第9話 The cat & horse in cherry town
…山形道はこの時は寒河江インターが終点だったので、私たちは自動的に下の国道113号線に降りて北に進路を取りました。
ガソリンスタンドで給油した後、国道から左折して寒河江の市街に入ります。
「…お腹減ったよねぇ!…朝から開いてるファミレスとかないかなぁ?」
私はマキに言いましたが、あても無くやって来た山形県の小都市にそんなものがポン!と見つかるはずもないので、結局車で知らない街の中を流しながら2人でキョロキョロと目を動かしつつ進んで行きました。
…寒河江市は山形盆地の中の西部に位置する街で、市内の家並みの中を少し走ると、朝からやってるレストランなど全く無いまま市街が途切れ、その先は緑の果樹園が点在する田園風景に変わりました。
そしてその果樹園の木々は緑の葉の間にたくさんの小さな赤い実をつけていました。
「さくらんぼだ !! 」
私は思わず叫びました。
そうなのです!6月の山形と言ったら、ジャストさくらんぼシーズンなのでした。
「せっかく来たんだから、この際さくらんぼ狩りしちゃおうよ!」
マキにそう言ってゆるゆると車を進めると、道端に「さくらんぼ狩り」と記した色鮮やかなノボリを立てているさくらんぼ園を見つけたのでした。
「…さくらんぼ狩り?…え~と、予約のお客さんですか?」
車を停めて訪ねると、大泉園というそのさくらんぼ園の主人らしきおじさんは、ちょっとけげんそうな顔で応えました。
「いや、予約は…個人でふらりと来たんで…予約しとかないとダメなの?」
と訊くと、
「いや、個人でも大丈夫ですよ!…じゃあちょっと待ってね」
…という訳で、おじさんが説明してくれたところによると、寒河江市内には地区別に「さくらんぼ管理センター」というのがあり、そこを訪ねて「さくらんぼ狩り券」を購入すれば個人で予約無しでもさくらんぼ狩りが出来るとのこと。
「この辺だと…ここに行って下さい、この時間なら人がもう居るはずだから…何だったらウチから紹介されて来たって言ってくれれば良いから!」
最後にそう言っておじさんは紙にざっくりとした地図を書いて渡してくれました。
…寒河江は市街の周辺を、ほぼぐるりとさくらんぼ園に囲まれてるような町で、もらった地図を頼りに市街の東側を進むと、ほどなく果樹園の間に「石持原さくらんぼ管理センター」がありました。
と言っても、そこは平屋の集荷場みたいな所で、地元のさくらんぼ農家の人たちが数人詰めてるだけの簡単な事務所兼作業場?になっている様子でした。
…「あれ?なにお客さん、 遠い所から猫連れてさくらんぼ狩りに来たの?…珍しいねぇ、ハハハ~ッ!」
みーぽんを抱いてさくらんぼ狩り券を購入したら、受付のおばさんにそう言われてなぜか大ウケされてしまったのでした。
1枚1,200円のさくらんぼ狩り券を2枚購入して外に出ると、管理センターの建物脇に木の柵で囲った一角があり、その中には一頭の馬がいました。
「おおっ!お馬さんがいるよ、みーぽん君!」
私は子猫を抱いたまま柵のところに行って、みーぽんに馬を見せました。
馬は栗毛に黒いたてがみのオーソドックスなやつでしたが、私たちの姿を見ると、のそのそとこちらに近寄ってきました。
「おぉっ!来た」
思わず叫ぶと、馬は「ブルルルルルッ! 」と鼻息を鳴らして大きな長い顔をみーぽんの前に伸ばして来たのでした。
「こんにちは、お馬さん!」
私はそう言ってみーぽんを馬の鼻先に近付けました。
…猫と馬はお互いに不思議~な物を見るように目をぱちくりさせながら「 !? 」な瞳で見つめ合っています。
その様子が何とも可笑しくて、つい
「うははははは~!」
と私が笑っていると、
「あれ~!何してるの~?」
後ろからマキがやって来ました。
「猫と馬と人の素敵なふれあいです」
私がそう言うとタイミング良くみーぽんが「ミャ~!」と鳴いたのでさらに可笑しくなってみんなで笑ったのでした。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます