第41話 診断結果

「み~ちゃん!お疲れ様~、もうお家に帰れるよ~ !! 」

 …こころなしかグッタリした感じに見える検査後の猫を抱いてマキは言いました。

「…ではまた来週、検査の結果によって処置についてはこちらで決めますが、オーナー様にまたその時ご説明してご了解頂きますのでよろしくお願いします」

 再度説明する医師2人に私は、

「もうとにかく先生にお任せするしかありませんので、何とか治してやって下さい!来週もよろしくお願いします」

 と頭を下げ、猫を連れて帰りの車に乗り込みましたが、実際にはまだこの時は事態を軽く考えていたのです。

 …まさか翌週、波乱の展開が待っているとは、私もマキも全く予想だにせぬ秋の1日でした…。


 高度治療センターから戻ってそれからの1週間は特に何事も無く、私たちはいつも通りのほほんと過ごしました。

 猫の腫れ袋は相変わらずながら、動作には支障無く、依然として元気にご飯もガツガツ食ってパワフルに飛びまわり人を踏んづけて突き進むみにゃん君なのでした。

「…去勢しようが病気だろうが腫れ物が出来ようが、食い意地と傍若無人さは誰にも負けないなぁ、コイツは!」

 私たちはそう言って笑いながら「冬ソナ」以降ハマっている韓国ドラマを観ていました。

 マキは現在は「チャングムの誓い」に夢中で、やはり DVD を借りてきては先行きが気になって毎日それを観るのが日課のようになっていました。

(韓国の女って、権力欲と意地悪だけで生きてるみたいだなぁ…)

 私はその宮廷ドラマを観ながら、ふとそんな感想を抱きましたが、口には出しませんでした。


 …家族それぞれがそれぞれなりに寛いで過ごすうちに、1週間なんてあっという間に経過して、再び高度治療センターに向かう日となりました。

 例によって私とマキは休みを取り、猫を連れて首都高速をぶっ飛ばしてK市に向かいました。

(…何だかんだ言ったところで、とにかくこの腫れ物はサッサと切除するしかないんだろうな…早く手術してもらってケリをつけたいぜ!)

 車を運転しながら私は単純にそう考えていました。…何しろそんなにしょっちゅう会社を休んでK市通いをしてる訳にもいきません。


 …高度治療センターに着いて、診察室に呼ばれると、前回の2人の医師がいました。

 私たちの顔を見ると、背の低い方の医師が説明を始めました。

「…え~と、みーぽん君の右後ろ足の付け根に出来たこの腫れ物ですが、どうやら炎症とかウィルス性によるものでは無く、やはり腫瘍ですね!」

 私は途中で質問を挟みました。

「…要するにがんみたいなものですか?…悪性のものですか?」

「はい、まぁ…そうです!…増殖性が高いと思われるので、悪性のものと考えた方がいいですね」

「悪性 !? …ということは、処置はやっぱり患部を切って摘出手術ですか?」

「はい!…」

 …医師の応答を聞いて私は、

(やっぱり!…だからサッサと切って取りゃあ良かったのに…)

 と心中で思いましたが今さらもうしょうがありません。

「では、今日はこれからすぐ摘出手術をして頂けるんですね !? 」

 と訊くと、医師2人は一瞬顔を見合わせた後で言いました。

「はい!…ただ申し上げた通り増殖性の高いものなので、かなり思い切って広範囲に切除することになります!…それをご了承して頂きたいんです」

 医師の言葉のただならぬ感じに

 私が、

「…広範囲に切除とは…具体的には?」

 と質問すると、医師はキッパリと答えました。

「右後ろ足の切断です !! 」

「 !! …!」

 …私たちはそれを聞いて絶句しました。

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