書かれたのは2016年。今から約10年前。
そして、作者様がもうこの世にはいらっしゃらない方である事実を、読み終えた今、初めて知った。
今こそ、読み返すべき時期にある小説である、そのような気がしてならない。
国語の試験のように、この物語について要約を書くのであれば、
性的な嗜好に対する問題を抱えた青少年たちが時に絆を確かめ合い、時に傷つけ合いながらそれぞれの問題を乗り越え、それを受け入れ、社会で生きていく力を養っていく物語
なのだろうか。
でも、そんな言葉で片付けたくない。
この、とてつもなく心が動いたこの気持ちを、作者様にはもうお伝えすることができない。
胸がいっぱいだ。
だから、レビューする。
登場人物があまりにも浅はかだ。どいつもこいつもこの野郎と言いたくなる位に。そしてあまりにも魅力的だ。どいつもこいつも。
列挙する。
腐女子の三浦はあまりにも浅はか。
幼馴染の亮平はあらゆる問題から目を背けすぎ。
お前は脳筋なのか小野。
ケイトは大人としての役割を放棄してはいないか。
マコトは衝動に弱すぎないか。
ファーレンハイト、なぜその選択を。他にどうにかできなかったのか。
そして、主人公。なぜ大阪に行く?
多分、みんな、それしか答えがなかったのだ。それがおそらく最適解だったのだ。彼らにとって。
でも、これは、2025年の私が読んでいる。
2023年位から、物事の捉え方や価値観は大きく変わったように思う。
もしこれを2016年の私が読んでいたら、どのような答えを出しただろうか。
あの時代に読んでいたら。
それをものすごく知りたくなった。
この物語の登場人物には、誰ひとり単純な悪人はいない。
それぞれが抱える苦しみと向き合いながら、主人公を鏡にして、自分なりの答えを見出していく。それぞれがそれぞれに。それぞれの時代で許される最大限の答えを出していこうとする。
この時代にこれを書くことができた作者様に、嫉妬してしまいそうな位、一気に読んだ。
いろんな感情が湧き上がってきた。
これは、読む人によって、多分全員答えが違うだろう。
作者様が、今を生きていたなら、何を書いていたのだろう。
聞いてみたい。
思いが溢れてしまった。
とにかく読んで欲しい。
今の時代だからこそ読んで欲しい。
間違いなく名作だ。
そして今の時代の感性でこの作品を改めて映像化してほしい。
おそらく、全く違う答えが出てきそうだ。
私は17歳で高二の女子高生です。そして、多分女性が好きです。
私は小さい頃から恋多き人で、保育園とか小学校ではクラスが変わる度に好きな男子が出来ました。でも中学生になってから今まで約5年、気になる人は出来ても好きになった人は1人もいません。
女子校だから?身の回りに男子が全然いないから?
いや違う。
自分の中の好きを認められなかった。このまま先に進めてはいけないような気がしてた。
中学生くらいから、気になる人は皆女性です。部活の先輩、同輩の可愛くてかっこいい子、はたまたシゴデキの女性の先生。
でも、その気持ちから目を逸らしてた。無理だと思ってた。
けれど意外と無理なことはないんです。中一の時に気になっていた先輩は同じ学年の女の子と付き合ってたし、知らなかっただけで同輩の友達には元カノが2人もいるみたい。
なんてことはないんです。10人いれば1人くらいは話が合わない人がいるけれど、残りの9人は真摯に話したら意外と認めてくれる。恋愛以外でもそう。そんなものなんだと思います。
私は17年間生きてきて、初めてここで自分が同性愛者(バイかも…)だと言っています。本当は男性もいけるんじゃないかとか凄く悩むけれど、別にどうであれ自分は自分。まず自分が自分の中の気持ちを認めて正直になりたい。
私には恋愛経験が無さすぎて、この作品の登場人物に完璧には共感出来なかった。けれど、カミングアウトは別として自分の気持ちにもう少し正直になるところから始めてみようと思います。
凄く考えさせられる作品でした。本当に読んでよかった。ありがとうございました!
