概要
上野公園の生け垣に立ちションをするホームレス、仲町通りの風俗街をウロウロする客引き、終わらない閉店セールを続けるアメ横の時計屋、そして――月のお姫さま。
中学三年生の春、先の知れた人生を気の合う仲間たちと愉快に消費していた僕は、その「月のお姫さま」を名乗る少女に逆ナンされた。
なんでも彼女は月におわしまする女王の娘で、そろそろ月に帰らなければならないそうだ。帰る前の思い出作りに地球のカレシが欲しくて、僕に声をかけたんだって。
信じられるかい?
僕は、信じる。
だけど、君が月に帰るなんて――絶対に認めない。
これは、月の姫と、彼女を守る騎士団の戦いと青春の物語。
【書籍情報】『御徒町カグヤナイツ』、文芸単行本として発売中!
おすすめレビュー
新着おすすめレビュー
- ★★★ Excellent!!!「少年の詩」! 登場人物たちへの作者のまなざし。
すみません、感動が深すぎて、ちゃんとしたレビューに多分なりません。
また改めて書くかも知れません。
この小説は、創作の世界に足を踏み入れた私に、非常に重要な教え、ちがう、最大級の財産、そうじゃない、創作とは何か?という問いに対するひとつの大きな回答をもたらしてくれた作品となりました。なぜ物語を紡ぎたいのか?
この作品を通じて私が常に感じ続けていたのは「登場人物たちへの作者のまなざし」、その暖かさと愛情です。これは私の小説に完全に欠けていたものであり、或いは、私の人生そのものに欠けていた要素だったかも知れない、なんてオーバーなことを考えたりもしました。
この作中に登場する少年たちと少女は、みん…続きを読む - ★★★ Excellent!!!この騎士団、格好良すぎる!等身大で描かれる、ある中学生達の物語。
あらすじを読んだ時点で、確信致しました。絶対に面白いと。
そして読みました。予感の通りでした。
RPGみたく、姫と、戦士と、武闘家と、魔法使いと、盗賊。
それぞれのキャラクターが、本当に個性的なのです。
それもただテンプレをなぞっただけのような「個性」ではなくて、その人がその人だとしっかり確立してある、本物の個性なのです。見ていて飽きなくて、ずっとこの人達の姿を見ていたいなと思う程。
そんな姫と騎士団が織りなす物語。面白くないわけがありません。
でもこの騎士団。
本物の騎士団にあるような、いわゆる騎士道精神みたいなものが備わった「THE・光の人」みたいなのはおりません。皆、どこかしらア…続きを読む - ★★★ Excellent!!!希望の町のエクソダス。
「この国には何でもある。だが、『希望』だけがない。」
って昔読んだ小説にあった。
僕たちはいまいる場所で、躍起になっている。希望がないからだ。
では希望とはなんだろう。
三年後の自分を夢見る力じゃないだろうか。
将来の夢を「高校生」と書くことじゃないだろうか。
譲れないものを発見したり、一緒に走る仲間がいるときに、出現するのではないだろうか。
好きな人ができたとき、好きな人になにかをしようと動いたときに。
希望と期待は違う。
でも、期待しよう。
叶う叶わないは関係ない。
希望はあるってことをだ。
ぐんと世界が広がる瞬間を、僕たちは求めている。
高校生では遅すぎる。小学生にはちと早い。早…続きを読む - ★★★ Excellent!!!月まで届く、終わらない歌
どこまでもカッコ悪くて、ただひたすらにカッコいい、5人の中学生の物語。
もうね、全部好き。何もかもが好き。
ある日突然、月の姫と名乗る少女に逆ナンされ、御徒町カグヤナイツなどという中二病まっしぐらのグループを作ってしまう展開も。普通の中学生にはないような重荷を背負った彼らの、普通の中学生らしい会話も。
何をしでかすかわからないカグヤナイツの、スリルのある日常も。ひねくれながらも全力で、今を生きる人間の強さも。
そして、一歩間違えてしまえば壊れてしまうほどに危ういバランスの彼らをまとめ上げ、これ以上ないほどに一つの物語として完成された『御徒町カグヤナイツ』が、ものすごく好き。
キレたソ…続きを読む - ★★★ Excellent!!!RPG、ずっと一緒にはいられない
「中二病」というと、封印された右腕が疼くとか、邪気眼の覚醒がどうとか、私は風使いなんだとか、自分に特別な設定を付けて勘違いしていた黒歴史が思い出されます。過ぎ去った中二時代を揶揄する風潮もあります。それでも当時は全力で自分に後付けした設定を信じていました。「本当はそうじゃない」と知っていたからこそ。
中学生のヒロトが月の姫を名乗る少女にナンパされるところから始まる『カグヤナイツ』。とても中二的なネーミングセンス。
ヒロトを始めとするメンバーの特性をRPGの職業に当てはめて、彼らは仲間の前に立ちはだかるそれぞれの苦難を力を合わせて乗り越えようと奮闘します。
それは邪気眼を覚醒して自己陶酔…続きを読む - ★★★ Excellent!!!十四歳の夢と妄想のパワーで、固まり切った現実なんか、ぶん殴ってやれ
中2から中3に上がる春休み、変な美少女に逆ナンされた。
自称「月のプリンセス」の彼女はまもなく月に還るから、
その日が来る前にカレシがほしいしデートしてみたいし、
自分を守るナイトもほしいし、とにかく楽しみたいのだ。
主人公は風俗嬢の息子で、担任は天敵。その仲間たちも、
ヤクザの息子、日本育ちの中国人、童顔キラキラネーム、
という「はぐれ者こそカッコいい」を共感できる奴らだ。
等身大に尖っていて繊細で夢見勝ちな感性が描かれていく。
自分たちをRPGのキャラクターに例えて騎士団を名乗り、
団長である戦士を筆頭に、武闘家と魔法使いと盗賊が、
特技と個性を活かして、彼らと月姫に降りかかる問題に…続きを読む