第6話 執念のミルク飲みみーぽん

「あなた~っ!大変 !! 」

 …さらに翌日、私が会社から帰宅すると例によってマキが騒いでいます。

 今度は何かな?と思っていると、

「あのねっ!子猫に牛乳は与えちゃダメなんだって !! 」

「えっ !? 」

 さすがに私も驚きました。

「猫には猫用のミルクを与えないと、…牛乳だとやっぱり拒否反応が出たり、病気なんかへの耐性が弱くなったりするらしいの…」

 マキの言葉に私の脳裏には先日のまだら君の死がチラッと横切りました。

「…じゃあどうしたら良いんだ?」

 私が訊くと、マキは待ってましたとばかりにニカッ!と笑顔を作って言いました。

「これからペットショップに行かなくっちゃ!」

 …という訳で私はよく分からぬままみーぽん入り容器を持ってマキと2人で車を飛ばしてペットショップに向かったのでした。


 今まであまりペットショップには縁が無かったので、店舗内に入ると私はむやみにうろうろキョロキョロしながら、犬猫はもちろんウサギに亀に鳥、熱帯魚に爬虫類等覗いてまるでミニ動物園+ミニ水族館に来たような感じを覚えてちょっと楽しんでいました。

 その間にマキは猫用の粉ミルクと哺乳瓶、それに計量カップを客用カゴに入れて私を呼びました。

「みーぽんのお口に哺乳瓶の吸い口が合うかなぁ?…」

 …そんなことを訊かれても私に分かるはずもないのでとにかくまずは買って帰ることにしたのでした。


 …しかしその哺乳瓶はみーぽんによってその後ちょっとしたビックリ事件に発展することになるのですが、もちろんこの時点では全く予想もしないことでした。


 …とにかくペットショップから帰ると、さっそくマキは猫用ミルクを作り、哺乳瓶に移して容器の中のみーぽんに与えたのでした。

 みーぽんの食欲は旺盛で、両方の前足で哺乳瓶の吸い口を抱え込みながら懸命にミルクを飲んでいます。

「うはぁ!…全く凄い飲みっぷりだねぇ!」

「執念すら感じる食欲ね!…」

 目を見開いて哺乳瓶の吸い口にかぶり付いているみーぽんの姿を見てマキが言いました。

 …そして気が付けばみーぽんは貰ったばかりの時に比べたら、およそ1.5倍くらいの大きさに成長していました。

「…冷やし中華の容器もそろそろ手狭になって来たね!…」

「…うん、そうだね」

 しかしまだこの時点では私たちはまだまだ猫の大きさには甘い見通しの会話をしていたのです。

 …猫用ミルクに代えて哺乳瓶で上げるようにしたらいっそう食欲が増したのか、みーぽんはなかなか吸い口から離れず、時々私たちに顔を向けてミャウンミャウン!と何か訴えるような鳴き声を上げるようになりました。

「ん~ !? 何か言いたいのかな?みーぽん君」

 私がそう呟くと、マキは強引に哺乳瓶を猫から引き剥がして言いました。

「…え~と、たぶんですね、この吸い口の穴が小さくてミルクの出が細いと!…それが不満なのではないかと思います、はい!」

「はぁ~…なるほど、…う~むしかしそれは…どうしよう !? 」

 思いがけぬ答えに私はちょっとあっけに取られて間の抜けたような反応をしてしまったのでした。



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