第15話 みーぽん予防接種バトル !
…動き回るようになったみーぽんは、その後加速度がついて身体が成長して行きました。
猫ご飯は離乳食から固形食や生餌へと変わり、どれもひたすらガツガツと食べまくりました。
家の中はとにかく食器棚は全てガラス戸を閉め、押し入れも閉め、台所下の扉も閉め、細心の注意が必要となりました。
…そのうちに爪とぎをするようになると、部屋の柱をバリバリとやられました。
何しろ子猫の身体からずんずん成長して行く真っ盛りの時期なので、すばしっこさ、好奇心、食欲と揃ってMax!
イタズラにも悩まされます。
私が会社勤めから帰宅した際も、うっかり玄関扉を開けると隙をねらって外に行かれるので、必ず中のマキに声をかけて猫を確保させてからでないと家に入れなくなりました。
それから、猫トイレのしつけですが、これは意外や実にスムーズに出来ました。
今までの冷やし中華容器にトイレ砂を入れて浴室のスノコの上に用意したら、迷わずきちんとそこで用を足すようになりました。
「…これだけでも充分おりこうさんだわ!みーちゃんは良い子ねぇ」
マキは例によって親バカ全開でみーぽんを抱きしめ、猫が要求するままにご飯を与え、さらに驚くべき成長速度でみーちゃんはデカくなって行ったのです。
…やがて夏が終わり、秋になるとみーぽんの体重はあっという間に4キロを越えました。
朝にマキの実家に預ける際も、今では猫を蓋付きのバスケットに入れ、お義母さんが両手で重そうに持って行く状態になりました。
そんな中、私とマキはみーぽんを連れて市内の動物病院に行きました。
予防接種と去勢手術をするためです。
「みーぽんちゃん、どうぞ~!」
先生に呼ばれて診察室に入ると中央にテーブル状の診察台があり、そこに猫を乗せると不穏な空気を察知したのか急にみーぽんは怯えた眼になり、台から逃げようとしました。
私とマキは素早く猫を押さえつけ、横に寝かせましたが、頭と前足をおさえたマキはもがくみーぽんに噛まれるわ爪攻撃を受けるわで腕と手からたちまち流血。
私は後ろ足をグッと掴んでケツを押さえましたが猫の抵抗もかなり凄い力です。
「先生、早くっ !! 」
私が思わず叫ぶと、先生は
「はいはいっ!」
と応えてみーぽんのケツにブスッ!と注射器の針を突き刺しました。
「ウニャアアアァァァ~……!」
哀しい悲鳴を上げ、後ろ足をビクビクさせながら猫は悶絶死したかのように動かなくなりました。
「…予防接種、終わりましたよ!」
先生がそう言ったので押さえていた手を緩めた瞬間、猫はダッ!と診察台から跳びだして、少しだけ開いていた診察室の扉を頭でこじ開け、受付待合室に脱出して行ったのでした。
予防接種を終えて、私たち2人とみーぽんは家に帰りました。
「去勢手術は、もう少し様子を見てからにしましょう…身体がある程度しっかりとしてからじゃないと、麻酔とかいろいろと手術は個体に負担が大きいので…!」
先生のアドバイスに従い、猫の今日のストレス状況を考えて動物病院を後にしたのです。
帰宅後、家の中にみーぽんを放すと、注射のショックも癒えたのかすっかり元気を取り戻してダダダダダダッ!と部屋の中を駆けずり回ります。
マキはさっき流血した右手に消毒薬を塗り、傷上に絆創膏手当てをしました。
「みーぽん君!…キミのせいでお母さんは傷だらけになっちゃったぞぉ!」
私は走って来た猫を捕まえ、顔を近付けて言いました。
「しょうが無いよ!…いきなり押さえつけられて注射されたんだもの…痛かったのよね!…抵抗しちゃうわよ、やっぱり」
猫バカ母さんはしかしそう言って笑うのでした。
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