「『最初に聞いたチャイコのVコンがハイフェッツ』は不幸」という言葉が一部のクラシック音楽ファンの間にあります。これは「ハイフェッツという名手の弾いたチャイコフスキーのバイオリン協奏曲は唯一無二の決定版であり、それを最初に聞いてしまったらもう他のソリスト弾く曲が色褪せてしまう。よって不幸」という意味ですが、最初に読んだBLがこちらの作品という人も同様の目に遭います。私がそうです。
なぜ2016年に公開された作品が未だジャンル別ランキングの頂点に君臨し続けるのか、なぜ漫画化どころか映像化までされているのか(どちらも未見でした)、序盤を読んだだけでその理由が理解できました。そして最後まで読んで、もしかしたらこれ以上のBLにはもうお目にかかれないのではないかと半ば恍惚と、半ば恐ろしく感じました。
今後BLを読む時に、この作品と比較することはしないでしょう。しかし比較はせずとも、BLというジャンルのひとつの到達点として、この作品を心のどこかで思い出すことになるでしょう。
それは不幸か? いいえ、とても幸せなことだと感じています。私のミュージックプレーヤーの「お気に入り」リストの中で、ハイフェッツのチャイコVコンが燦然と輝きを放っているのと同じように、この作品も私の初BLにして決定版となった作品です。
同性愛者と聞くと変に身構える人がいるけど、基本的にノンケには手を出さないのが普通だとか。ただ身近に同族がいると、とりあえず性欲解消のためのパートナーになりがちなところもあると、同性愛者の知人に聞きました。
それでも彼ら(彼女ら)は相手が誰でもいいわけでなく、異性愛者と同じ価値観の元で恋愛している。
ただその対象が同性なだけ。
(ゲイorビアン)バーで気の合う相手と交流して恋仲になったり、マッチングアプリで慎重に価値観の合う相手探したり、コミュニティの会合や街中でたまたま知り合った同族と仲を深めたり、最初の出会いが友人の紹介だったり。
これらの出会い方とその後の進展は、異性愛者も同様なはず。ただ価値観の合うだけの友人になるのか、仲を深めて恋人同士になるのか、性欲の捌け口として身体だけの関係になるのかも、異性愛者と変わらない関係の築き方なんですよね。
そんなリアルな同性愛者たちの恋愛模様が読める作品がこちら!
あとちょっとした愚痴ですが……僕は日々腐男子としてひっそりと購読活動しているのですけど、『腐男子=ゲイ』だと思い込んでる男性が世の中に多すぎ。僕が腐男子だと言うと、『ゲイの方ですか?』と毎回聞き返されるのにはウンザリです。
僕はね、世間から見て障害の多い恋愛物語を読むのが好きなだけで、決してゲイではありません。
秘密の恋の関係や不倫もの近親もの、寝取られざまぁ作品などを好んで読む読者たちと一緒です。その辺の偏見も少しは解消できる内容でした。
たまたまコミカライズ版を購入してこの作品を知りました。書籍版も買おうか迷っていたら、腐仲間にWeb版もあると教えてもらったんですよ。
こりゃ布教のために書籍版も買わないとね!
ヘテロも、いろんな個性を持った人達が出て来ます。人によっては、「それはちょっと…」と思う展開もありますが、私は主人公が納得しているので良しとしました。
ケイトさんが格好良かったです。
セクシュアルマイノリティも、いろんな人達が描かれているなと思いました。
タイトルに引っ掛かりを覚えた方達も、読んでいくと、何故、ゲイではなく、ホモになっているのか?分かります。
章タイトルが凝ってます。「英語!?洋楽!?分からない!」大丈夫です。QUEENを知らなくても、楽しめると思います。
※書籍版に敬意を表して、評価は★2とさせて頂きます。
BL物を初めて読みました。
結婚の観点ではドン詰まり感があって、それが山場となり、自分の日常生活に本の少しの想像力を加えると、何となく物語を創作できちゃうんじゃなかろうか。
最初は舐めて読んでました。
でも、私にゃ無理。繊細で奥深い。登場人物の数は僅かなのに、世界、いや社会を語っているんです。
でも、読み難くはないです。等身大に近い登場人物の織りなす心の機微が眩しい。惹き込まれます。
若い頃、「ホモは良いけど、レズは止めて欲しい」と思ってました。理由は浅はかで、恋愛の競争率に少しでも下がって欲しいからです。そんなの本人の魅力次第であって、何の意味も無いんですが、そう思ってました。
今は、勃たない事の深刻さも分かりますし、最後の味方が家族だとの自覚もあって、主人公には共感する部分が大です。
でも、新宿2丁目は未経験です。ゲイの方は優しいとの先入観が私にあって、隣の歌舞伎町よりも遥かに安全だと思い込んでますが、盛場の浮かれが苦手なのと、金銭的余裕が無い事が理由で、キャバクラにも行った事がありません。
居酒屋止まりの小市民ですが、そんな読者でも十分に満足できる作品です。
同性愛者と腐女子っていうネットの人からしたら割と(ネタ的な意味で)身近な題材を、ただの1要素やギャグとしてではなくしっかりと描写していて凄く読み応えがある作品。
ネット小説やライトノベル的では無いが、しかしそれでもインパクトや惹きつけられる魅力があって、いわゆる一般文芸を読んだことの無い人がネット小説/ライトノベルからそちらを読み始めよう! としている場合の入門としてお勧めできるレベル。(そういう人がいるかはさておき)
この作品の魅力はその文章やキャラクター、展開、伏線回収全てに至るまで完成されているところにあるけれど、それ以上に、深く考えさせられる作品でありながら面白くサクッと読むこともできる点にあると私は思う。
たしかに同性愛者っていうテーマで、少年の葛藤などを書いているわけだから、ヘテロセクシャルの私にも考えさせらるところはいくつもあるし、実際そういった思考が読んでるうちに溢れてくる。
しかし、啓蒙的なものだったり、薄っぺらい教科書的なものでは無く、ひとつの恋愛小説として、青春小説として完成度が高い事が何よりも魅力的なのだ。
一度読み始めたら自然にスクロールして次話をクリックしているはずなので、十分読み切れる時間を確保してから読むことをオススメする。