この後わずか1年半のことでした…。


 お義母さんは結局10日ほど入院して治療を受けた後、めでたく退院となりました。

「大したこと無くて良かったねぇ ! 」

 私とマキはそう言って安堵したのでした。



  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る